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そのまま兵士Bの後をついて行くと、一つの木の扉の前にたどり着く。
兵士Bはそのままノックして「失礼します!」と言って中に入る。俺と兵士Aも後に続く。
中に入ると、来客用の部屋なのか、三人は座れるソファーが二つ、テーブルを挟んで対面して設置してある。壁の方には本棚があり、所々隙間が目立つ。窓は二つ、スライドとかではなく、下の部分を押して開くタイプのようだ。
そして、中には一人の男がいた。
金色の髪に優しい風な感じのイケメンが、ソファーに座っていた。
その身に纏う鎧は、ここの兵士が着る鎧と天と地ほど違うのが、素人目でも分かる。その鎧の色は青がベースで、白や黒の色が使われていた。
だが、何よりも特徴的なのは、その身から溢れる気配。
本来ならそこまで威圧的ではないのだろうが、その気配からは怒りのオーラが感じられる。横の二人の兵士は顔面を蒼白にして汗をかいているのが見なくても分かる。
その男は、俺たちが中に入っても目をつぶり、腕組みを解かなかった。
少し経って、目を開けてこちらを見た。
その視線からは、この男の意思の力を感じた。何か一本芯が通った人間だと思った。が、どこかで感じた事のある視線だ。
俺に視線を移し、嬉しそうな表情をしたが、手足を繋がれている事に気づくと、さっきまでの威圧が些細に感じる程の、濃密な威圧が噴火の如く溢れ出す。
「おい」
この時点で二人の兵士は気絶寸前までおいやられていた。足は震え、今にも倒れそうだ。
「は、はいっ!なっ、何でしょう!?」
良く返事できたなぁ。リアルで色々なやって来た俺でも冷や汗かいてるのに、良い根性してる。
「なんで、俺の親友が、拘束されているんだ?」
「いえっ、あの、その…」
「いいから、言え」
「はいっ!この者が、我々に対し攻撃をしかけてきまして…。更にはガーディアン相手にかなり善戦していたので、帝国の者かと思いまして…」
男は少し考える素振りを見せ、その後には、さっきまでの威圧感は消えていた。
兵士はプレッシャーから解放され、思わず崩れ落ちる。
「いや、すまなかったな。実を言うとこうなるとは思ってはいたが、ここまでとは思わなくてな。つい怒ってしまった」
男は立ち上がり、崩れ落ちた兵士に手を貸す。
「悪かった。後こいつの手錠、解放してくれないか」
「りょ、了解しました」
兵士Aは鍵を持って手足の錠を解除する。
「んで?お前だれよ?」
手足の具合を確かめながら問いかける。
「おいおい、俺たちゃ親友だろ?忘れたのか?」
親友?そういやさっきの視線…あ。
「竜也か!?いや全然違うからさぁ!」
「バッカお前それで呼ぶな!」
おっと。つい忘れてしまった。
「すまんリュウ、忘れてた」
「ったく、ほんと昔から忘れがちなんだから…」
そのまま話していく二人。その姿は誰が見ても友人以上の関係であるのがわかる。
「んで、このあとどうするんだ?」
「ああ。まず俺のギルドに来てもらうぞ」
兵士二人を放置して、この場を立ち去る。
◇
どうもさっきまでいた場所は、街の中にある兵士の詰所の一つだったみたいだ。
建物から出ると、こちらに敬礼したり、尊敬の眼差しで見る兵士の姿が殆どだった。リュウはいったい何をやったんだ。
「ギルドに向かうと言ったな。あれは嘘だ」
「…あ?」
「ま、まてまて。半分冗談だって。その前に寄るところがあるんだよ」
人の気持ちを弄びやがって。
まぁ、用があるのは仕方がないから渋々といった体で後についていく。
途中、というか、詰所から出てきてから色んな人からの視線が感じる。
好意的なのからそうじゃないのまで。後ろのは俺だな。
特に気にせず後に続くと、高級そうな店にたどり着く。
「いらっしゃいませ!お二人ですか?」
「そうだ。奥は相手いるか?」
「はい!個室は開いております」
先導のウェイターの後をついていって中に入っていく。
中はイタリアンな感じの内装で、それなりに客が入っていた。
こちらに視線をやった人間は、驚いた後、好意的な表情か、イヤなものを見たという表情に別れた。
これらも無視して後に続くとついて行くと、一つのドアの前にたどり着く。
「何か用が御座いましたら、テーブルの上の魔道具をお使い下さい」
「分かった。後紅茶二つ頼む」
「かしこまりました」
ウェイターが開けたドアを潜る。
部屋の中は、絵画や時計。彫刻等の調度品が食事の邪魔にならない程度に配置されて、テーブルが一つと、4つの面に一人が腰掛けられる上等そうな椅子が一つずつ置かれていた。
窓は無く、日の光が入らないが、小さなシャンデリアが天井からぶら下がっている。
「なぁ、部屋に入ったら外の音が聞こえなくなったんだが?」
部屋に入るまで聞こえていた雑音が、部屋に入ったら聞こえなくなっていた事が気になって、つい聞いてしまった。
「あぁ、この部屋はな、防音、対透視用の結界が張られているんだ。内緒話にはもってこいだ」
リュウは椅子に腰下ろしながら言った。
内緒話ねぇ。何かそんなことあったか?
「別にこんなところ来なくても良いだろうに。用ってこれの事か?」
「ああそうだよ…」
リュウはどこか苦々しい表情で、和也を見る。
――そう、和也が使用しているアバターは、まんま和也に近い姿をしているのだ。
かなり強引にチュートリアルを終わらせてしまった為に、設定がかなり曖昧になってしまっていた。
「イクサ君よ…、自分の姿みてみ?」
部屋の中にあった身だしなみを整える用の、大きな鏡の前に立つ。
「おおぅ…。俺がいる」
これは紛れもなく俺だ。服の下の古傷めそのまま残っている。
「なあメニュー画面開けるか?」
メニュー?設定画面何かどうやって出すんだ?
メニューとか設定とか言葉に出してもそんなものは現れない。
リュウを見ると、人差し指と中指を合わせ、四角に動かすと、指の軌跡に会わせて光る線が出る。そのなかで合わせた指を開くと、画面のようなものが出てきた。
俺も同じくやってみたが、出てこない。
…ヤバい、もしかしてログアウト出来ない?
愛しの妹に会えずに死ねと!?しかもバイトに行けなかったらどうすんだよ!店長に社会的に殺される!
どうすんだ~!とばかりに頭を抱えるイクサ。
「ま、多分大丈夫だろ。今からGMに聞いてみるから、な?」
イクサの肩を叩きながら、片手でメニューを操作するリュウ。
「GM。コール」
死にたくない死にたくないシニタクナイ…
横でリュウが誰かと話しているがどうだって良い。
亜空○断とかで空間をわる?出来るわけないだろが!チクショウ…。
「落ち込むなって。もうすぐ助けが来るから」
「本当か!?俺は帰れるんだろうな!?絶対か!」
ガクガク
「大丈夫だから、手放してくれな
「嘘なら一緒に地獄に連れてってやる!!」
カオスな現場になる一室。
そんな部屋の中に一つのドアが現れる。
それはイクサがチュートリアルの時に見たドアとそっくりだった。
ドアがゆっくり開いて――――
中から馬鹿を連れた美しい女性が現れた。
かなり進行が遅くてすみませんm(__)m
これは、イクサのキチガイを出したい作者のわがままでこうなってます。
後、区切りが良いところで書き直すので、気長で待っていただけると幸いです。