8
前話との字数の差が激しい…
「あ~あ。こんな腐れビッチいらねぇっての」
「誰がビッチよ!」
「いちいち反応してたら身が持たんぞ」
イクサ、リュウ、アイリスの三人は街なかを歩いていた。
なんでこうなったのか――――
◇
「この子をよろしくね?」
シャルアニールは、後ろに隠れていたアイリスを前に出す。
「あ?」
「は…え…うぇ!?」
突然前に出されたアイリスは、最初きょとんとしていたが、状況を理解したのかかなり慌てている。
「こんなもんいらねぇ」
「確かに。使えそうになさそうなもの貰ってもなぁ」
「ちょっと!なんで私を物扱いにすんの!第一使えないってなによ!?」
イクサの言葉にリュウは同意し、アイリスは、うがー!と手を上げて憤慨する。そんな様子をニコニコしながら見ていたシャルアニールは、
「そうですね。この子はどこか抜けた所がありますが、基本的に良い子ですし、同期の中では一番優秀だったのですよ?」
「あぁ…。一番馬鹿やることが優秀だったって事ね」
「女王様!なんであいつの言葉に同意してるのですか!?しかも『基本的に』ってなんですか!というかアンタはどこまで馬鹿にするの!?」
あ、若干涙目になってきた。
「だってよ。どする?」
「…。俺としては別に構わない。正直馬鹿が一人増えようが大して変わらんからな」
「うぅ、グスン…」
人を泣かせるのって楽しいよな。
「それは良かった!実はこの子、ちょっと世間知らずな所がありましてね。外の世界でそういった事を学んでもらいたかったのよね。ほんと。なんか分からない文字とかあったらこの辞書を使うといいわ」
「そりゃいいな。謎解きとか論外だし。困った時の武器になる」
「あー、そういった分野担当の奴居るから出番無いかもしれん」
「もういやぁ!」
◇
「んで?こっからどっか寄ったりすんの?」
「大丈夫だ。あとはギルドに行くだけだ」
「私は…、私なんて…」
現在、さっきまでいた店を出て歩いている。
余計な荷物がついているがしょうかない。
「そういやギルドはどこにあるんだ?」
「そうだな、ここからは距離が離れているからな。ゲートで向かう」
との事で、ゲートを目指している。
さっきから後ろがうるさい。
「どうした~?不幸な顔してると、不幸が訪れるぞ~?」
「誰のせいよ…誰の…!」
恨むような視線でこちらをみる。
「ごめんなぁ?俺、人を怒らせるのが好きでさぁ」
「屑だ!クズがいる!」
「更に言うと、キレて殴りかかる奴を返り討ちにするのがもっと好き」
「なおのこと酷いわ!」
アイリスをからかって遊ぶイクサ。
「ほら、ゲートについたぞ」
「おうよ」
「む~」
ここにいると兵士どもとケンカしたのを思い出す。
もっと大人数とやりたかった。
ゲート前は色んな人間に溢れていて、とても賑わっている。
そんななかから、イクサにとっては好意的な視線がビンビン飛んでくる。
「良い殺気出しちゃってまぁ。ちょっと遊んで―」
「やめてくれ…。今日中に着かなくなる」
「あ~…」
リュウの圧倒的なパワーで、襟部分を捕まれ引きずられていくイクサ。
その横で、アイリスが笑みをこらえている。
「…ぷっ」
「よーし!アイリス後で野球しようぜ!お前ボールな!」
「まって!謝るからまって!」
「漫才は着いてからにしろ」
「「あ~」」
イクサに続いてアイリスも掴まれ引きずられていく。
どこか気の抜けた光景が、そこにはあった。
◇
「何気、ここまで来るのに時間かかった…」
「なんでだろうな?」
「「お前のせいだ」」
「ハハッ」
三人はゲート前に到着。
今は順番待ちをしている。
「しっかし、大きいなぁ、これ」
「詳しくは公式や掲示板の方に載ってるぞ」
「ほうほう…。掲示板?」
ゲートを見上げていたイクサがリュウに振り向く。
「あぁ。ゲーム内部にいても掲示板が開けるし、外の人間とも掲示板を通して話すことが出来る」
「へぇ~」
少し列が進む。
「それ、誰が作ったんだか」
「それはさすがに分からん」
肩をすくめるリュウ。と、アイリスが、
「あんた達知らないの?その掲示板作ったの、女王様よ?」
上から目線で、馬鹿にしたように言うアイリス。
そんな様子にイクサは苛立って、アイリスの頬をつまみ、
「うっせぇチビ!偉ぶるのは百光年早いわ!」
「いひゃい!いひゃい、はにゃして!(痛い!痛い、離して!)」
「イクサくーん。光年は距離だから関係ないぞー」
イクサのボケに、リュウが突っ込む。そしてそれにアイリスが笑い、更にいじられる。
しかし―――
(女王が作った?AIである彼女が?どうやって?)
リュウは、アイリスが言った言葉について考える。
それにAIについても謎か浮かんでいる。
現在の科学力では、人間に近いAIは、未だに作れはしないのだ。
更に言うと、運営である会社そのものから変なのだ。
内部の情報が一切流れない。普通ならば何らかは流れて来るのだが、何人働いているのかすら分からない。
(まぁ、今は関係ないか)
目の前で起こっている光景を見て、そこまで深く考えるのをやめた。
だが、後々彼は後悔する。自分の直感を信じればあんなことにはならなかったはずだ、と。
この時は、イクサが起こす事件事故ハプニングをどうやって楽しみつつ、フォローするか考える。