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24話


 場所はテールム武器店。走って来ただけに、朧げだけど道は覚えた。


 「あんまり良いものないねー」

 「そうだなー」


 今はユウタパーティをPK(プレイヤーキル)した時にゲットしたアイテムを見ている。多少精通している名無しさんが見てくれるというから見てもらっているわけだ。

 ちなみにGは1000Gちょっとで、期待はずれだった。


 PKをすると、相手が持っているアイテムをランダムで2つ奪うことが出来る。それはメイン装備だって運が良ければ奪えるのだ。


 そして手に入ったアイテムはリーフ草が4つ、ズタボロの鎧が一つ、なまくらの剣が一つ。

 ちなみになまくらの剣はユウタくんが持っていた剣で、ズタボロの鎧は僕が斧でめちゃくちゃにした鎧だった。鎧をぶった切った後が残ってる。


 「この斧が一番マシだ」

 「そうだねー、私が見るまでもない位だったから悲しいよ」


 戦いの最中に奪った斧はそのまま僕の所有になっている。斧と剣を取り出してステータスを見比べても、斧の方が幾分マシであった。



剣] なまくらの剣


レア度 最下級

威力 2

耐久 10/10

説明 見た目に力を入れた作品。鍛治職人の弟子の弟子が遊びで作ったオモチャ。1度も研がれたことがない。


斧] 普通の戦斧(せんぷ)


レア度 最下級

威力 10

耐久 18/20

説明 よくある市販の戦斧。量産型。


 まあ使い捨ててもいいんだし、所詮は貰い物だ。いや奪い物だな。


 「あんちゃん、その剣いらないなら売っちまいな。ウチなら安く買い取るぜ」

 「安くかよ、おっちゃん」

 「いや、その剣だと頑張っても10Gが関の山だ」


 説明でオモチャって書いてるしな。よくユウタくんはこんな物を買ったな。


 「それならいいや、適当に使っておくよ」

 「そうか、まぁそれが原因で喰われるなよ」

 「肝に銘じとくよ」


 武器店のおっちゃんは優しいな、やっぱりこの頃のAIは生きているといっても過言じゃない。


 「すいません、この辺りで黒猫見ませんでしたか?」


 おっと黒猫の捜索を忘れていた、名無しさんグッジョブ!


 「いやぁ、見てねぇな。黒猫というと首輪にクロって書いてる猫の事だろ?」

 「その猫です。……見てないですか、すいませんありがとうございます」

 「いや大した事はしてねぇさ、黒猫なら時計塔辺りにいそうなもんだがな」


 さり気なくヒントをくれるおっちゃん。時計塔が正解だったか、武器店の場所が分かっただけに満足だけど。


 「ありがとう、また来るよ。それじゃあ」

 「失礼します」

 「おう! 待ってるぜ!」


 名無しさんと店を出ると次は時計塔だ。時計塔は大きく、少し見上げればすぐに場所が分かる。


 「それにしても、ソウさんはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)にはタメ口なんだね」

 「あーなんでだろうな。……多分武器店のおっちゃんが親しみやすかったからだよ」

 「それは私が親しみやすくなかったということー?」

 「違うちがう! そういうのじゃなくてだな、えーと──」


 そんなこんな話をしながら時計塔へ歩いていく。

 途中でボロボロの服が気になってズタボロの鎧に変えた。意味はあまり無かった。


 「やっぱりこの時計塔は大きいな」

 「そうだねー、この街のシンボルになってるよね」


 時計塔の前にはプレイヤーでごった返していた。

 ここは目印にもなるから、待ち合わせ場所として使われていたりするのかもしれない。


 時計塔の中に入ると外よりは混雑していないようだ。ほかのプレイヤーはきっとクエストに出ているのだろう。


 「北のギルドから依頼で配達に来ました」

 「はい、お伺いしております」


 受付は空いていて、何事もなく中央時計塔への配達依頼は完了だ。

 あとは黒猫の捜索と、依頼完了の報告だ。


 「あとは黒猫だね」

 「だな、名無しさんは場所まで知ってる?」

 「うん、一応場所は把握しているよ」


 それなら安心だ。この時計塔が見かけよりずっと広くて、ここから黒猫を探すのは骨が折れるなと思ってたし。


 「まず始めにギルドの受付場所……は居なかったから、すぐ横の職業案内所かな」


 時計塔内部は丸い空間となっていて、今いるギルドの受付場所がそのド真ん中だ。すぐ近くには、上に続くやや小さめの螺旋階段がある。


 横をみると大きめの食堂があった。


 「あっ、いや逆です」

 「え? あっほんとだ」


 見ていた方向と逆だったようで、反対側をみると奥の方に職業案内所が見えた。

 初日に1度は行ってみた事はあったけど、分からないものだな。


 そして職業案内所。猫がいるという場所を探すが見当たらない。


 「黒猫はいないな」

 「だね。次は近くの樽の上に……いないなぁ」


 黒猫がいる場所は決まっているらしく、知っているであろう名無しさんが先導してくれている。ことごとくハズレているけど、運が悪いだけなのだろう。


 「道具店に──」

 「階段の裏側に──」

 「食堂のテーブルの上に──」

 「なら椅子の下に──」


 「……いないな」

 「ソソソ、ソウさん! 違うのっ、本当はいるはずで! 情報だとこれまでの所に黒猫が!! 情報だとね!」


 名無しさん、情報通りじゃないと焦るタイプなのかも知れない。


 こうなると黒猫は探すほかない、といっても情報以外の場所を探せばなんとかなるはずだ。

 1階はもうあらかた探したから2階にいるのかもしれない。


 「落ち着いて名無しさん。まだ3日目の情報だから」

 「そんな……私の情報が意味無いと、私がソウさんと釣り合いが」

 「いやいや、一緒に探そうよ。2人で探した方が早いから」


 それに街を案内してもらったり、名無しさんにはもう色々として貰っている。少しくらい情報が違っていてもお釣りがくるだろう。

 そうでなくても、名無しさんとは仲良くしたいと思っている。僕の方が釣り合いが合わないくらいだ。


 「でも私、ソウさんに迷惑まで掛けたし」

 「迷惑ってユウタくんのこと? あんなの迷惑のうちに入らないし、関係ないよ」


 名無しさん凄い気落ちしてる。あんまり気にすることないんだけどな。


 「釣り合いとか関係ないし、名無しさんと組みたいと思ったから一緒にクエストをやっているんだよ」

 「……ソウさん」


 たかが情報1つ違うだけで落ち込みすぎなんだって。気にしなくていいんだよ。


 「ほら、次は2階を探しに行こう」

 「うん……そうだね! ありがとうソウくん」


 螺旋階段を上がり2階へ行く。

 時計塔の2階は所々テーブルが配置され、NPCが談笑していた。他にも一つだけ窓口があるが、何も表示がされていなかった。


 「あそこはポイント交換場だね、冒険ポイントをアイテムと交換できるらしいよ。利用できるのはFランクからだけど」

 「それはちょっと見てみたいな。Fランクに上がったらまた見に行こうか」

 「うん!」


 まぁ今は黒猫だな。

 まずは近くのNPCに話を聞いてみよう。


 「すいません。黒猫を見ませんでしたか?」

 「あーいや、見てねぇがな」

 「そうですか、ありがとうございます」


 まだまだ次だ、名無しさんはテーブルの下などを見たりして探している。


 「すいません。黒猫を」

 「いや知らないな」


 「黒猫」

 「知らねー」


 「くろ」

 「見てないな」


 黒猫は見ていないみたいだ。2階にはいないのかな。


 「名無しさんは黒猫見つかった?」

 「ううん、探したけどいなかった」

 「そっか、2階にはいないのかも知れないな」


 ここのNPCも見ていないなら、1階のどこかにいるのだろうか。


 「兄ちゃん達、猫を探しているのかい?」


 ふと声をした方に振り向くとNPCの男がこっちに向かってきていた。


 「ええ、私たち黒猫のクロを探しているんですけど知りませんか?」

 「それなら上にあがっていくのが見えたぜ、まだ上にいるんじゃないか?」

 「本当ですか! ありがとうございます」


 1階に戻るか考えた所で黒猫の発見報告。これで黒猫は見つかったのも同然だ。あとは上に行って探すだけ、いるのが分かれば気持ちは楽だな。

 さっそく上へと続く螺旋階段へと足を運ぶ。


 「すいません。これより先は冒険者ランクE以上の方のみ行くことが出来ます」

 「……え?」


 いやいやいや、マジですか。

 この依頼はGランクだったはずだ。なのに探す為にはEランク以上じゃないと駄目っておかしいだろ。


 「……これは大人しく依頼を破棄するしかないな。上に黒猫がいるのに上に行けないんじゃ達成不可能だし」

 「……そうだね。ごめんなさいソウくん、私が依頼を誘ったばっかりに」

 「名無しさんのせいじゃないよ、依頼がおかしいんだって」


 そもそもGランクの依頼がEランク以上じゃないと達成出来ないとか有り得ない気がするんだけどな。


 「そもそもこれは朝9時の依頼だから、そこまで達成されていないんじゃないかな」

 「3時間おきに復活するから合計10回は達成されていると思うけど……」

 「全員が書き込みしている訳じゃないだろうし、こういう事もあるって」

 「……なら私はこの街の掲示板だけじゃなくて、他の街の掲示板も見て回ることにする」

 「それはやりすぎじゃないかな、攻略サイトでいいと思うんだけど」


 他のゲームと同様、このゲームにも攻略サイトがある。

 それを見てやった方が楽で確実じゃないかな。


 「攻略サイトは書き込みが遅いし、情報を出し渋る人もいるからそこまで期待は出来ないよ。人伝(ひとづて)だったり掲示板で確認した方が確実だったりするんだ」

 「そういうものなんだ」

 「うん。攻略サイトには載ってないけど、例えば種族で魔法が変わるように、種族で依頼の内容が変わったりするものも確認されているんだ」

 「種族によって?」


 それって同じ依頼でも受ける人によって達成までの道のりが変わったりするってことかな?


 「種族かどうかはまだ検証途中なんだけど、条件によって……依頼、が」


 どうやら名無しさんと同じ考えに行き着いたみたいだ。

 さっきのNPCは上で見かけたと言った、けれど上に続く階段は使えない。でも上に行くのならもう一つ手段があるのだ。


 「ソウくん、もしかして」

 「とりあえず行ってみる」


 時計塔を出て、小さくしていた翼を大きく広げる。


 「『天翔』」


 翼をはためかせ、空へと舞い上がる。目指すは時計塔の上層部、風を切るように空を駆け上がった。 


 「……見つけた」


 黒猫は時計塔の屋根の上でのんびり昼寝をしていた。

 黒猫には首輪が付いていて、クロと書かれていた。……当たりだな。


 黒猫に近寄るために屋根に降り、そっと近づく。すると猫は急に起き出して唸り声をあげた。

 猫は警戒するように距離をとったが、次第に近づいてきた。


 黒猫を腕に抱きかかえて一安心、これで依頼は達成だろう。

 もう一度空へと飛び、名無しさんのいる時計塔の前へと向かう。最後に見つかってよかった、これで名無しさんも肩の荷が下りるというものだ。


 ──に"ゃ!?


 突如大きな風が吹き付けて僕と黒猫を襲う。黒猫は驚いて腕から飛び降りてしまった。

 言ったそばからこれだよ!


 猫は宙に投げ出され地面に落ちて行く。急いで飛ぶ速度を上げて黒猫を追うが、突風が邪魔で追いつけない。

 まずいな……このままだと黒猫が地面に衝突してしまう。


 「『ヴィエトル』!」


 ふと聞こえたのは名無しさんの声。下から吹き付けた風により一瞬だけ黒猫が浮いた。……これならいける!


 上げた速度をそのままに、黒猫を両腕で抱きしめた。

 地面に足を付ける前に翼を大きく羽ばたかせ、速度を落とす。


 「ありがとう、名無しさん。危なかった」

 「当然だよ、黒猫も無事でよかった」


 黒猫は僕の腕から顔を出して名無しさんに触られている。黒猫も気持ちよさそうに喉を鳴らしていた。

 依頼達成だな、頑張った甲斐があったってものだ。

 

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