28話 みいなとトリアその3
猫ちゃんに囲まれながらトリアに抱きつく、結構目立つようで周りの視線がチラホラと感じる。
村田さんの取り巻きその一は視線に当てられているからか、いつもよりビクビクとしていた。
「一体何の用かしら? 聞くところによるとミーナに意地悪をしていたそうじゃない」
トリアは猫に包まれながら取り巻きさんを牽制する。でも猫のおかげで可愛いだけなのだ。
というかいつの間にそんな情報を知ったの。
「あれは、そのっ。いや……ごめんなさい。その件については言い訳も出来ないね」
「分かっているならさっさと消えなさい。アカウント消すわよ」
「……トリア、大丈夫だから」
喧嘩腰のトリアを制して、改めて取り巻きさんに目を合わす。
少し震えて緊張するけど、彼女も同じ様子だ。
「それで、何かようかな?」
「うん。今までの事の謝罪と……その、クラスの皆と話し合ってね」
「言いたいことがあるならさっさと言いなさい!」
「ひゃっ、うん。ごめんなさい」
トリアー、言い過ぎだよー。私を思ってくれてるのは分かるけど、話が進まないって。
でもありがとう。胸がスカッとしているのはトリアのおかげかも、私は悪いやつなのかな。
「3日間学校が休校になったのは知ってるよね。それで明後日に皆で謝りたいんだ、これまでのこと。もし良かったら明後日、この場所に来てくれないかな? も、もちろん相馬くんや横のお姉さんも一緒で全然大丈夫だから!」
そう言って渡してきたのは1枚のカード。
カードを召喚してみると一枚の地図が現れた。
地図は立体に現実世界を映し出し、駅近くの喫茶店を示す。
「ここに来いと……ずいぶん遠いみたいね。謝りたいなら自らの足で会いに行くのが普通じゃないのかしら」
それはまぁその通りだと思う。私だってすべて疑う訳じゃないけど、何か裏があるのではとか思うよ。
それに昨日あんな事があってすぐなんだ、いくら何でもね。
「それは確かにその通りだね。ごめんなさい。この場所に来てほしいといったのは、あの女からの解放祝いをしたいからなの」
解放祝い?
誰の?
クラス皆の?
「それならミーナ抜きでも大丈夫なはずよ。……ごめんねミーナ、私はミーナが苦しむのは見たくないの」
「トリアの気持ちは充分伝わってるから大丈夫だよ。ありがとう、トリア」
もし私を含めて解放祝い兼謝罪をしたいというなら、今までの禍根を少しでも減らしたいんだろうな。
一石二鳥ってやつだね。
「目的としては謝罪が大本命だから、これをしない事には祝いなんて出来っこないよ。解放祝いは高江さんが主役じゃないといけないから」
真剣に言っているのは伝わってくる。取り巻きさんは本気で言っているのかもしれない。
……でもまだ私は取り巻きさん達が、怖い。
「散々高江さんを追い詰めた私達を信じてほしいなんて虫が良すぎるとは思う。今更仲良くしましょうなんて、仲良くしたいなんて……都合が良すぎるのも承知です」
取り巻きさんは人目が集まっている中、深々と頭を下げて言う。
「私に……私達に誠意を示させて下さい」
…………。
……そっか。
「わかったよ、明後日だね。」
「……っ!! うん!」
顔を上げた取り巻きさんは少し泣いていた。
トリアはため息をついて、私を見てから取り巻きさんに質問する。
「それでもちろん時間は決まっているのよね?」
「時間は高江さんの都合に任せることにしたの。何時に高江さんが来ても私達は喫茶店で待っているから」
「っ馬鹿じゃないの! それなら遅くなればなるだけミーナが気にしちゃうじゃない! 今決めなさい、いま!」
トリアさん……敵認定した時の猫みたいですよ。
「えと。じ、じゃあ昼の1時でどうかな?!」
昼の1時……うん、大丈夫だと思う。
「わかった、昼の1時だね」
「う、うん。ありがとう!」
「話が終わったならさっさと去りなさい、アカウント消しちゃうわよ」
「は、はいっ」
取り巻きさんはもう1度頭を下げると、走って去っていった。
「……トリア、ありがとう」
トリアが気丈に振舞ってくれていたから、私は堂々といれたんだと思う。
これは明後日も頑張らないといけないね。
「ミーナ、私は心配だわ。もちろん私も付いていくわよ? それでも私は……」
トリアはさっきまでのことが嘘のように沈んでいる。私はもう1度トリアを抱きしめて頭を撫でる。
これは沈んだ時いつも奏が私にしてくれること、いつも私はこれだけで心が浮くんだ。
「ありがとう、トリア。私は大丈夫だよ。不安もあるけど、トリアや奏が付いてくれるから。私は安心できる……きっと大丈夫」
このままだなんて嫌だから、私も踏みださないといけないから。
きっと奏も付いてきてくれる。深刻にならなくてもいいんだ。気楽に行こう、気楽に。
「そうよね……私も付いていくんだし何が起こっても大丈夫よ!」
「うんうん!」
奏が聞いたらフラグとか言いそうだね。
でも取り巻きさんがあそこまでしてくれて、行かないわけにもいかないから。
「よし、じゃあもう1回休憩しよー!」
さっきの事でまた疲れたし、もう休憩でいいよね。
「休憩しかしてないじゃない」
「疲れたもん。ほら猫ちゃんも休憩の体制だよ」
猫ちゃんも伸び伸びと休憩モードだ。猫ちゃんがトリアに引っ付いてくるのはもうお決まりだね。
トリアも引っ付かれて幸せそうだから全く問題なしだ。
暫くだらだらとしているとトリアが急に「あらっ!!」っと声を上げる。
どうしたのかトリアを見ると般若のような顔をしていた。……えっと。
「どうしたの? トリア?」
「ミーナ。……これを見なさい」
トリアが指を振ると、私とトリアの前にある動画が映し出された。
その動画には奏が知らない女と手を繋いでいる所で。
「……どういうことかな?」
「ミーナ、これは大問題よ」
それにしてもこの女の人どこかで見たような……。
いやそれよりも、私という人が居りながら! これは問い詰めないといけない。
浮気だよ浮気。付き合ってないけど。
私ってめんどくさい女だな、絶対。
でも仕方ないね、私という面倒臭いやつに目をつけられたのが運の尽きだよ。
ってことで問い詰めないと!
「トリア、乗り込もう」
「……えぇ、もちろんよ」
そうと決まればさっそくだ。
奏に会うのが恥ずかしいなんて言ってられない。
「猫ちゃん、また遊ぼうね」
--にゃー!!
敬礼してる猫ちゃんを見て少しほっこりする。
いやだめだめ、奏の家に乗り込むのだから。
さっそく街のログアウト場所にいきログアウトをする。
意識が沈んでいき、部屋の謎カプセルの中で目を覚ました。
さて、奏の家は向かいだからすぐだね。今頃ゲーム中なのかな? 部屋で待たせてもらおう。
合鍵は奏のお母さんから貰っている、完全犯罪だ。
服を着替えてトリアを呼び、家を出る。
「しゅつ、じん!!」
気合を入れてから奏の家の鍵を開ける。
……トリアは家の合鍵を持っているのを見て見ぬふりをしていた。
家の中には奏以外誰もいない。両親は仕事に行っているはずだ。
私は奏の部屋に直行して待機する。もうすぐお昼だからきっとゲームを中断するはず、私とトリアは奏の部屋で浮気かっこ仮を問い詰める練習をして待つことにしよ。
★白ねこ
白い猫。可愛い。真っ白。瞳も白い。




