26話 みいなとトリア
朝起きて、いつも通り奏の家に向かっておはようを言う所で動きが止まった。
「は、恥ずい」
いや違うよ? 私が奏の事が好きなのは奏だって知っているはずだし!
でもあんなに盛大に「大好き」って言っちゃって、もし窓を開けて奏がいたらどうすればいいのだろう。
……上手く喋れる気がしない。元々上手く喋れないんだけども。
おそるおそる窓を開けてホッと一息。「おはよう」を言ってすぐに窓を閉めた。
これだけでドキドキが止まない。今日の私は気を引き締めないとダメみたいだ。
とりあえず部屋から出て、顔を洗ってシャワーを浴びる。
着替えて台所に行き、いつも通りお弁当の用意。
お弁当が出来上がると次は朝食だね。
「おはよー、姉ちゃん」
弟の蓮だ。今日はいつもより早い、いつもはパパとママがご飯を食べてるくらいに起きてくるのに。
「お、はよ。はやいね」
よし、いつも通り挨拶も出来てる。この調子なら大丈夫かも。
蓮は朝食の焼き魚を見て目を輝かせる。蓮は魚が好きなのだ、好きすぎて海族になるくらい。
蓮は朝食の手伝いで皿を出してくれる。その途中、私の作ったお弁当を見て止まった。
「あげないよ」
「いや姉ちゃん、今日学校休みだよ」
「…………あっ」
そうだったー!
今日から3日目は学校が休みなんだった。わー私何してるの!
今日はもうダメかもしれない。奏に会えないだけまだ……いや会いたいんだけど!
蓮は固まった私の肩を叩いて言った。
「どんまい!」
蓮のために作った目玉焼きをママにプレゼント。
「ちょっ、ちょっと待って」
私は無言で蓮の焼き魚を半分に分け、半分をパパの方に入れる。
「ごめんっ、ごめんって姉ちゃん。魚だけは勘弁!」
「……よろし」
お皿に再度取り分けると、蓮は朝食をテーブルへ運んでいく。
頼りになる弟だ。
テーブルに運び終えるとパパとママがリビングにやってくる。
「おは」
「あらおはよう……蓮、今日は早起きなのね」
「おはよ。今日は学校が休みだから、朝からゲームするためにね」
「まったくそういう時だけ早起きするんだから」
都合の良い時だけ早起きする蓮、苦笑するママを蓮は歯を出して笑う。
私は椅子に座る前に台所から弁当を取ってくる。
「パパ、おは」
「おはよう美唯菜」
「これ、べんとー」
奏用に作った弁当だけど、学校がないなら仕方ない。いつも外食らしいパパに食べてもらおう。
「え? これパパにかい!?」
「いらない?」
「いる! ありがとう美唯菜! どうしようママっ、美唯菜から弁当もらった! 嬉しすぎて食べ──」
「……たべない、なら」
「もちろん食べるよ!」
大はしゃぎするパパを見ていると、私も嬉しい気持ちになるなぁ。今度からパパの分も用意してあげようかな。
「そうだ、写真撮ろう。今日は美唯菜のお弁当記念日だ」
「パパ、いい加減にしないとご飯が冷めるわよ」
「あっうん、そうだね。ご飯食べよう」
未だ興奮が収まらないパパをママが座らせる。
「いただき」
「「「いただきます」」」
テレビを付けるのを忘れていた。といっても蓮はせっせと食べてるし、パパは無駄に笑顔で自分の世界に入ってるし、見るのは私とママくらいだけど。
「ご馳走さま!」
「はい」
「じゃ! ……ゲームの時間だー」
蓮は猛スピードで食べ終わると、皿を台所に持って行ってからすぐにリビングを出ていった。
「美唯菜、身体はもう大丈夫なの?」
「ん」
昨日もママが同じことを聞いてきたけど、どこも悪いところなんてない。大丈夫。
「ならいいんだけど、困ったことがあったらママに言うのよ」
昨日、奏に告白じみたことをしてしまった事の相談なんて出来るはずもないよ。恥ずかしいし。
「パパならいつでも力になれるからね、どんどん頼っていいんだよ!」
パパが戻ってきた。今なら本当に何でもしてくれそう、なにかして欲しい訳じゃないけど。
「ご馳走さま! じゃあパパ仕事にいってくるよ、お弁当ありがとう!」
「うん、いてら」
「行ってらっしゃい」
パパは謎カプセルからじゃなくて、玄関から出ていった。謎カプセルでの移動は持ち物も一緒に移動されるらしいけど、弁当の持ち運びがしたいみたい。
「ごち」
「ごちそうさま」
私とママは一緒に食べ終わり、2人で洗い物をする。
「ママ」
「なにー?」
「紹介。したい、人……いるの」
「奏くんはもう知ってるわー」
「ちがくて」
紹介したいのはトリアのことだ、やっぱり早く紹介して一緒にご飯が食べたいから。
「……親友」
「美唯菜がそこまで言うのは珍しいわね、ゲームで知り合ったのかしら」
「うん」
現実では絶対知り合うことが無かったけど。
私は一つのカードを出してママに見せる。
「……可愛らしい子ねー、カードの中にいるのかしら」
「うん……呼んで、いい?」
「いいわよー。でもその前に食器を片付けてからね」
「うん」
片付け終わるとリビングにいき、もう一度トリアのカードを取り出した。
「お初にお目にかかります、トリアと申しますわ。いつも親友のミーナさんには仲良くして頂いております」
と、トリア!? 一体どうしたの。
「あらあら、ご丁寧にどうも。私は美唯菜の母をしている高江 美蓮といいます、娘と仲良くしてくれてありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いしますね」
え、ママまで! ちょっと私が恥ずかしいから止めてほしいんだけどー。
「ママ、トリア、そこまで」
「ふふっ、娘に止められちゃったら仕方ないわねー」
「ミーナが言うんならねー」
なんでそこまで息があってるの!?
ビックリだよ、会って1分もたってないよ。
「じゃあトリアさんはこっちに座っていてくれるかしら、私はお茶でも入れてくるわ」
「いえ、そんなお構いなく。大丈夫ですので」
「……私、いれる」
二人とも遠慮して長くなりそうだから、私が率先してお茶を入れるべく立ち上がる。でも二人を会わせたのは私だし、その私が抜けるとダメじゃなかったかな。変な空気になっていなければいいけど。
「これよこれー、美唯菜の5才の写真」
「か、可愛いわー! 美蓮さん、この写真のコピーって」
「こんな時のために用意しているわ!」
お茶を入れて戻ってくるとママとトリアが物凄く打ち解けていた。
てか写真ってなに!?
「ママ、トリア?」
ママは凄い速さで写真を隠し、トリアは何事も無かったようにニコニコしてた。
とりあえずお茶を置いてママの方に向く。
「ママ、しゃしん」
「何も無いわよ? ね、トリアさん」
「そ、そうよね美蓮さん」
……まぁいいや、それよりトリアのことだよね。
「そういえばトリアさん、トリアさんさえ良ければ朝食とか一緒に食べない?」
「え? いいのかしら……ならお言葉に甘えるわ」
言われてしまったー。いや結果的に良いんだけど、良いんだけど。
それから暫くして私はゲームの世界に行くために部屋に戻る。トリアも1度カードに戻ってもらって、ゲーム内で再召喚する予定だ。
カードをしまい、謎カプセルに入って電源を入れる。
奏はいるかなぁ、いたらどうしよう。
いや、それでもきっと大丈夫! ……多分。
★スカイシュリンプ
空飛ぶエビ。大きい。食べれない。




