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30話 九地大介


 何かがおかしい。

 俺はそう思った。


 度重なる事件の次に、家を全焼させるほどの放火が数件。それに近くの高校での乱闘騒ぎ。ここまで同じ地域で事件が多発しているのは隣接している地域にも聞いたことがない。

 何かがある、俺の感がそう告げている。


 「九地警部補。容疑者として連行した大黒ですが、取り調べの途中に……亡くなりました」


 事件の整理をしている中、部下が俺にそう報告してきた。


 「なんだと!? 一体どういうことだ!」

 「はい。1日かけてようやく口を割ろうとした所です、突然苦しみだしたかと思うと次の瞬間にはもう」

 「一体何が起こっているっていうんだ……」


 これもあのゲームが絡んでいるのだろうか。くそっ、訳が分からん!

 いや、全てを例のゲームのせいにするのは早計かもしれない。


 だが、大黒は取り調べの最中に倒れた。いくらなんでも周りの目を盗んで【何か】をする事が出来るだろうか。

 首に掛けていたコネッキングは外していたはずだ、コネッキングから脳へのダイレクトハックはもちろん暗示だって出来るわけがない。


 「WORLDワールド CIMシムのスキルが濃厚ですかね。この場合自殺となるのか他殺となるのか」

 「ん? どういうことだ。WORLD CIMはWORLD FANTASYファンタジーとWORLD CREATUREクリーチャーの魔法やカードを買えるだけだろう?」


 三つのゲームが要因だとしても、WORLD CIMに絞れる理由が無いはずだ。

 能力を金で買えるから、現状だと他の2作品よりは可能性として考えうるのは分かるが。


 「WORLD CIMの初期スキル【契約書】による強制力ではないかと。コネッキングをしていなくても、ゲームでのスキル等は現実世界に反映されることが実験により分かりましたし」


 特殊スキル【契約書】。

 WORLD CIMのプレイヤーだけが使える初期スキルだ。

 効果は契約書に書かれたことの絶対循守。1度契約書にサインさえすればほぼ強制で実行される。

 そして両者の合意が無ければ契約破棄をすることが出来ない。


 ……盲点だった、確かにそのスキルを使えば可能だろう。

 だがそうなると犯人の特定は難しそうだな。

 今は大黒の周りを漁るしか無さそうだ。


 「となると被害者を大黒としてここ1週間の足取りを追うぞ! これはあまり期待しないが問い合わせも一応しておく」

 「はっ!」


 ゲーム会社に問い合わせといっても良い返事は来ないだろう。出来れば誰が大黒に契約書を使ったか知りたいが、返ってくる返事は容易に想像できる。あてにはできない。


 もし大黒の後ろにいる人物が放火事件の犯人や、その関係者なら話は早いのだが……そう上手くはいかないだろう。

 そうでなくても一連の事件が繋がっていない証拠になるのならそれでいい。


 とにかく大黒が何かしらの手掛かりになる可能性があるなら利用しない手はない。

 出来るなら大黒のコネッキングも調べておきたいところだ。


 コネッキングから事件に関わるやり取りが残されている可能性もある。視覚補助機能や聴覚補助機能があり、視覚的情報などは一定期間記録されている。

 この情報は良くて2日で自動的に消えてしまうものだから、調べるとしたら一刻も早いほうがいい。

 本当はこれを勝手に見ることは許されないのだが、こうなった以上親族には事故承諾してもらう他ないだろう。


 大黒の遺品からコネッキングを取り出し、自前のPC(パソコン)に繋げる。一昔前の物だが充分だ。


 「コネクト」


 PCによりコネッキングを無理矢理起動させ、自分のコネッキングと同期させる。

 自分のコネッキングを取り替えて起動しても良かったのたが、どんな罠があるか分からない今は安全を期している。


 眼前に映し出されるのは、大黒のコネッキングから送られる情報。

 そこからすぐに2日間の映像データをPCに複製し、また表示する。

 そこには求めていた映像が流れていた。


 根暗そうな男が大黒に契約書のサインを強要している所だ。

 状況からしてWORLD CIMの特殊スキル【契約書】に間違えないだろう。


 契約書の内容は[高江美唯菜を誘拐する]こと、[成功したらフェイスパーティを抜ける]こと、そして[この事を漏らそうとした瞬間に心臓が麻痺する]ということ。

 最後の文面が大黒の死因だろう、これは理解した。だがそれよりも……。


 「……フェイスパーティ」


 ふと声に出してしまったソレは、俺がよく知っているはずの団体だった。


 フェイスパーティ。

 裏社会で勢力を拡大している大型組織。昔はガキの遊びだったが、今はあらゆる犯罪に手を染めている。

 そのフェイスパーティが何故ただの高校生である高江美唯菜を狙ったのか。


 これはフェイスパーティと高江美唯菜の両方を調べる必要がありそうだ。

 大黒の生前1週間は部下が調べている、運が良ければフェイスパーティの構成員が分かるかもしれない。部下にフェイスパーティが絡んでいる可能性を伝えておかなければ。フェイスパーティが高江美唯菜を狙っていたということも伝えておくべきだろう。


 俺の最優先行動は、映像の男の身柄を調べることだ。

 こいつさえ分かれば事件の解決が近づくはずだ。




              ☆




 「報告します。大黒と交流があった人物を割り出し調べたところ、裏組織フェイスパーティの構成員と密接な繋がりがあることを判明しました」

 「そうか……」


 やはり大黒とフェイスパーティの関わりは深かったようだ。


 「そしてその構成員のほぼ全てが放火事件の被害を受けていました」

 「なにっ!」


 どういうことだ。偶然だとしても出来すぎじゃないか。

 大黒を犯人に見立てたとしても、高校の乱闘時にそれらしき[何か]を使うそぶりは無かった。まずないと言えるだろう。


 大黒と関わりのもつ構成員が全員放火されているとしたら、残った被害者もフェイスパーティの一員という可能性がある。

 だとしたら今絡んでいる騒動はフェイスパーティと、その敵対している[何か]という考えが持てる。


 もし仮説が正しければ一体何と争っているのか……。


 単純に考えるのなら、乱闘時に大黒と行動をしていた村田悠里だろうか。村田は大黒と繋がりがありフェイスパーティに敵対、放火したのち大黒がフェイスパーティに強要され【契約書】にサインをした。

 村田は高江美唯菜への私怨もあり、それに協力した。監視カメラで彼女が炎を出しているところは覚えている、放火も出来るのではないだろうか。


 だが彼女には動機が見当たらない、まず個人が裏組織に喧嘩を売るほどの理由など余程のことがない限りないと言えるだろう。

 大黒と繋がりがあったとして、カメラ上ではあまり親しくない様子だった。はたして大黒の為にそんな危険な真似をするだろうか。

 これは違う組織が絡んでいるならやりようはあるかもしれないが。


 やはり大黒と村田がフェイスパーティに喧嘩を売るなど、現実的ではないし有り得ないだろう。


 「あのー?」

 「なんだっ」

 「フェイスパーティが高江美唯菜を狙っていたのなら、高江美唯菜がフェイスパーティに火をつけたのではないのでしょうか」


 ふむ……。

 確かにフェイスパーティが高江美唯菜を狙う理由にはなるだろう。乱闘時に攫われた被害者だと思い込んでいたのかもしれない。


 大黒や村田がフェイスパーティに参加していたのなら、イジメを受けていた高江は仕返しとして火を付けた。

 フェイスパーティは高江を敵と判断し、大黒と村田を使い攫おうとした。


 フェイスパーティに参加していない高江は、その力の大きさを知らないだろう。そしてゲームによる力の獲得により自らの力を勘違いした。


 筋が通らなくもないな。

 ただ、その場合は大黒や村田が力に溺れて放火したと考えることも出来るのだが。


 いずれにしてもこれ以上は情報が足りない。

 確証がない今は、地道に捜査をしていくしかないだろう。


 「とりあえず高江美唯菜の身辺を洗え、あと一応村田悠里もマークしておけ。いずれにしてもフェイスパーティが関わっていることには変わりないだろう、慎重にいくぞ!」

 「はっ!」


トリア「次章また会いましょう……え? 短いって? 次もこっちの世界がメインよ、私も一歩踏み出すことにしたわ。じゃあまたね」

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