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44話 火種


 「高江美唯菜だな、少しいいか」


 美唯菜が1度外に出てすぐの事だった。

 体格の大きな男が1人、警察手帳を見せながら話しかけてきた。


 「警察庁特殊対策課、九地大介だ。あまり時間は取らせない」


 特殊対策課。

 WORLD系の3種発売による混乱を推定され作られた新たな部署である。

 主にスキルや魔法等の絡んだ事件を優先してあたる所だ。


 美唯菜は突然の訪問に驚くが、男……九地大介はお構い無しに口を開く。


 「単刀直入に言う。あんた何者だ?」


 それはこっちが聞きたい。美唯菜は頭の中でそう思いながら呆ける。

 全く意味がわからない。突然警察の人が現れて何者だと聞く、一体なんだというのだ。


 「こ、うこ……せい?」


 途中途切れながらも答える美唯菜だが、九地にはお気に召さなかったようだ。

 しかし高校生以外に何者と言われても答えようがない。高江美唯菜は高校生である。高校2年生だ。1組である。


 「そうじゃない。なにも無くて一介の高校生が事件の中心にいるものか」

 「……じけん?」

 「とぼけるな。先日死んだ大黒は高江美唯菜を狙っていた」

 「え? ……しん、だ?」


 突然の九地の言葉に呆然とする美唯菜。


 「その大黒はフェイスパーティからアンタを誘拐するように命令されたんだ。両親を調べてもごく一般的な会社員だった。だったら、アンタ自身に関係があるはずだろう」


 自分が狙われている。

 フェイスパーティとはなんだ。

 大黒が死んだ。大黒というのはクラスメイトで、私と葉名先生を襲った人のことで間違いないだろうか。同姓同名の可能性もある。そもそも本当のことなのか。


 美唯菜は混乱するように目を白黒させる。

 九地はその様子にある可能性が頭をよぎった。


 「まさか……本当に知らないのか」

 「なに、を」


 意味が分からない。

 大黒が狙っていたのは美唯菜だ、だがそれは村田と組んでいたからじゃないのか。

 フェイスパーティなんて知らない。


 急に来た男の言葉に混乱する。

 男は頭を上げてどうしたものかと嘆いていた。


 九地は高江美唯菜が何か知っていると考えていた。

 それは高江美唯菜が事件の渦中にいるからだ。大黒を使い攫うように命じた根倉。その根倉はフェイスパーティという大きな組織のNo.2だ、なんの理由もなしに行動するはずがない。高江美唯菜には何かがあるのだ。そしてそれを掴んだ、もしくは掴まれた。関係があると考えてもおかしくない。

 もちろん高江美唯菜はこの件を知っていたと思っていたのだが……当てが外れた。


 しかし、この行動も意味が無くはない。

 根倉がなぜ高江美唯菜を狙っていたのかは知らないが、今も狙っている可能性も充分にあるからだ。

 もしそうなら九地が接触するだけで牽制になる。もっとも高江美唯菜を囮にすることも出来たのだが。


 九地は美唯菜に説明をした。根倉という存在、その危険性。もちろん全てを言えるわけではないが、危険を理解し気を付けるだけでいいのだ。


 美唯菜はどうして今そんなことを言うのかと九地を恨んだ。

 楽しいパーティが台無しである。

 だが自分が意味の分からない集団に狙われている事は分かった。

 これを嘘だとは思わない、九地が美唯菜のことを考えて言っているのが伝わるから。


 「出来るなら今すぐに家に帰ることをオススメする。家まで送ってもやれる」


 だが九地の提案に美唯菜は首を横に振った。

 身の危険は分かったがそれでもここを去ろうとは思わなかった。

 せっかくクラスの皆と仲良くなれそうなのだ、ここで帰ることなんて出来るはずもない。


 「そうか……まぁ何も起こらない場合だってある。根倉を捕まえるのも時間の問題だ。無理は言わない。だが気を付けてくれ」


 九地はそう言ってその場を去っていく。

 美唯菜は九地が去るのを見てから喫茶店に戻る。


 ……そして九地の話に少なからずショックを受けている美唯菜が、根元の胸を揉んでいる奏に対して低い低い重低音の様な声が出たのは言うまでもないだろう。






          ☆






 「くそっ。余計なことしやがって」


 九地が美唯菜に接触しているところを『遠見』のカードで覗いていた男がいた。


 名前は根倉壮治ねくらそうじ

 昨晩、九地を含む警察官に大立ち回りして逃げ切った男である。

 根倉は警察の包囲網を、WORLDワールド CIMシムで得た魔法やカードを使い今も逃げ延びていた。

 だが、新世代VRMMO特殊対応機関『オルディネ』という国際機関と警察の連携が想像よりも密にとられていた事や、自分の行動スキルやマホウを先読みし対処する……まるで超常を理解しているかのようなオルディネの動きに着々と追い詰められていた。捕まるのは時間の問題である。


 そんな追い詰められた根倉が描いた唯一の活路は高江美唯菜である。

 高江美唯菜さえ攫えば必ずある組織が介入してくる。あとはなんとでもなる。フェイスパーティにはもう戻れない、ならば高江美唯菜を餌にあの組織に入ればいい。

 高江美唯菜さえ手に入れば全てが上手くいく。


 もう根倉にはそれ以外の選択肢が無い。オルディネから逃げ切れないと分かった以上、もう取る道は一つしかない。

 オルディネは自分が高江美唯菜を狙っている事やその理由は掴めていないだろう。今がチャンスなのだ。


 そんな状態だからこそ九地の行動にイラつきを覚えた。オルディネにばかり気にしていたからか、警察が高江美唯菜に接触しているとは思いもしなかった。

 やられた。九地は帰っていったが、それは他の警察と連携が取れていると言っているようなものだ。

 そして高江美唯菜を狙い隠れている根倉に対し牽制した。オルディネとの連携が密なことから、オルディネにも情報が伝わっていると想像できる。


 九地の行動は完璧独断、オルディネには何一つ喋っていなく、少しでも根倉に牽制出来ればいいだろうというものであった等と根倉には分かるはずがない。


 今や根倉は起死回生の手札さえも敵に丸見えだと感じているだろう。

 警察やオルディネがどれだけ情報を掴んでいるかは知らないが、残っている全ての手札を使わないといけない事は分かった。



 根倉がしているVRMMOゲームはWORLD CIMである。

 WORLD CIMでは身体能力、魔法やカードを『買う』ことが出来る。買える能力の種類等は条件があり、万人が決まったものを買えるわけではない。

 つまりWORLD CIMにも個人差により持つ能力が違う。


 買った能力はストックでき、一度使うと消える。いわばアイテムのようなものだ。

 根倉はもう謎カプセルに入り、能力を買い直すことは出来ない。そうしている間に包囲される可能性があるからだ。二度包囲から逃げ切れるとは思わなかった。


 ならばと根倉は一枚のカードを取り出し、魔法を一つ発動させる。


 「くひひっ。俺の舞台はまだ終わらない。さぁ上手く"来てくれよ"高江美唯菜さん」

「単刀直入に言う。あんた何者だ?」


「ある時は高校生。またある時は高校生。そしてまたある時は高校生! その正体はマジカルミラクル(味噌ラーメン食べたい)ルンルン魔法少女タカーエ・ミィナだよ✩キラッ」


「……長ぇよ」

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