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10話



 目が覚めて謎カプセルを開けると、部屋に幼馴染みと知らない銀髪の美人さんがいた。


 とりあえず謎カプセルから出て翼を伸ばす。

 現実世界でも翼が生えて、感覚まであるんだなー。


 「かなと、げんじつ、逃避」


 猫耳と猫尻尾を生やしたみぃはそのまま美人さんを前に出す。


 「紹介、トリア、しんゆー」

 「しんっ、……こほんっ。親友のトリアよ、よろしくお願いするわ」


 みぃの言葉で少し赤くなりながら挨拶してくる美人さん。


 「僕は相馬(そうま) (かなと)です。こちらこそよろしくお願いします、トリアさんでいいですかね?」

 「トリアでいいわよ、敬語もいらないわ」


 美人さん──トリアは、僕が差し出した右手を握り返して目で語るように視線を合わせてくる。

 え? いや、分かんないんだけど。


 「チョップ!!」


 みぃが握手していた手を叩いて離すと、僕の方に行きそうになりながらトリアの方に抱きつきにいった。

 トリアもきっちり抱き返しているあたり仲は本当にいいみたいだ。みぃを取られたとか思ってない。ないったらない。


 「ふじゅん、いせ、い……こーゆー。ダメ」


 握手は不順異性交遊に入るのだろうか。


 「かなと、は。わたし以外、だめ」


 それはつまり……。


 「ミーナは男だったということね」


 そういうことかー。


 「バレたか」

 「え? ミーナ男だったの!?」

 「それはないだろ」


 つい突っ込んでしまった。

 いやだって有り得ない……よな。


 「かなとの……エッチ」

 「そうよ、ミーナをジロジロと舐めまわすように見るなんて」

 「え? いやそういう訳じゃ」

 「それは、むしろ……だいかんげー」


 っておい!

 それはダメだろう、ちゃんと拒否をだな。


 「つまり、わたしなら、触って……も、いいということ」


 バッチコイ! とでも言いそうに手を広げるミーナ。

 ……そんなに触って欲しいなら。


 「頑張ったな」

 「……うん」


 できる限りみぃを優しく撫でて、そのまま抱きしめた。

 みぃが何をしたのかは分からないけれど、想像は出来た。

 すすり泣きは見えないし聞こえない。ただ優しく背中に手を添えた。


 「かなわないわね。少し(ねた)ましいわ」

 「トリアもみぃ……美唯菜と仲良くしてくれてありがとう。これからも仲良くしてほしい」

 「言われるまでもないわね、当然よ」


 みぃは疲れたのか、それとも安心したのか、寝息をたてて寝てしまった。

 寄りかかって来ているみぃの頭を膝の位置に移動させ、トリアと目を合わせた。


 「ミーナの事だけど」

 「美唯菜とはWORLD(ワールド) CREATURE(クリーチャー)で知り合ったんだよね? 驚いて無理はないと思う。だけど変に思わないで欲しいんだ」

 「みくびらないで欲しいわね、そんなものでは何も変わらないわ」


 ……いい人で良かった。

 VRと現実では"違い"すぎるから。だからこそみぃが人を連れてくるのには驚いた。


 「でミーナの事だけど聞いてもいいかしら、といっても予想はつくけどね」

 「VR依存性吃音症(ヴァーチャルいぞんせいきつおんしょう)、これだけ言ったら分かるかな?」

 「……やっぱりそうなのね。あまりに変わりすぎて驚いたもの。こっちのミーナも可愛いけどね」

 「そう言ってくれると助かる、美唯菜の友達にトリアがなってくれて良かったよ」


 経緯は知らないが、みぃの事を思ってくれているのが伝わってくる。

 それが今凄く嬉しい。


 「友達じゃないわ、親友よ」

 「そっか、親友か」


 自然と笑みがこぼれる、最初は少し警戒していたけどそんな必要は無かったようだ。


 「貴方になら言っても大丈夫かしらね、今日起きたこと」

 「あぁ、それは聞けたら聞こうと思っていたんだ」

 「ずいぶん過保護なのね、女の子のこと根掘り葉掘り聞くのはマナー違反よ」

 「茶化さないでくれ、分かってるつもりだから」


 それから聞いたのは同じ学年であろう人と出会ったこと。

 みぃを悪く言ってきたこと、みぃがその人達と会うのを分かっていただろうこと。

 正面から向かっていったこと。


 「本当にあいつらのアカウントを消してやろうかしら」

 「それはいい気味だろうけど、それは出来ないだろ」

 「私にかかれば簡単よ」

 「出来るのかよ」

 「ミーナが止めたけどね」


 本気で言ってるのか分からないんだけど。

 トリアは結構謎だな。


 それから暫く談笑していると、みぃが起きて抱きついてくる。

 寝ぼけ眼を擦りながらピコピコと猫耳が動いていた。


 「……かなとにゃ」


 猫耳はピクピクして尻尾を揺らしながら気持ちよさそうに胸へ飛び込んできた。


 「かなとの、匂い、する……にゃ」


 訂正、まだ起きてないみたいだ。


 「にゃー、かなと。こーゆーの好きだひ」

 「こらこら勝手に人の趣味を言ってはいけません」

 「え? 貴方、そんな趣味があるの?」

 「いやトリア、そんなに引かれたら流石に傷つく!!」


 うわぁ、みたいな視線はちょっと痛いぞ。

 そっち系の人じゃないから!


 「にゃん。かなとー」

 「いや、ちょっと待って」

 「かなと、いや?」

 「そういう訳じゃなくてだな」

 「うわぁ」

 「そんなに引かないで! ってちょっとみぃストップー!」


 それは親が家に帰ってくるまで続いたのだった。


トリア「うふふ、1章はこれで終わりよ。次章は現実世界が舞台だわ。…………ちょっと私の出番はあるんでしょうね!!」

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