7話 ミーナの冒険
同時刻 現実世界にて
「絶対に逃がすな!」
「はい!」
俺がが声を上げて言うと部下が敬礼をして走って去っていく。
この日は世界中で最も多くの人がVR世界にいる日である。
特に13時からの17時、18時までが一番だろう。
当然問題は起きる。住居侵入、窃盗、または強盗、傷害、放火、他にも色々する奴らが動くのだ。
我々警察にもこれからの為にVRに入らないといけない、動ける警察の絶対数は減ってしまう。
これは世界各国でも言えることだ。
今でも事件は増え続けている。今こそ我々はいつもより気合いを入れて犯罪を取り締まらないといけない。
オルディネと連携は取れている。
今のところは順調だ、だがこの調子がずっと続くとは思ってはいけない。
力は抜けない、これからも警戒を緩めてはならない。ここからが正念場だ。
☆
「そだね、また後で会おうね」
奏が光に溶けるように消えるのを見送ると、私もWORLDCREATUREを起動する。
【ようこそ! WORLD CREATUREへ】
目が覚めたのはさっきと同じ白い空間。
【それではアバターを作って頂きます】
【このアバターはWORLD FANTASY、WORLD CREATURE、WORLD CIMの全てで共有されますのでご注意ください】
【それでは性別を選択して下さい】
もちろん女性を選択。男性を選んで現実で男になったら困るし。
【年齢を設定してください、なお設定していただいた年齢は現実世界に影響されません】
デフォルトが実年齢の16才だけどちょっと身長が小さいんだよね。……ちょっと。
20才にしたらちょうどいい感じになったからそれで決定。大人の女性って感じ……だと思う、多分。変わらないかなぁ。
【種族を選択してください、なお選択していただいた種族は現実世界に影響させることが可能です。なお、初期デッキが種族により変化しますのでご注意ください】
選べるのは[人族][獣族][魔族][森族][海族][土族][龍族][天族][宙族]の9つ。
やけに多いな。
あっこの森族の妖精かわいぃー!
でも猫耳も欲しいなー
奏は多分天族だから一緒に空も飛びたいな。
あっでもWORLD CREATUREだと天族だからって空が飛べる訳じゃないんだったっけ?
森族は髪色固定かー、奏が私の髪を綺麗だって言ってくれたから髪色は変えられない。
やっぱし猫耳かな? いやネズミ耳もある……。
奏に猫耳でニャーって言うのか
ネズミ耳でちゅーって言うのか
んー悩むなぁ、ニャーかちゅーか……。
猫耳にしよう、ちゅー はちょっと恥ずかしいや……。
猫の獣族で決定。
【それでは細かな設定をして頂きます、必要ない場合はそのままOKを押してください。なお設定していただいた詳細設定は種族によって影響される箇所があります】
別に変に弄る必要はないよね。
そのままOKを押す。
【完了いましました。これより初回ガチャを引いていただきます、引き戻しは出来ませんのでご注意ください】
表示されたのは3種の10連ガチャ、中にカードが入っているっぽいね。
・猫獣族ガチャ 初回限定版
・猫耳ガチャ 初回限定版
・幻惑の猫ガチャ 初回限定版
んー、奏だったら迷わず猫耳ガチャにいくだろうな。
3種ともピックアップで目玉商品が載ってるけど正直いって当たるとは思わないしなぁ。
猫獣族ガチャでいっか。
ガチャの[回す]ボタンを押す。
☆ねこ
☆こねこ
☆赤ねこ
☆青ねこ
☆レインボーねこ
☆三毛猫
☆猫の好奇心
☆猫の小判
☆猫が小判
☆猫まっしぐら
ペットしかいないよー!
嬉しいような悲しいような……この先が不安だー。
【カードバトルのチュートリアルをスキップしますか? Yes/No】
Yesを押そうとして踏みとどまる。
ちょ、ビックリしたー。反射的にYesを押しそうになっちゃったよ。
Noを押してチュートリアルを開始する。
すると少し遠くに銀色の髪をした女性が1人、何処からともなく現れた。
【それではチュートリアルを開始します】
女性と私の間が青く光だし長方形だったそれに線が入り9×3の正方形が生まれた。
【こちらが当ゲームのバトルフィールドです。なお今回はこの形ですが状況により変化する場合があります】
【それではカードからユニットを召喚します、腰にかけられているホルダーに触れてください】
いつのまに……。
ホルダーに触ると、そこからカードが7枚浮かび目の前に止まった。
【カードはユニットカードとアクティブカードの二種類があります。配られる枚数は状況により異なる場合があります】
ふむふむ、赤色がユニットカードで青色がアクティブカードだね。
これの説明はあるのかな?
【ユニットカードはSPを消費させてクリーチャーを召喚させるカードです。召喚出来る場所は前2列までです、位置を決めて召喚するクリーチャーの名前を呼んでください】
どの子にしようかな? ……よし!
「こねこ」
カードと私の前が光って”にゃ〜”と鳴きながらこねこが召喚された。
「か、かわいぃ〜!」
召喚されたこねこは目がまんまるでおヒゲも愛くるしくて、なんていうかもう……かわいい!
キャー進めないー! こねこに近づけないー!
【プレイヤーはバトルフィールドには入る事は出来ません。クリーチャーのみ入る事が出来ます】
くそぉ、触りたい。
……仕方ない。諦めるしかないのかー。
【バトル中以外でも召喚出来るのでその時には触れ合えますよ】
「え? あ、ありがと!」
システムの声が今凄く柔らかな声音だったような気がする。つい返事しちゃった、本当に話せていたらいいな。
【クリーチャーの動きはプレイヤーが操作します、クリーチャーに一マス前に行くように想像してください】
あっ、こねこが一マス前に動いた。”にゃ〜”と鳴く声がまた可愛い。
【基本的にクリーチャーは前後左右にのみ移動が可能ですが、SP消費しクリーチャーを強化することで斜めにも移動する事が出来ます。なお、SP消費量はカードに書かれているのでご確認ください】
カードを見ると、無くなったこねこの絵の所に召喚SP10、強化SP15と書いてあった。
【SPは5秒につき1回復します】
結構回復早いんだ、それとも遅いくらいなのかな?
あれ? なんかカードが1枚増えてる。
【カードは1分~2分の間に1枚ホルダーから引かれます、カードはプレイヤーが引かない限りランダムになります。またホルダーにカードがない場合は引かれません】
つまり私が引かなかったから勝手に増えていたのね。なんか説明聞いていると眠たくなってくる。
【それではアクティブカードの説明をさせていただきます】
よーし、ばっちこい!
【アクティブカードは主に戦闘の支援や敵の妨害が可能です。使うとカードが消え、そのバトル中は使えなくなります、チュートリアル中には何度でも使えます】
まえの女性の近くが光って石のゴーレムみたいなのが現れる。上にある赤色のゲージはHPかな。
【実際にやってみましょう。クリーチャーの位置を操作するのはプレイヤーですが、攻撃と防御等はクリーチャーがします。アクティブカードを使い戦闘を有利に持ち込みましょう、使用する場合はアクティブカードの名前を呼んでください】
すると女性側のゴーレムが向かってくる。動きは遅くて考える時間はあるみたい。
えーと、アクティブカードは……。
☆猫の好奇心
☆猫の小判
☆猫が小判
☆猫まっしぐら
どれも名前が頼りないんだけど、まぁ効果とかも見てみよう。
う〜ん、これかな?
「猫が小判」
これは猫そのものが価値のあるものだと明言したカード。
よって全ての猫への攻撃が手加減される。
効果時間2分にゃー。
何気に強いと思うんだ。
向かってきたゴーレムがこねこの前で一瞬硬直する。ちょこんと座っていたこねこが可愛いかったんだろうな、わかりますぞ。
ゴーレムのゆる〜いパンチを避けてこねこの猫パーンチ!
”ポテッ”と効果音がありそうなこねこパンチを頂戴したゴーレムは大袈裟にのけぞると、こねこが”にゃにゃにゃ!”と鳴きながら引っ掻き続ける。
まだゴーレムのHPは残ったいたのに、光りになって女性のもつカードに入っていく。ホケモソみたい。
【クリーチャーは手元に戻すことが出来ます。手元に戻すことにより召喚時のSPの半分を回復しますが、再召喚には5分かかります】
【また、クリーチャーのHPが全てなくなると強制的にカードへ戻り、そのバトル中の召喚は不可になります】
【クリーチャーを奥まで進めてください】
HPが無くなるまでにカードに戻した方がいいよってことだね。
こねこを一番奥まで行くように一マスずつ移動させる。
こねこが女性に"ポテッ"と猫パンチをすると、光に変わってカードに戻ってくる。一瞬女の人の顔が緩んだような……。
【クリーチャーは最奥に着くと、対者へ攻撃をしてカードに戻ります。この時のダメージはクリーチャーにより異なります。そして召喚した際に消費したSPの2倍を回復し、超過した分はそのバトル中にのみ有効です】
ふむふむ、奥まで行かせると色々特典があるんだね。
【またその場合は即時再召喚が可能です】
こねこをすぐに召喚出来るということかー。
【対者のHPを全損させると勝利です。それでは最後のチュートリアルです、対者のHPを全損させてください】
女性の方にゴーレムが2体現れる、私も召喚しよう。
「ねこ、こねこ、レインボーねこ」
密かにレインボーねこが気になっていたんだ、見るとカードの写真通りカラフルな毛並みでございます。
あぁー! 触りたい!
こねこは私の前でちょこんと座ってもらって癒し担当〜。
ねこがこっちを向いて”にゃ”と鳴く、ずきゅキューん!! と衝撃が走ってもうみんな可愛い!
「猫が小判」
のろのろと動くゴーレムが一瞬硬直をする。
可愛さに騙されてはいけない、なんとレインボーねこの召喚SPは30だったのさ。ねことこねこは10だからきっと3倍の強さを誇ってくれる……わけないか。
ねこはねこです、傷が付く前に終わらせます。
ねことレインボーねこをゴーレムの前に移動させる。
ゴーレムはねことレインボーねこに攻撃をするが、手加減パンチは当たらない。
こねこには座ってもらいたいけど、致し方ない。
ゴーレムが2匹のねこと遊んでいる間に、こねこをゴーレムの居ない列から歩かせる。
ゴーレムは道を阻もうとするが時既におそし。
「猫まっしぐら」
アクティブカード猫まっしぐら。
全ての猫が前にしか移動出来なくなるかわりに1度に移動できるマスが二マスになる。
つまり早く移動ができる。
こねこはゴーレムを超えて最奥に着き、女の人に麗しい肉球を当てる。
【チュートリアルはこれでお終いです。チュートリアル終了ボーナスはプレゼント欄に送っていますので受け取り下さい】
こねこは女性のHPを削りきってカードに戻ってきた。YOU WINと視界に文字が浮かぶと女性は消えていこうとする。
「ちょっと待って!」
女性が消える前に走って側までいく。バトルフィールドは消えていて障害はなく、女性の元へたどりつけた。
そのままこねこのカードをホルダーから出して召喚する。
「システムの声の人だよね、遠くからだったけど頬が緩んでいるように見えたから」
返事は無い。
「ゴーレムの攻撃もきっと必要以上に手加減したんじゃないの? 悲しそうにしたのを見たから」
またやってしまった、VR内に入って少し気が緩んだのかな。
それでも私はこねこを抱いてひと撫でする。
「お礼! あなたも触りたそうにしていたでしょ? 初めてのなでなでは譲らないけど!」
現実ならこんなことしない、出来ない。
ゲームでもしない。
一体誰が急に話しかけてこんなこと言うのだろう、普通は引いてしまう行動だ。
【……トリアよ。システムの声じゃない】
そう言って女性、トリアはこねこの頭を撫でる。”にゃ〜”と鳴くこねこに頬を緩ませる私とトリア。
言葉は少しとんがっていたけれど、柔らかな声音で優しい人なんだなと思った。
「ありがとう。トリア」
【不思議な人、お礼を言うのは私の方じゃない?】
そういって少し笑うトリア、綺麗な人だから少し見惚れてしまった。
【あら? 私だけ名前を言うの?】
「あっごめん、ミーナだよ」
【ふふっ、じゃあミーナ。また呼びなさい、時間があれば話し相手くらいならなってあげるわ】
──じゃあね。
そういってトリアは消えてしまう。
ふと足下をみると1枚のカードがあった。
☆友達 トリア
ミーナの友達。
説明文が可愛いすぎるんだけど!
トリアが考えたのかな?
絶対召喚するから待っててね。
こねこを頭の上に置いてトリアのカードをホルダーに入れると視界が暗転していく。
【待っているわ。ミーナ】
★こねこ
子猫。可愛い。ちっちゃい。