37話 みいなとトリアその4
高江美唯菜 家族が一人増えた日
朝。太陽の日差しが窓を通して私達に降り注ぐ。
私は目を開けると隣のトリアに顔を向けた。
「おはよ。トリア」
これが朝チュンってやつなのかな。
トリアの綺麗な銀色の髪に手を伸ばし、サラサラとした感触を楽しみながら梳いていく。
暫く楽しむと、もう一つの手がほっぺまで伸びていき優しくつまむ。柔らかくてムニムニしてこれは癖になるかもしれない。
しかし起きないね。トリアは朝に弱いっていう新発見、トリア可愛い。
でもこのまま起きないとイタズラがエスカレートしちゃうぞ。
と、冗談はさておき。ベットから降りて窓から奏の家を見る。
「おはよう。かなと」
これは日課だから仕方ない。重いなんて言われても……仕方ないね。
さて、起きる用意をしようかな。と窓からベットへ振り向くと、トリアと目が合った。
「ミーナ。いつもそれをやっているの?」
「トリア。いつから?」
被ってしまった。
だんだんと顔が熱くなっていく。見られても良かったんだけど、こう不意打ちだとなんだか……。
「さっきよ、なんだか頬あたりが寂しい? みたくなって目が覚めたのよ」
え? それって私がしたイタズラが心地よかったってこと!
トリアは私のイタズラだとは知らずに「なんだか幸せだった気がするのだけど」なんて言ってる。私はもうニヤニヤが止まらない。
「トリア」
「何かしら?」
「かわいい!」
最高! 大好き! 愛してる!
奏とトリアは私の嫁だ!
抱きついた拍子にトリアのほっぺをもみもみ。この感触がたまらないんだよね。
「そう……この、この感じよ。ってあれ?」
「ふふふ、トリアは……かわいい、な」
暫くいちゃいちゃしていたい所だけど、そろそろ起きないとね。
一旦トリアから離れると、トリアがしゅんと沈むような顔がみえた。頭に犬耳が見えたのは気のせいかな。
もう一度トリアにダイブしたい所を我慢してトリアの手を掴む。
「一緒、おふろ……はいろ?」
「えぇ! えぇ! もちろんよ」
トリアと一緒に部屋を出て、風呂場へと直行する。
脱いだパジャマは洗濯籠へ入れておく、トリアも服を脱ぎ出して驚いたことがあった。
「むね」
「どうしたの、ミーナ? ひゃっ!!」
二つの大きなお山がこんなにも憎らしいなんて……。こう間近でみると本物か確かめたくなるね。
このこのこのこの。
「んっ、ちょっ、ミーナ! やっ!! だめ、んっ!」
「姉ちゃん、なんか声が聞こえるけどどうしたー?」
突如として聞こえる弟の声。場所は近い。
洗面所の扉が無造作に開け放たれようとして、私が瞬足で扉を閉めた。
ゴンッと鈍い音が鳴り、同時に弟からの叫び声が木霊した。
「いってぇぇええ!」
とりあえずトリアを風呂場に入れてから洗面所の扉を少しだけ開ける。
「なんなんだよ、姉ちゃん!」
「蓮、トリアいる。へんたい」
「へ? あっ、あー! いや、違うって。なんか変な声がしたから」
この期に及んでまだ言い訳をするか。ならば致し方ない。
「へんたい、な……蓮は、ごはん……抜き」
「すいませんでしたっ!」
ふむ、よろしい。
この勝負は胃袋を掴んだものが勝つのだよ。
そっと扉を閉じて、もう1回開ける。
「のぞき、ダメ」
「誰も覗かないわ!」
大切な親友の裸だからね。私以外見るわけにはいかない。
さてと、問題も片付いた事だしお風呂に入ろう。
お風呂から上がると一緒にリビングへ行く。
これから朝食の用意だからトリアにはここで座っていてもらおう。
「トリアは、ここで」
「私も手伝うわ。私もなにかしたいもの」
言う途中でトリアの手伝う宣言。それじゃあ一緒にご飯作ろうか。
これが嫁と一緒に作る夫の気持ちか。トリアは私の嫁で私は奏の嫁で……完璧な布陣じゃないかな?
「じゃ、トリア。こめ……あらって、くれる?」
「任せなさい」
トリアは胸を張って指の間に一つのカードを発現させる。
え? ちょっとまって。
「『高圧洗浄』」
その瞬間、カードから勢いよく圧縮された高圧水がお釜さんの中にあった米を爆散させた。いや、なんていうか……飛び散った? それはもう凄い勢いで。
「え?」
そして声を出したあと固まるトリアと、言葉を失って呆ける私。
トリアを見ると目が合った。見つめ合うことしばし……。
「ミーナ、ごめ──」
「ふふふっ」
あっ。だめ。我慢してたのに。
ふふふふふっ……はははっ。
「なんだなんだ、姉ちゃんが珍しく笑って……うわっ」
台所に顔を出した弟の蓮の動きが止まる。
爆散して米まみれの台所に大笑いしている私、困惑しているトリア。なんだか今日は私らしくもないや。
「あー、そういうことか。ちょっと待って……『水操』」
事態をいち早く察した蓮が何かの魔法で近くに飛び散った水を集めていく。
その水は飛び散った米に当たると、水の中に入っていった。なんて便利な魔法なんだ。水が通った後でも湿っていないし、掃除が楽になるよそれ。
そして米入りの水は一部だけ濁っていき、その部分だけ分離するとシンクの排水溝に流れていった。
「はい終わった。この米ももう洗ったから、さっきの濁ったやつは米とかについた汚れだから綺麗なはずだよ」
蓮はそういってお釜さんに米を戻そうとして止まった。
私とトリアもお釜さんに目を向けると見事に凹んでいた。
「あっ、わ、私が直すわ。『復元』」
トリアが使ったカードの効果でお釜さんはみるみるうちに元の形に戻っていく。
そして無事にお釜さんの中に米が入る。
「ごめんなさい、ミーナ」
「うん。米は、ね。こうする、の」
蓮が言った通り綺麗だと思うけど、これはトリアに見せるためだ。トリアは出来る子だから次は大丈夫なはず。
「それで、このまで、みず、入れて……おわり」
「分かったわ! 次は出来るから任せてちょうだい!」
「うん」
お釜さんをセットしてスイッチを入れる。
次はお味噌汁と焼き鮭をしよう。昨日も魚だったけど、蓮が魚好きだからいいかな。さっきのお礼。
「それじゃ、トリア、は──」
「任せて」
「蓮、も──」
「えっ、俺もかよ。攻略情報みたいのに」
そこにいるからね。ついでに手伝ってもらおう。
こうして3人で朝食を用意していき、テーブルに並ぶ頃にはママとパパが起き出してリビングへと集まってくる。
「おはよう。美唯菜に蓮、トリアさんも」
「おはよ」
「おは」
「おはようございます。唯人さん」
「あはは。そんなに他人行儀じゃなくても大丈夫だよ」
パパの朝の挨拶にトリアが礼儀正しくお辞儀をする。
パパは少し困った顔をするけど、どうしたんだろ。パパもトリアも。
「はい。おはよう可愛い娘達」
突然ママが両手を広げて言う。
もちろん私はママのお胸に向かってダイブ。……私もいずれこんな風に。
「え? 俺は?!」
「ずっとゲームしている子は知りません」
「き、今日は外に出かける予定だし」
「あら? 寂しいの?」
「ち、違うから!」
素直じゃないなー。
ママのおかげで少し微妙になった雰囲気が霧散していく。というか、蓮もしかして本当に寂しいのかな。
「おはようございます。美蓮さん」
今回は固くなく、ニコニコと笑顔である。……パパ何かしたの?
パパは首を振って否定している。まぁいいかな。
「……あらあら、可愛い娘達というのはトリアさんも入っているのよ」
ママは私を片手で抱きしめて、もう片手を広げる。
これは入ってこいっというママからの威圧である。トリアは逆らえない。そしてトリアは私の親友兼家族になったのだ。
「な、なんだか恥ずかしいわ。美蓮さん」
「あらあら、母と呼んでいいのよ」
「えっ、それは……その」
「だめ、かしら?」
「…………か、かあさん」
「はいっ。トリア!」
キャーとママは抱きしめる力が強くなる。トリアは真っ赤になっているが物凄く嬉しそうだ。ママも心なしかいつもより笑顔だ。
むぅ。私のトリアなのに。
「ごはん、冷えるよ」
「あらあらそうだったわね。早く食べましょうか」
ママはご機嫌で椅子に座る。
私達も椅子に座る。トリアの椅子は昨日の夜にトリアを紹介したら、パパがすぐに買ってきた。パパかっこいい。
ちなみにトリアは私とママの間に座っている。ママに取られないようにしないと……。
「それじゃいただきますっ!」
「「「いただきます」」」
おまけ。
「トリア。洗いっこ」
「ひゃっ! ミーナ、そこは自分で洗えるから大丈夫よっ」
「だめ。ちゃんと、洗わないと」
「んっあ!! ……いいわ、なら私もミーナを洗ってあげる」
「んっ、トリア、だめストップ」
「すみずみまで洗ってあげるわ!」
「んっ~~~!!」
(๑////๑)←聞き耳を立ててた蓮。




