61話
はい。まだ仕上がっていません。
連続で投稿しようと思っていましたが1週間後にまた投稿します。悔しいですな。
休日だというのに今日はいつもより早く起きた。
なんと今日は目覚めがいいというレベルではない。良すぎて昨日眠れなかったほどだ! ……ん?
今は朝6時半、イベント開始まで約7.5時間前。
朝日が窓を通る前に部屋を出ると、ちょうどスーツを着た母に居合わせた。
「おはよう、奏。早いね」
「おはよう。もう仕事?」
この時間にスーツ姿なんて珍しい。
いつもならまだ寝ているかパジャマ姿だし。
「うん、もう仕事ー。朝ご飯はテーブルの上にラップして置いているから」
「了解。……頑張って」
「おうともさー!」
謎カプセルで行くんだろう、母は「行ってきますっ」といって部屋に入っていった。
それにしても今日は日曜日、殆どの会社は休みだというのに……早朝から仕事とか大変だなぁ。そもそも何の仕事をしているんだろうか。……まあいいや。
今になってやってきた眠気を払うためにシャワーを浴びて顔を洗う。最近気づいたんだけど、翼を洗うと結構気持ちいいんだよな。たまに羽が抜けるんだけど。
その後は部屋着に着替えてリビングへ。
リビングには父がコーヒーを飲んで寛いでいた。やっぱり普通は仕事休みだよな。
「おはよう父さん」
「おー、おはよう。朝食はそこに置いてるからな」
「さっき母さんから聞いた。仕事に行くところだったよ」
「ああ、母さんも大変だな。帰ってきたら構ってやれよ」
「それは父さんがやりなよ」
台所にある食器棚から箸を取りテーブルに置く。
「そういえば母さんって何の仕事してるの? 休みとか殆ど見たことないけど」
「さぁ、あまり知らないなぁ。それより奏の分温めるから貸してみ?」
「ん? これ?」
「『加熱』……ほい」
父に僕の朝食を渡すと、父が何かの能力を使った。
加熱と言った通り熱を加えるものだと思うけど、返ってきた皿を持つとレンジで温めた後のように熱くなったいた。
「おおー! 凄いな」
「だろ? これがあれば解凍も簡単だし温かいお茶もすぐに飲める。レンジ要らずだ」
「お茶は分かるけど、父さんご飯作らないじゃん」
「これから1週間母さんは帰って来ないから、代わりに俺が作るんだよ」
「ゲッ!」
「ゲッとはなんだゲッとは!」
しかし母よ……。本当に何の仕事をしているんだ。
1週間家に帰ってこれないとか……。しかも1週間ってWORLDイベントの期間モロかぶりじゃないか。だからさっき構ってやれって言ってたのか。ご愁傷様。
「父さん、母さんが居ないからって浮気しないでよ?」
「せんわ!」
「そんなに大声で言うとか怪しい」
「……俺、息子に信用されてない」
冗談はさておき、ニュースでは今日から始まるイベントで持ちきりだ。
イベントの内容と、それに伴い予想される各地での影響。あとは世界情勢とかそんな感じ。
イベント内容は昨日の間に確認したし、世界情勢とか全く興味がない。
イベントの重要な情報とかを流してくれるんなら別だけど、そんなこと知ってるわけないよな。
朝食を食べ終わると皿を洗って部屋に戻る。腹に入ったからか、途中で眠気に襲われてふらついてしまった。とはいっても今から寝るわけにはいかないけど……絶対起きれないし。
とりあえず謎カプセルの電源を付けてVR空間に入ることにしよう。
【正常なログインを確認しました】
【アカウント名·ソウ·を認識しました】
【これより"ツリー"へダイブします】
【オフィシャルネットワーク[ツリー]へようこそ】
いつも通りのメッセージを聞き、僕とみぃの部屋で目が覚める。
真っ白な背景にハート柄の絨毯が一枚。前までは何一つとしてなかった空間だけど、1週間前にみぃと一緒に選んで買ったんだ。
「この際だから何か掘り出し物がないか見てみるか」
ここの空間ももう少し家具があってもいいだろう。みぃも喜ぶ。
僕は絨毯に転がってメニュー画面へと意識を移した。
★
私がツリーの部屋に入ると、奏が絨毯の上で目を閉じていた。
「奏?」
一応呼びかけてみるけど反応はない。
しゃがんで奏の頬をつついてみる……やっぱり反応がない。
思い切って抱きついてみる…………恥ずかしい。
でも奏からは何も反応が無かった。
……これは寝ているのかな? VR空間で寝ていても大丈夫なんだっけ?
私は部屋の外に意識を飛ばして検索をする。えっと、《ツリー 睡眠》っと。
ふむふむ、う〜ん。ほうほう。……大丈夫みたいだね。
しっかりとした睡眠を取るならリアルに戻って寝た方がいいらしいけど、VR内でも睡眠効果はあるみたい。VRで寝ることによる悪影響は無いみたいだし、これなら安心だ。
私は奏の頭を持ち上げて膝の上に乗せる。
本当はベットとかあればいいんだけど、私の膝でごめんね。
すやすやと寝息を立てている奏を見ながら頭を撫でる。いつもと逆だね。たまにはいいよね。
(あぁ、好きだなぁ)
奏の髪を梳かしながら、一人想う。
このまえ学校で奏の魅力を語ったけど、それを一言で言うなら……存在が好きなんだ。起きている時の奏も、寝ている時の奏も、どんな時の奏も好き。
奏を膝枕してから暫く。私が奏の寝顔に癒されていると、私達の部屋にドアが出現した。
私は急いでメニューからドアの効果音を切る。確かドアが開くとベルが鳴るはず、奏が起きたらダメだからね。
「おは!……よー」
ドアが開いて入ってくるのは真紀ちゃん。元気よく部屋に入ってきたのを、私は人差し指を口許に持っていってサインをする。
笑って「シーッ」と真紀ちゃんに向かってすると、真紀ちゃん声は失速して私の膝を見た。正確には私の膝の上にいる奏を。
「いま奏が寝てるから、ごめんね」
「美唯菜ちゃん? う、うん。大丈夫だよ」
小声で言うと真紀ちゃんも小声で返してくれる。
笑いあって真紀ちゃんがこっちに歩いてくると、もう1度ドアが開いた。
「おまた──」
「「シーッ!」」
部屋に入ってきたのは根元……くん? くんであってるよね、うん。
スカートとか履いてるし凄く女の子っぽいけど、暴力的なまでの胸が無いし……うん。
根元は私達のサインに驚いたあと、すぐに奏が寝ていることに気付いて苦笑する。
「そういや相馬……ソウはイベント前日だと寝れないタイプだったなぁ」
「そうなんだ」
「昔やってたVRゲームでも同じことが何度もあってね、今でも変わらないんだね」
根元はホッコリとした表情で真紀ちゃんに喋るけど……それ、私知らないやつ。
私の知らない奏を知ってるなんて、なんて羨ましい。
「でもこのまま起きなかったらサーバー選べないんじゃないかな?」
確かに真紀ちゃんの言う通りだ。こうして集まっているのは300万サーバーあるから別々にならないようにする為だし。せっかく一緒に遊べるのに、サーバーが違うから遊べないのは辛いよね。
「いや、それがね。イベント開始前になると起きるんだよ。本人はいつも起きれないとか言ってるけど……絶対起きる」
根元がまた私の知らない奏を語ってる。むー!
でも聞きたい。私の知らない奏を知りたい。
「もっと、もっと聞かせて奏のこと」
「おっ、乗ってきた。ボクとソウは昔からVRで遊んでいたからね、VR世界のソウなら言えるよ」
ほう? 私も奏とVRで遊んでたこともあるんだからね、その私に自信満々で言えるなんて……楽しみです。
といっても真紀ちゃんは退屈かもしれないけど。
「私だって奏と色んなゲームしてるんだから、負けないよ」
「あれ? 何の勝負してるの……」
根元との戦いは熾烈を極めた。繰り出される未知に萌える私。たまに共感出来ちゃうところがまた奏談義を白熱させた。
そして真紀ちゃんは何故かニコニコ顔だ、どうしたんだろう。
「美唯菜ちゃんはホントに相馬くんのこと好きなんだねー。この絨毯もハートマークだし」
「あっそれボクも思った、二人の部屋にハートマークの絨毯ってちょっとビックリしたけど」
「このまえ奏と一緒に買ったんだ、ずっと真っ白な空間で殺風景だったから」
500円の中古品なんだけどね。もちろん半分私が出したよ、私達の部屋のことだもんね。
他にも家具とか欲しいけど、そこは我慢しないと。結構高いし。
「奏は星型の青いやつがいいって言ったんだけど、私的にはハート柄のコレがよくて」
「星型良くない?」
「可愛さが足りないね。ね? 真紀ちゃん」
「え? う、うん」
何やら反応が悪い真紀ちゃん。
「可愛いというか、愛の巣というか……あはは」
「あ、あああ愛の巣って!」
「この部屋に来た時にハート柄の絨毯の上で相馬くんを美唯菜ちゃんが膝枕してるから、どんな愛の巣だよっ……とは思ったかな〜」
改めてみるとちょっと恥ずかしい。
あーでも、うん。確かに愛の巣だった。うんうん。愛の巣だったよー。
膝にいる奏の頬っぺたを手で弄りながら妄想に浸る。
ふにっ!! っと柔らかい感触がして指が頬っぺに埋まった。そしておもいっきりニヤけてしまった私は…………奏と目が合った。……あれ?
1度目を瞑って、目を開く。
奏は目を閉じていて、寝息を立てていた。よ、よし。さっきのは幻覚か何かだったんだよ。寝ている奏の頬を弄ってニヤけていると実は奏が起きていた……なんて事はないはずだよ。VRでも幻覚ってあるんだね、ふしぎー。
「奏、いつから起きてたの?」
「…………この部屋に佐鳥……あー、マッキーが来た所くらい?」
奏は真紀ちゃんの頭の上を見て答える。マッキーというのは真紀ちゃんのキャラネームだ。
ということはかなり前から……私が根元と奏談義をしていた時も、愛の巣のくだりも……。
「いや……その、な? 膝枕が気持ちよくて……な?」
「え、あっ。ありがと?」
そういえばずっと膝枕していたんだった。というか膝枕が気持ちよくてとか! とか!
「ひ、膝枕くらい幾らでもするから。起きたら言ってよ?」
未だに膝から動く気配の無い奏を見下ろしながら言う。……なんか顔が近いぞ。
真っ赤になる私を奏はあたかも寝起きのように手を伸した。右手が私の頬に触れて奏は微笑む。
しかし微笑むだけで何も言わないのだった。……まあ、いいんだけど。
「白昼堂々とイチャイチャしてないで早く起きなよ? イベントもうすぐ始まるよ」
「あ、あはは」
根元の言葉に真紀ちゃんが苦笑すると共に、奏がむくりと起き上がった。ほんとにイベント開始前に起きるんだね。
「それでどのサーバーに決めるかだけど」
奏は個人画面を可視化して拡大する。
サーバーを選ぶのはイベント開始後の初ログインなんだけど、始まってからだと慌てて苦労しそうだから予め決めておこうということだね。
サーバーは全て番号順に並べられていて、とても分かりやすいけど選びにくいね。
「美唯菜ちゃんはどの番号がいい?」
「うーん……これといってないかなぁ。真紀ちゃんは?」
「ん〜777777番とかはどうかな? 縁起良さそうだし」
「確かに縁起良さそうだね!」
真紀ちゃんはいいセンスをしてる。イベントが捗りそうな番号だ。
「でも競争率は高そうだよ、人気そうな番号だし下手したら誰かハブれるかも」
決定だと思っていたけど根元が反対する。確かに沢山の人が選択しそうな番号だね。
皆で一緒にゲームをする為に集まったのに、一緒に出来なかったら本末転倒だ。
「なら317でいいな」
「317?」
奏が画面を見ながら言う。317にどんな意味があるんだろう。
「相馬くんもブレないねー」
「真紀ちゃんは分かるの?」
「317は美唯菜ちゃんの名前だよ。み・い・なだから317」
サーバーを私の名前に因んだの!?
いやでもそれ、恥ずかしいよ。私の名前を番号にしたサーバーにログインするなんて。
「それなら2710でもいいよね。か・な・とで2710」
「それは照れるな。自分の名前を捩ったサーバーにログインするのは」
「それは私もだよっ」
全く……。奏だって恥ずかしいくせに。
私は2710でもいいけどね。奏サーバーだよ、奏サーバー。
「それで候補は777777と317、2710だけど他にはある?」
「なんだろう……1とか3000000とか」
根元が纏めて聞くと、真紀ちゃんが虚空を見ながら返事する。多分両方とも人気ありそうだけど。といっても私はこれ以上何も思い浮かばないよ。
「もう奏の2710でいいと思うなー」
「いやいや美唯菜の317でいいと思うぞ」
「あはは……瑞輝ちゃん、選んで」
「えっ? ボクが選ぶの!? ……正直ボクは皆で遊べたらどのサーバーでもいいんだよね、どうせなら両方あわせて2710317でいいんじゃないかな?」
「「それだっ!」」
これは決定だね。私は奏とウンウンと頷き合う。サーバーは沢山あるから選ぶのが大変だったけど、無事に決まってよかった。
でもこれならみんなの名前を少しずつ捩ってみても良かったかもしれないなぁ。今更だからまた今度あればだけど。
「じゃあこれで決まりだね。時間までもう少しだからイベントのおさらいでもしておこうか?」
「そうだな。一応公式で確認しているけど、抜けがあるかもしれないし」
「うんうん、さんせ〜い」
「わたしもー」
正直トリアと一緒に行動する予定だから、あまり意味は無い気がするけど。……いやトリアに頼りっきりもダメだからね、イベントの説明はトリアがしてくれたんだけど。
「じゃあまず始めに、ログイン場所はイベント用に用意された特設ステージだったね。
期間内は特設フィールドのみログインができて、通常フィールド内でのみ効果がある契約書スキルはイベント終了まで効果を失う」
「ほか、全てのサブイベントは一時中断。イベント終了後にそのままの状態で再開されるんだったな。これで時間経過で終わる系のサブイベントの心配はしなくていいな」
私はサブイベント発生していないから関係ないね。奏はどうなんだろう。奏のことだから色々イベントを立てていそうだ。
奏に続いて真紀ちゃんが言葉を続ける。
「ステージはダンジョン街。イベント期間は1週間。この期間は謎カプセルでの移動が出来ないみたいだよ」
「まあ特設ステージって時点でお察しだよな。実際どこまで広いステージかは知らないけど、流石に世界中の謎カプセルを設置するだけの広さは無いようだし」
「現実世界に目を向けさせる為っていう説もあるね、今日のニュースでやってたよ」
「それにサーバー分けをされてるから、有ったとしてもどこに繋がっているか分からない謎カプセルになりそうだよね」
みんなよく考察してるなぁ。私はただ謎カプセルで移動が出来なくなったんだなぁ……としか思っていなかったよ。実際あまり使ってなかったからかもだけど。
でもこの1週間は少し周りが賑やかになるのかな?
「次にこのイベントの目的はステージ名通りダンジョンの攻略」
「ダンジョンは三種類あるんだよね?」
私の質問に根元が頷く。ダンジョンの種類は……えっと。
「ダンジョンはFANTASY限定ダンジョン、CREATURE限定ダンジョン、FANTASY&CREATURE合同ダンジョンの3つだったな」
「ソウの言う通り。SIM限定ダンジョンが無いのが悲しいところだよ」
「まあSIMは戦うようなゲームじゃないんだろ?」
「基本はね。戦えば戦うほど消耗するから好き好んで戦う人はあまりいないんじゃないかなぁ」
確かWORLD SIMは能力をゲーム内通貨で買うんだったよね、しかも使えるのは1購入につき1度っきり。ダンジョンなんてあったら破産しそう。
あっ、真紀ちゃんが公式サイトを見だした。
「えっと……ダンジョン内のモンスターを倒す、又は特定の行動をすることにより『ダンジョンポイント』を獲得出来ます……だって」
「確かダンジョンポイントでステージ内にある店の商品が買えるんだったよな」
「それだけじゃなくてボクたちSIMの人達と直接取引が出来るらしいよ」
「逆を言えばそれ以外では取引が成立しないわけだな」
「そうなるね。一応SIMの人限定で取引出来るところもあるみたいだけど」
ダンジョンポイントで買い物かぁ。何が買えるかな?
猫ちゃんたちのご飯とかも売ってたらいいなぁ。
トリア曰く食事は必要無いみたいだけど、やっぱり猫ちゃんたちもご飯食べさせてあげたいよね。
「他にもSIMは『応援ポイント』っていうのがあって、ダンジョンに入るパーティを応援することが出来るんだって」
「応援?」
それってチアのポンポンを持ってフレーフレー……みたいな?
確かに根元の女の子バージョンは胸が、その……上下左右するかもしれないけど。
「そう。支援魔法みたいなやつだね、回数制限付きの。SIMには始めに100応援ポイントが配られていて、その応援ポイントを消費することで対象のパーティを強化出来るんだ。応援されたパーティはその応援ポイントの分だけ能力が上がるよ」
「なら僕らに100ポイント投資だな」
「もとよりボクはそのつもりだけど、パーティのダンジョン攻略具合とその応援ポイント量で報酬が貰えるみたいだから頑張ってよ」
もう根元は100ポイントを私達に注ぎ込むことを決定していたみたい。これは頑張らないとだね!
奏が気合い満々だから心配はしてないけど。
「ダンジョン攻略といったらFANTASYは一層攻略するごとにSPが貰えるみたいなんだよな」
「SPってカードを召喚するやつ?」
SPってカードを召喚する時に消費するやつだったと思う。奏までカードを使えるようになったら私達WORLD CREATUREの意義が無くなっちゃうよ。
「いやFANTASYだとSPは魔法やスキルの取得に使うんだ。もちろん入手方法は限られているからこういうのは助かるな」
「名前だけ一緒でも使う用途は違うんだね」
「多分FANTASYはSPで、CREATUREはSPだと思うよ」
「根元うるさい」
「理不尽っ!?」
でも同じSPなのに用途が違うのって紛らわしいな、ぐちゃぐちゃになって分からなくなりそう。FANTASYのSPは私個人に関係ないけど、話についてこれなくなるよ。
「あとはなんだろ? 私と美唯菜ちゃんはエネミーを倒すとガチャ券を貰えるんだよね」
「あれ? それはいつも同じじゃないかな。前にスライムを倒したらスライムのガチャ券を貰えたし」
「確か『夏の特設ガチャ券』ってのが確率で手に入るんだって。使えるのはイベントが終わったあとらしいけど」
「そういえばトリアがそんなことを言っていたような気がする」
なら沢山戦って沢山ガチャ券を手に入れないといけないね。でもやっぱり猫ちゃん達を戦わせるのは嫌だなぁ……ってそれを言ったらダンジョンなんて入れないんだけど。
ここは一つガチャを引いて猫ちゃん以外も出さなければ! ……ガチャ引けたっけな。
「FANTASYはSPで、CREATUREはガチャ券で、SIMはなんなんだ?」
「確かやり方次第でイベント終了後にも取引を行える……らしい」
「漠然としてるな」
「WORLD SIMの情報はあまりないんだよね。多分やることはイベント中でもあまり変わらないんじゃないかな。CPUとの関係で仕入先が変わったり、商品を卸してくれなかったりもするし」
そもそもWORLD SIMって何をするゲームなんだろう。
FANTASYは剣と魔法の世界で敵と戦うゲーム。
CREATUREは色んなペットや空想上の生き物と一緒に過ごすゲーム。あとトリアとイチャイチャ。
SIMは……お金を扱うゲーム?
「そもそもSIMって何をするゲーム?」
「ん〜と、一言でいうとストラテジーゲームって感じかな」
「ストラ……テジー」
「戦略ゲームだね。プレイヤーが商人になって旅をしたり、店を構えたりするんだよ」
お金を集めるゲームかー。
でもそれで戦略ゲームなんだ。確かに色んな人と駆け引きとかしてそうだし、戦略ゲームっていったらそうなのかもだけど。
「それに街の領主になったり、城を構えて運営したりも出来るよ。とてつもないお金が必要だけど」
「それで城構えて周りを侵略していくんだな」
「ソウはいつもバトル物にするね」
「兵士を育てて敵からの侵略に備えたり、兵士を自由に動かして領地を拡大していくんだよな」
「まったく……それで本当に出来るのはソウだけだよ。自由にって言ったってAIが高性能すぎて本物の人を動かしているようなものなんだからね」
なんだか現実世界みたい。エネミーもいるかもしれないし、背景も違うのかもしれないけど頭使いそうだなぁ。
でも確かにそれなら特設ステージでも、やることはあまり変わらないのかもしれない。
「私はWORLD CREATUREで良かったよー。真紀ちゃんやトリアと一緒に遊べるし」
「……美唯菜ちゃん! 私も!」
「……真紀ちゃん!」
うんうん。やっぱり一緒に遊べる友達がいるのはいい事だよね。
真紀ちゃんも同じで嬉しいな。
「ソウ? なにか取られたような顔してるけど大丈夫? ボクも奏! ……ってした方がいい?」
「……いや、いい。それよりももうすぐ始まるぞ」
視界の端にある時計を見ると時刻は14時少し前だった。
もうすぐイベントが始まるんだね。なんだかドキドキしてきた、真紀ちゃんも私と同じ様子っぽい。奏と根元はドキドキというよりワクワクっていう感じだから、この気持ちを共有できるのは嬉しいな。
「真紀ちゃん。イベント……一緒に楽しもうね!」
「……う、うん!」
「それじゃあカウントするぞ。10」
「9」
「8」
「7」
私はWORLD CREATUREをすぐに起動できるように準備する。
皆と顔を合わせると期待と高揚が伝わってくる。ドキドキやワクワクが伝染してどんどんテンションが上がる。
『さんっ!』
表情は次第に緩んでいき、笑い合いながらカウントを取った。
『にぃー!』
後はもうWORLD CREATUREのスタートボタンを押すだけ。
『いち!』
『ログインスタート!!』
「室長。カウントダウンお願いします」
「ええ。WORLD PROJECT初イベント、カウントダウン……5.4.3.2.1、START!」
「システム正常稼働。オールグリーン」
「さて、地獄のイベント期間です。くれぐれも無茶をしないように!」
「「はい!」」