45話
「現時刻を以て解放祝い喫茶店パーティを閉会させていただきます。二次会の場所は常に確保してるから時間があればご参加ください。以上解散っ!」
佐鳥がみぃにベッタリだから、他の子が途中から仕切っていた。
そしてパーティの時間か終わると皆思い思いに喫茶店から出ていく。
思っていたよりも楽しかったな。みぃも楽しんでいたみたいだし来てよかった。
まだ余韻が残るけどそろそろ帰ろうか。
「かなと」
「みぃ?」
「にじかい……いこ?」
まさかみぃから二次会に行きたいと言うとは思わなかった。
みぃが行きたいというなら僕は付いていくだけなんだけど。
「あぁ、行こうか。佐鳥、場所は知ってるのか?」
「うん。知ってるよ。私も行くし案内するよ」
「助かる」
みぃはまだお菓子を食べているトリアの所へいき、二次会に行くことを伝えにいく。
トリアは皿に残っていたお菓子を一瞬で口に入れると、すぐにみぃと戻ってきた。
「さぁ、行くわよっ!」
お菓子のカスが付いてるよ。言えないけど。
「トリア、ほっぺ」
「なに? 頬がどうしたの?」
「トリアさん、お菓子が口元に付いてるよ」
佐鳥が言ってすぐに、みぃがポケットからハンカチを取り出してトリアの口元を拭く。
本当に仲がいいな。トリアが僕を見て勝ち誇ってる。なんだ、この敗北感は。
「早く行くぞ。根元も行くだろ?」
敗北感を誤魔化すために急かすことにする。
ついでに根元も誘っておこう、多分来るだろ。
「あー、ごめん。次ラウワンのカラオケみたいだから止めとくよ」
「そうか、じゃまた明日な」
「おう」
根元は一足先に店を出る。
残るは僕らだけだ、場所は佐鳥が知っているからついて行けばいいだけ。
まぁ佐鳥に聞けば手っ取り早いけど別段その必要もないだろうし。
「いこ?」
みぃは店のドアを開けて待ってる。
よほど楽しみのようだ。なんだかこんなに楽しそうなみぃを見ていると胸が暖かくなるのは気のせいだろうか。
──カシャカシャッ
「いいわぁ! ミーナ可愛いわぁー!」
どうやら気のせいみたいだ。
隣で旧型のカメラを使って写真を撮っているトリアは一度メンテナンスしたらいいと思う。
店を出ると、佐鳥を先頭に歩き出す。佐鳥の横にみぃ、その後ろに僕とトリアだ。
みぃは佐鳥を見て勇気を出すかのように握りこぶしを作る。
「まき、ちゃん」
「どうしたの? 美唯菜ちゃん」
「その……た、楽し、かった。き…うは、ありが、と」
「……美唯菜ちゃん。まだまだこれからだよっ、二次会もあるしもっとタノシモウネっ! ……??」
いつの間にかみぃと佐鳥が名前呼びになってる。
みぃに仲のいい友達が増えるのは凄く嬉しいんだが、なんだか少し寂しいぞ。
「そうだぞ、みぃ。その言葉は最後まで取っておくんだよ」
だから会話に混ざることにした。
我先にと会話に入ってくると思っていたトリアはどこかを見て止まっている。メンテナンス中だろうか。
「……この道で正しいのかしら、さっきまでとは明らかに人数が少ないのだけど」
「んー、僕らが最後だったから近道じゃないか?」
トリアは今歩いている道に少し不信感を持っていたようだ。
まあ確かに人数が減ってきているけど、大体の人はWORLDに入っているだろうし、そこまで警戒することもないだろ。
「私が『外』を歩いたの初めてだからかしら、少し違和感があるのよ」
なおも唸っているトリア。
ここまでトリアが感じているならもしかしたら何かあるのか?
「もうすぐだよ。モウスグ着クヨ」
「うん」
佐鳥が小走りで先を進む。それにみぃが追いかけるように走る。
なんだ、この違和感は。胸につっかえる様なコレの正体はなんだ。何かおかしくないか……。
「モウスグ……モウスグ……ダメ」
「まき、ちゃん?」
「来ちゃダメ! ニゲテッ! ミイナちゃン!」
「……え?」
──パァンッ
佐鳥がみぃを押した瞬間、鈍い銃声が辺りを木霊した。
──パァンッ
続けて二度目の銃声が響いた。
常に魔力付与を施した足でみぃの元へ急ぐ。
「みぃ! 怪我は!?」
「だいじょ、ぶ……それ、より!」
「あ、あぁっ。ごめんなさいごめんナサいまたワタし。また……ゴメんなさイごめんなさい」
みぃが指を差した先には佐鳥が撃たれて倒れていた。
腹部に1発、右太股に1発。
足を撃たれ立てない状況で、佐鳥はみぃに謝り続けていた。
涙を流しているのは痛みからか……それとも──。
「ご機嫌は如何かね、といってもあまり宜しくないだろうが」
長髪の男が1人、どこからもなく“現れた“。
気味の悪い笑みを浮かべながら銃を片手に歩いてくる。
「思っていたよりも"解ける"のが早いな。まあいい……『心操』。さぁ俺の元へ来い」
「……あ。あぁァああアアアア」
男は取り出したカードを使用し塵に変えると、佐鳥に異変が起きた。
流していた涙が止まり、糸が切れたかのように叫び出す。そして足に穴が空いているのにも関わらず男の元へ歩き出した。
「まきちゃん」
みぃが追いかけようとするが、僕はそれを止めた。
「『守護』」
……狙われている。
気付けば囲まれていた。今行けば確実にみぃに危害が及ぶ。佐鳥を追いかけさせるわけにはいかない。
みぃの腕を掴んで四方に結界を張る、これで銃弾が来てもみぃを守れる。
「なん、でっ」
「危険すぎる。今行けば佐鳥も取り返せない」
あの男の使ったカード、佐鳥の言動を見るに人を操るものだ。
僕やみぃに使わなかった理由は知らないが警戒するに越したことはない。
「あんた達。私のみぃを危ない目に合わせて……タダで済むと思っているのかしら」
振り向けば今まで黙っていたトリアの存在感が増していた。エフェクトなんて生易しいものじゃない。トリアの怒りに世界そのものが悲鳴を上げ震えるかのよう。
守護の結界を通り抜けるように出ていき、ゆっくりと男に歩いていく。その手にはどす黒い槍が添えられていた。
「トリアっ! 危ない!」
「とりあ」
目の前の男じゃない。
僕らを囲んでいる奴らだ。
再び響いた度重なる銃声。
そして銃弾を弾く甲高い音。
トリアはその槍で銃弾を弾いて見せたのだ。
それでもまだ銃声が鳴り止まない。
「それ相応の代償は支払ってもらうわよ『反転』」
トリアが止まった瞬間、銃弾は来た方向へと踵を返した。
所々で叫び声が聞こえる中、トリアは男へと歩みを進めていく。
呆然としてしまった自分を叱咤し、僕も結界から出ようとした所で止まった。
男が佐鳥の頭に銃口を付けていたからだ。
「全員動くなよ。この女の脳みそをばらまかれたくなかったらなぁ」
下卑た笑いに虫唾が走る。
そのために佐鳥を呼び戻したのか。
「関係ないわ。それで脅迫したつもりかしら?」
僕とみぃが動けない中、トリアは悠々と歩いていく。その姿に微塵も迷いは存在しない。
トリアならきっと危なげなくあの男を制圧できるだろう。だけど佐鳥はどうなるかは想像出来ない。
「私はみぃが危険な目に合わないならそれでいいのよ。勝手にすればいいじゃない」
「チッ! ……ならお望み通りにしてやるよ」
「…………だめ」
小さく聞こえたみぃの声。
トリアが男へと近づき、男が引き金を引こうとしたらした時だった。
「だ、だめぇえ!」
……みぃの叫び声が響き渡った。




