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23話


 「おう、ありがとよっ! お礼だ、持ってってくれ!」


 【リーフ草×5を獲得】


 リュス防具店へ材料配達の依頼が無事終わり、店主からアイテムを貰った。リーフ草ってリーフ茶やリーフ団子に使うのだろうか。


 「それじゃソウさん、次だよ」

 「あぁ、今行くよ」


 なんだか慣れないな。VR(バーチャル)だと敬語で話す癖があるから、言葉を崩すのは苦手だ。


 名無しさんは崩すなら僕もと言って、結局お互い敬語は無しになった。なんでもファン第1号だから釣り合いが取れないんだそうで。


 「次は時計塔でした……だよな」


 睨まれた。怖ぇー、ファン第1号とは一体!?


 「えーとね、依頼の黒猫がいる所はさっきのリュス防具店、テールム武器店、最後に中央時計塔の3つ。だから武器店を経由して時計塔になるね」


 テールム武器店、また場所の分からない所が出てきた。……さっきいた防具店と時計塔、北門辺りしか知らないんだけど。


 「私が案内するから安心して」

 「お世話なります」

 「いえいえ、これくらい大丈夫ですよ」

 「……」

 「……」


 いやほら、敬語の方が楽なんだって。なんでか知らないけど名無しさんには敬語が先に出てしまう。名無しさんも、しおりさんと話すようにタメ口で話せる人もいれば、何故か敬語になってしまう人だっているものなんだよ。


 「あの、名無しさん? 僕から言ってなんですけど、無理にタメ口しなくてもいいですよ?」

 「……いや大丈夫ですっ。わざわざソウさんが言ってくれたんですから、タメ口は仲良くなる為の1歩なんで!」


 いや、敬語でも仲良くなれるとおも……睨まれた。


 「ソウさんもタメ口じゃないとイヤだよ」

 「あっ、はい。いや、うん」


 なんで敬語かタメ口かでここまでなったんだろう。

 まぁいいや、それよりも次は武器店だ。終わってから防具店と武器店もゆっくり見に行きたいし、道は覚えておこう。


 「あれ? 名無しさん? 名無しさんじゃないですかー!」


 防具店へと歩いていた矢先、1人のプレイヤーが手を振ってこっちに向かってきた。プレイヤーはグループで行動していたらしく、残されたグループも後を追うように歩いてくる。


 「あぁ、えーと。すいません、どちら様でしょうか」


 プレイヤーは名無しさんを知っていたようだけど、名無しさんは知らないみたいだ。名前は頭の上にマーカーと一緒に表示されているんだけど、そういう意味じゃないよね。


 「やだなぁ、名無しさん。僕ですよ、この前に少しパーティを組んだユウタですよ。ユ・ウ・タ」


 うわ、リアルネーム付けてるスゲェ。いやリアルネームと決まったわけじゃないよな、うん。いや、しおりさんもいるし珍しくないのかな。


 「あー思い出しましたー。久しぶりですねー」


 やけに芝居くさいぞ。さっきはわざと知らないふりをしていたな。


 「思い出してくれましたか! いやぁ、ずっと会いたかったんですよー!! 『コール』しても繋がらないので何かあったか心配してました」


 コールはフレンド同士が通話できる機能だ。これはお互いがフレンド状態じゃないと使えない。つまり繋がらないのは片方がフレンドを消しているか、コールに出れなかっただけのどちらかだろう。


 「あっそうだ! また一緒にパーティを組みましょう! 良かったら今からにでも」


 あ、これ僕は無視されてるな。確かに名無しさんは美人さんだから誘いたい気持ちは分かるけど、マナー違反だぞ。


 「いえ、今はこのソウさんと依頼を受けているんで」


 ツンとした言い方。名無しさんはユウタくんがあまり好きじゃないみたいだ。誘いを断るだろうとは思っていたけど、まぁ良かった。


 2人で受けた依頼だから、途中抜けされると僕1人で続きをしないといけなくなる。普通はそれを知って誘うなんてありえないけど。


 「その男とですか?」

 「ども、ソウです」


 上に名前が出ているはずだけど、その男呼ばわりか。逆に清々しくなるな。


 「名無しさん。この男の装備、未だに初期装備じゃないですか。しかもボロボロだし、こんなヤツと一緒にいても何にもならないですよ」


 おっと、今度はディスってきたぞ。でも装備に関しては何も言えない、お金はあるんだけど後回しにしていたから。


 「見てくださいっ、この前Fランクに上がったとこなんです。僕のパーティなら装備も整えていますし、どんな所でも行けますよ!」


 Fランクに上がったってGランクのお使いクエストを終わらしただけのような。自信ありそうだし、討伐クエストとかもあったのかな?


 「もうFランクにですかー、ユウタさんはお暇なんですね。でも私はまだGランクですから、ユウタさん達のお邪魔になる訳には行きませんのでお断りさせていただきますね」


 名無しさん、言葉に少しトゲがありますよ。でも確かにもうFランクって結構やっているよな、ランクアップまでアワークエストだけだと50時間くらいはいるはずだったっけ。見たところ同い年くらいだと思うけど。いや、年齢は変えれたんだっけ。


 「あっいや……僕ならランク上げ手伝えますよ! パパッとランク上げましょう!」


 今の所、そのランク上げを邪魔してるんだけどな。でもなんか一周回って好感が持ててきたぞ、これだけ求められるなら少しは名無しさんも嬉しいかも……あぁ無いわ。


 「ランク上げならソウさんとしている最中なので結構です」

 「じ、じゃあ終ってからでも一緒に……」

 「すいません。無理です」


 ぶっちゃけたー!

 笑顔で言う名無しさんに、空いた口が塞がらないユウタくん。


 「ソウさん、お待たせ。行こっかー」

 「だね」


 ユウタくんが僕を親のかたきのように睨んでくるが、知らないな。早く依頼をこなそう。


 「待てそこの男!」


 さて、そこの男とは誰のことだろう。近くで歩いている男は結構いるんだけど。僕はソウというキャラネームだしなー。

 ……僕達は絶賛ランク上げの最中なのだ、関わると面倒くさそうだし早く行こう。


 「そういやランク上げると何かあるのかな」

 「あーそれはね、ランク分けで入場制限が──」


 「待てと言っているだろ!!」


 どうやら僕の事だったみたい。ユウタくんが前に立って指をさしてきた。全く人に向かって指をさすとは親の顔が見てみたいね。

 とりあえず後ろをみて誰もいないことを分かりきっていながらも確認。そしてユウタくんを見てため息を一つ。


 「……ユウタくんでしたっけ、何か用ですか? これ以上呼び止められても迷惑なんですけど」

 「う、うるさいっ! 僕が待てと言ったら待てばいいんだ!」


 うわぁ。まるで子供じゃないか。


 「ソウさん、行こう。構わなくてもいいよ」

 「そうみたいだな」


 名無しさんはもうユウタくんを見限ったようだ。

 自業自得だよな。周りを見てみなよ、完全にアウェーだぞ。

 あれ? 彼のパーティはどこにいったんだろう。


 「名無しさん! こんな男に名無しさんの隣にいる資格なんてありませんよ! 名無しさんに相応しくないっ」


 ん? 何か勘違いをしていないか?

 というよりも少しパーティを組んだ程度の時間でよくここまでなるなぁ。流石名無しさんといった所なのだろうか、深く突っ込むといけない気もするぞ。


 「ユウタさん。私の隣に立つ人は、私が決めます。そして少なくともそれは……貴方じゃないわ」


 絶句するユウタくん。そしてなんだか素っぽいのが出てる名無しさん……気にしたら負けだ。

 多分名無しさんからこんな風に拒絶されるとは思っていなかったのだろう。そして現実を直視出来ないユウタくんは、僕を見て何かを悟ったように目を見開いた。


 「そこの男……僕と決闘しろ! 見てて下さい、名無しさん! 僕が貴女をこの男の呪縛から開放してあげます!」


 この子は何を言っているんだ? というか名無しさん、ユウタくんに何をしたらこうなるんだろうか。


 「お断りします。さっ名無しさん、早く行こうか」

 「だね、関わるだけ時間の無駄だし」


 またもや絶句するユウタくんを横切り、僕達は次の目的地に足を向ける。

 がしかし、なにやら通してくれない様子。見限ったと思っていた彼のパーティが武器を抜いて行く手を阻んでいた。


 「すまないな。こういう契約なんだ」

 「好きでやっているわけではないの」


 契約? どういうことだろうか。


 「……契約書スキルですか?」


 名無しさんが何かに気付いたように言った。

 契約書スキルというと、別ソフトWORLD(わーるど) SIM(しむ)の初期スキルだったはずだ。

 効果は行動の強制。契約書を使い契約を交わすと、その内容は絶対循守されるチートスキル。


 つまり僕達を囲んでいる4人は契約書に縛られて武器を向けてるわけだな。まあ、それを知った所でどうしょうもないんだけど。


 「お前が悪いんだっ!! お前が名無しさんを誑かすから!」


 ユウタくんも腰にある剣を抜いて僕に向けた。誑かしてないぞ。

 このゲームでは街中のPK(プレイヤーキル)が認められている。一般的には決闘という方法でHPが全損しないようにするのだが、僕が断ったから強引に戦うつもりなんだろう。


 「ソウさん」

 「こうなったら仕方ないよ、名無しさんは少し離れていて」


 狙いは僕だけだろうし、名無しさんは離れてもらったほうがいい。せめてPKしたときに貰えるG(ゴールド)やアイテムに期待しておこう。


 剣を持った男がユウタくんを入れて2人。斧を持った男が1人。短剣を持った女が1人。杖を持った女が1人。

 そして、何も装備していない人が僕だ。いや剣はあるんだけど、装飾がゴツいというか。


 「僕の言うことに逆らわなければ良かったんだ! お前らっ、この男をズタボロにしろ!」


 ユウタくんが言うと、すぐにパーティは僕を目掛けて走り出した。ユウタくんは小学生だろうか。


 「魔力玉」


 ため息を一つ零して、魔力玉を剣持ちの男へ飛ばし体勢を崩す。

 後ろからくる短剣女の突進を避け、同時に手の甲を叩く。短剣女の手が緩んだ所で短剣を奪い一閃。そのまま短剣を斧男の足へ目掛けて投げつけた。


 足と地面が縫い付けられ、派手に転ぶ斧男。手から離れた斧を拾い、振り向きざまに斧を振るう。

 体勢を崩されて少し遅れた男の剣と一瞬交差したが、剣を大きく上に吹き飛ばした。

 勢いを殺さずに一回転して、男を斧で叩き切る。もう一回転し、男に止めをさす。

 上から落ちてきた剣が斧を持っていた男の首筋に刺さり、次第に男と共に光に変わった。


 杖を持った女はヒーラーみたいで、短剣持ちだった子を回復していた。


 「あと3人ですね」

 「ちぃっ!! 役立たずめ!」


 化けの皮が剥がれきってるよ。元々かもしれないけど。


 「もういい! 僕がやるっ!」


 やっと登場のユウタくん。

 プレイヤーから盗らなかった武器はプレイヤーがいなくなると消えるみたいだけど、プレイヤーから盗ったままの武器は消えないみたいだ。

 男達をPKした後も、斧だけは僕の手元に残っていた。


 とりあえず剣を片手に切りかかってくるユウタくん目掛けて、斧を投げてみた。


 「……あっ」


 スパッと音が聞こえてユウタくんの首を斧が通った。

 瞬間光に変わるユウタくんを呆気に取られながら見る。……案外あっさりと終わってしまったものだ。

 え? ていうか一撃? 剣が首に刺さってやられた斧男でさえも、首に刺さった後の持続ダメージだったろうに。

 ユウタくんが1番ステータス低いんじゃないかな。


 「じゃあごめんね。私たちはこれで」


 残った2人はそそくさと逃げていった。ユウタくんがやられた事で何かが変わったんだろう、逃げるなら好きにしたらいい。


 「お待たせ、名無しさん」

 「そんなことないよっ! 凄かった! 私、ファン第1号でよかった」


 おぉう、テンションが上がってる。


 「ごめんね、私のせいでこんな風になっちゃって……でも凄かったよ! カッコよかった!」


 ここまで言われると照れくさいな。そんな大層な事はしていないつもりだけど。長年VRで遊んでいたから慣れてるだけだし。


 「ありがとう、でもとりあえずここから離れよう。次はテールム武器店だったよね」

 「あ、うんっ。そうだね。早く行こう」


 周りを見ると人だかりが出来ていた。多少騒ぎになっていたようだ。

 それに気付いた名無しさんが僕の手を引っ張って道を抜けていく。これは僕が道を分からないから仕方ない……仕方ないよね。

 

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