75話 ミーナとガチャ
「次はミーナちゃんだね」
「うん!」
マッキーがガチャをし終えると次は私の番だ。
ガチャの内容を見直すのはあとにして、今は沢山のトリアを楽しむぞー!
「……恥ずかしいのだけど」
メニュー画面をマッキーと同じように操作してテーブルに置く。
拡大されたメニュー画面はガチャのページになって、海とスイカが画面いっぱいに表示された。
『夏の特設ガチャ券』の枚数は287枚、大量だね。
「それじゃあ押すね」
「うん!」
見てるのもドキドキしたけど、やっぱりする方がドキドキするね。
ちょっと手が震えるけど、色んなトリア……水着を見るために!
「えい!」
山登りをするトリア。
登りきった先には辺り一面に花が咲いていた。
色とりどりのお花が咲いている中で、地面から11つの芽が生えだし花が……カードが咲いた。
☆夏のネコ缶
☆水着 (猫マーク)
☆蜃気楼
☆山菜
☆木々の癒し
☆水中ねこ
☆浮き輪
☆虫かご
☆水着 (ワンピース)
☆日焼け止め(乙成製品)
☆ツキシタ
「……ねこ」
「ネコ缶もあるね」
ここにきてなお猫ちゃんが来てくれた。
というかネコ缶って……。夏のが付けば何でもいいのかな。でも夏のネコ缶、どんなだろう。あと山菜。
「ちゃんと猫ちゃん以外も来てるわよ?」
「えっと……ツキシタ?」
「綺麗なお花の子だね」
カードの中では頭に白いお花が生えた人型のクリーチャーが眠っていた。
……ついに、ついに私にも猫ちゃん以外の子が来てくれたんだね。ドラちゃんを含めて二匹目だー!
「水着は二つ出てきたね」
「うん。ワンピースのやつはトリアに似合うんじゃないかな?」
「わ、私かしら」
あとで試着してみてになるけど、絶対似合うと思う。
これは是非着てもらわないと!
「トリアさんなら絶対似合うよ!」
「ま、まあ……あとで試着するんでしょ?」
「ふふっ、楽しみだね! よし、じゃあ次いくね!」
山登りをするトリア。ん? さっきと一緒かな?
違ったみたい、山を登るトリアの近くでは小さな虫がざわめきだす。
群がる虫達の中に輝くカードが11枚。
☆木々の癒し
☆山菜
☆海スライム
☆麦わら帽子
☆そうめん
☆ウェットスーツ
☆小波
☆熱強化
☆冷却シート
☆ゲシュヴィント
☆スイカボール
「……またそうめんが出たわね」
「だね、量が出たらまた作るね」
「ええ、期待しているわ」
トリアは嬉しそうにはにかむ。
よほど美味しかったのかな? これならスーパーとかで普通にそうめんを買ってもいいかも。山菜が二つ目だからこの前と違ったそうめんになりそうだし。
「この麦わら帽子トリアさんにピッタリじゃあないかな?」
「ワンピースを着たトリアに麦わら帽子なんて最高かも」
絶対似合うよね!
試着の時に被ってもらおう。そのあと写真を撮らないと。
「それならミーナだって似合うと思うわ」
「えっ、わたし?」
「さっきのワンピースだってミーナも似合うわよ? マッキーもそう思わない?」
「うん、麦わら帽子もセットで!」
トリアに反撃をくらってしまった。
私に似合うかなぁ。トリアの方が似合ってると思うけどなぁ!
ふふっ、これは試着してみればわかることだよ。
「もう、次回すよ?」
「えぇ、試着が楽しみね」
「もー!」
ほら、もう回すからね!
次見たトリアはアイスを食べてるトリアだった。
棒タイプのアイスを食べ終わるとまた同じアイスを食べる。そしてまた食べ終わると次の棒アイスを……。
「……トリア風邪ひくよ?」
「私は風邪を引かないわよ?」
「お腹冷えそうだよ」
「……確かに冷たくなっていたような気がしないでもないわね」
やがて全てのアイスを食べ終わると、残った棒が光ってカードに変化した。
☆アイスのあたり棒
☆虫あみ
☆氷水
☆バーニングねこ
☆ハーゲンダッテ
☆釣り糸
☆津波
☆スクール水着
☆浮き輪
☆山菜
☆願いの短冊
「……トリアの食べたあとの棒がある」
「ち、違うわよ!」
違ったんだ……。
「スクール水着」
「マッキー、それにツッコミを入れてはいけないわ」
「トリアさんなら絶対……」
「マッキーか着るならいいわよ?」
「やめときましょう!」
スクール水着って中学生とかが使うやつだよね。
もしトリアやマッキーが着たとしたら……考えるのはやめとこう。
たぶん体格的に私が一番似合うなんてことも言わないでおこう。
とりあえず今回のカードを確認して……えっ?
「この猫ちゃん燃えてる」
燃えてるというか、まるで火が猫の形をとってるみたいな……。
「『バーニングねこ』ね。感情によって炎の色が変わるわ」
「気分が分かりやすそうだね」
「……熱そう」
確かに……ずっと燃えてるなら撫でれないね。
どうしたら撫でれるかな……水かけたら消えてしまいそうだし。
「でも感情で火が変わって燃えるねこなんて凄い!」
「ええ、俗に言う激レアよ?」
やっぱり凄いねこなんだ!
なんたって燃えてるもんね。といっても猫ちゃんかもしれないけど、別に戦わせたいわけじゃないからね。
「……課金」
「できないわよ」
マッキーが呟いたのを間髪入れずにトリアがツッコミをいれた。
SIMでしか課金出来ないんだったよね。奏が金目のものをカードに入れたらいいって言ってたけど、そんな事が出来るのかなぁ。
「ちなみに機嫌が悪い時にバーニングねこを撫でてはいけないわよ」
「撫でれるんだね。ってことは機嫌が悪かったら熱いんだ」
「良くわかったわね。まあミーナなら大丈夫だと思うわ」
「うん。気をつけるね」
機嫌が良かったら抱っこさせてくれるかな?
でもまずは機嫌の善し悪しを知っていかないとね!
さてさて次だ。
次のガチャは何が出てくるかな?
なんだかここも人が増えて混んできたみたいだから巻きでいかないと。
──ガチャ
ほらまた人がこの空間に入って……。
「…………高江」
そう呟いたのは青い髪色で若干つり目の海族。
睨んでいるかのような眼差しが私に突き刺さる。
周りの空気が急激に冷え込んだね……もう会うことはないと思っていたんだけど。
「……ふんっ」
暫く見つめ合うと、踵をかえして出ていった。
ドアが勢いよく閉まり、冷え込んだ空気が熱を取り戻していく。
「確か警察のお世話になったあとは連休中に転校したんだったよね。こんな所にいったい何をしに来たんだろ」
「なんでもいいわよ。この世界だとカードバトル以外になにかすることなんて殆ど出来はしないわ」
疑問を口にするマッキーにトリアが素っ気なく言葉を返す。
といってもここに来る理由なんてクリーチャーと触れ合うくらいしか思い浮かばないけど。でもこの街以外にも無かったっけ? こういう施設って……。
「考えても仕方ないわよ? それよりもガチャを引くわよ?」
「それもそうだね。よーし! 気分一転でどんどん引くぞー!」
『おー!』
★イムクス
効果
力を強化する。上昇値は対象に依存。
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力とはすなわちパワー!