9話 ミーナの冒険その3
「いやぁー! 青ねこー!」
青スライムの攻撃によって青ねこがカードに戻る。
二匹のスライムはバトルフィールドを縦横無尽に駆け巡り、私のねこちゃんを攻撃する。
どうやら奥までねこ達を行かすのではなくて、スライム達を倒さないと行けないみたい。
だけど、スライムが思ったより強くて青ねこがやられてしまった。ごめんよー。
ちなみにこねこは私の頭の上で観戦してる。
今フィールドにいるのは赤ねこ、レインボーねこの2匹だにゃ、可愛いからってほんわかしてはいられないにゃ。
すでに『☆猫が小判』 の効果が切れて、2匹とも私の近くまで撤退している。
「三毛猫。お願い!」
--ふにゃー!
三毛猫のSPは40だけど気にしてられない。猫パンチは威力が弱いみたいだから数で対抗するしかないよね。
「猫の好奇心」
これは味方の猫すべてが敵クリーチャー1体に突撃し続ける変わりに、攻撃力が倍になるカード。
効果時間は5分だにゃ。
--にゃー!
--にゃんにゃー!
--にゃ
ねこ達が赤色のスライムに突撃していく。
どんどん赤スライムがHPを減らしていく中で、ねこ達もスライムの攻撃でHPを減らしていく。
「どうしょう、このままじゃ……ねこ達が」
「ミーナ、ねこ達を強化するのよ!」
強化? あっそうか!
でもどうやって?
とりあえず強化ー! って念じてみる。
--にゃにゃにゃ!
赤ねこの目が光ってHPが少し回復した。
あれ? なんか強くなってる。
これで良かったみたい。
よし、これでレインボーねこと三毛猫も強化しちゃおう。
【SPが足りませ…ガッ……足りないわよ】
……レインボーねこは無事強化したけど三毛猫は強化出来なかった。
そういえば強化にはSPが必要だったんだ。
なんか細工していたらしいトリアには突っ込まないよ。
それでも強化したレインボーねこは強く、赤スライムをやっつけた!
そして青スライムの攻撃から守りながら戦ってくれた三毛猫たんは一旦退却だ。ありがとよー。
「ねこ」
ここでねこを召喚し、すぐに強化する。
HPが半分を切った赤ねこも強化してSPが無くなる。
アクティブカードの効果は切れたけど3対1だ、よしいくぞー!
--にゃー
--にゃーー!
--にゃ
「ファイトよ! ねこちゃん達」
ポンポンを胸に寄せて応援しているトリアも可愛い、こんな時だけどスクショしておかないと。
ぷるるんっと震える青スライムにねこ達が攻撃していく、まるでじゃれあっているようだ。
スクショしとかないと。あー可愛い。
You winの文字と共にスライムが消えていく。
「お疲れさまね、頑張った方だと思うわよ」
「ありがと、青ねこには後で謝らないとだね」
「青ねこも頑張っていたから思いっきり構ってあげなさい」
「そうする」
消えたスライムの所を見ると2枚の紙が落ちていた。
「スライムチケット……バージョン赤?」
「それはさっきの赤スライムが出てくる……かも知れないガチャ券よ」
かも知れないガチャ券。
「それは10%で赤スライムが出てくるわ、それ以外は全てはずれ棒が出てくるけれど」
「そのはずれ棒で運があがったり?」
「しないわね」
たくさん倒してたくさん引いたらいいと思うんだけど、あまりねこちゃんを危険に晒せたくないなぁ。
「とりあえず最後の『コミュニティ』の説明をするわ、その後にガチャでも回してクリーチャーを増やしていきなさいな」
そうだね、とりあえずメニューのコミュニティを開く。
「一番上の『プロフィール』は自分の紹介ね、ほかのプレイヤーから見たミーナの情報が載っているわ」
おっけー、あまり私に関係ないやつね。
「次に『フレンド』ね。プレイヤー同士で登録した人と連絡を取れるわ」
フレンドかぁ、作れるかな? 正直トリアだけでいいんだけど。
「『掲示板』はプレイヤー同士で情報交換する場所ね、まぁ欲しい情報は私に聞けば解決だから意味は薄いと思うけど」
それもそうだね。トリアに頼ってばかりだとダメだとは思うんだけどねー。
「次の『対戦』はカードバトルの申し込みが出来るわ。これはプレイヤーだけじゃなくてNPCとの対戦も出来るから覚えておくのよ。ちなみに私への対戦も申し込めるわ」
ってトリアと対戦とかしたくないよ。
絶対強いだろうし、何よりトリアに剣を向けれないと思うし。
「そう? 私はしてもいいと思うけど。最後の『クエスト』の説明ね」
トランプとかのカードゲームならいいよ!
それなら大歓迎!
「クエストはこの世界のNPCから依頼を受けたり、条件を満たすとクエストの一覧に載るわ。その内容を達成すると報酬を貰えるのよ」
そう聞きながらクエスト画面を開くと【クエストを達成しました】と表示された。
「え?」
「ふふっ、サプライズよ。成功したかしら」
見てみるとトリアの説明を聞くというクエストが受注されていて、さっき達成したみたい。
「私、貰いすぎな気がする」
「気にしないの! 私が楽しんでいるだけだから」
いやいや、気にしますよ! ちょー気にしちゃいますよ!
「もー! トリアありがとー! でもこのお返しは絶対するからね! 貰いっぱなしは嫌だからね!」
「はいはい、なら私はそのお返しを考えておくわ」
「終わらないじゃん!」
「終わりたくないもの、私が生まれて初めての友達よ? ……舞い上がっているの」
……それは嬉しい。
赤面しながら言うトリアが無性に愛おしく感じて、私も少し赤くなっているのが分かって、隠すようにトリアの胸に顔を埋める。
「バーカ、あげたり貰ったりするだけが友達じゃないんだよ。私もよく知らないけど」
「知っているわよ、それくらい。データ上だけど」
「それ知ってるうちに入らないと思う」
「ミーナこそよく知らないんじゃない」
クスクスっと笑い合う私達。
トリアともっと話したい、今よりもっと仲良くなりたい。……幸せだなぁ。
頭の上のこねこが動いてトリアに移る。
私は少し背伸びしてこねこを撫でるとトリアが私を撫でてくる。
「いや、ついね」
「まぁ……いいけど」
ちょっと恥ずかしいではないか。
私がこねこから手を離すとトリアも手を離す。
「行こっか」
「そうね、あっミーナそっちじゃないわよ」
あれ? そうだったっけ。
「そっちはドラゴンがいるから遠回りするのよ、見つかるとやっかいだわ」
「それは駄目だね、早く行こう」
という事で遠回りすること1時間。
トリアが周りの敵から避けるように案内してくれたから出会ったのはスライム達だけだった。
トリア曰く私はまだ危険なんだって、ほんと助かります。
その間に青ねこを召喚して、ごめんねをしてから頭の上に乗せた。サラサラのお肌は綺麗で幸せな気持ちになりました。青ねこも「にゃあ」と許してくれました。
こねこを頭に乗せているトリアとお揃いで思わずインカメラでスクショを取ってしまったよ。楽しすぎて泣きそうだ。
ガチャ券を使ってガチャも引いた……んだけど、ねこちゃんが増えました。いや嬉しいけどねこちゃんをバトルに出したくないんだって!
一応それ以外も当たってはいるけど、2回だけ。
そしてガチャの演出にトリアが登場、今回は突っ込ませてもらったよ。
そして無事に森を抜けましたー。パチパチッ。
思わずトリアに抱きついたよ、ちょっと慌て気味のトリアはいつも通り可愛いかったです。はい。
森から出ると平原があって、その先に大きな門が見える。
そしてそれは門までたどり着いて、安堵して一息付いた時だった。
「あれー? 高江じゃん! やっぱり高江だよね!」
その子は私を見てそういった。
「へー、ちゃんと来たんだ。……ほんとにムカつく」
そう、私はこの為に"わざと"このゲームを買ったんだ。奏が買うだろうWORLD FANTASYを買わずに。
ちゃんと私がケジメを付けるために。奏に頼りっぱなしはダメだから……。
★青ねこ
青い猫。可愛い。すべすべ