4
ヘッドギアを起動。すると、暗い空間に自分が居ることに気がついた。足元は六角形のパネルがところ狭しと敷き詰められている。
「これがVR空間…なのか?」
軽く周りを見回すと、目の前の空間に二行ある文が現れた。
《新規プレイヤーの登録を開始します。》
《アップデートを開始します。》
すると、目の前に扉が現れ、そこには扉に触れるよう立て札があったので、なぜ、わざわざこんなことをさせるのかと思いながら扉に触れる。その瞬間、和也は光に包まれた。
「目が、目がぁ…!」
くそぅ、どこの大佐様だよ。魔法の言葉でこの空間滅ぼしてやろうか…。
VR空間にそんな機能は付いてはいないが、突然の光に困惑して大変な事を考える和也。
「初めまして、プレイヤーさん」
「誰だ?」
誰の声だ?もう始めの町に着いたのか?でも、設定をしなければならないからそれは違うか。ならば、視力を奪った犯人か!
即座に身構え、声が聞こえた方に向かって和也は掴みかかった!
「ちょ、何して…って、どこ触ってるんですか!」
「?何だこばぁらぁ!?」
NANDA!?何が起こった!?柔らかいものをこう、掴もうとしたら頬に思いっきり殴られた痛みがしたんだけど?
目が慣れてきて、声のする方を見た。
「…oh…」
「いったい何処をみてそんな反応をしているのか、じっくり話し合う必要があるみたいですね…。」
見事な、壁があった。かろうじてロッククライミングは出来る位の出っ張りがある少女がそこにいた。
「この非常識な人には最大まで加速してでもOHANASIしないとですね。」
なんて恐ろしい笑顔でしょう。そう思った俺は逃げ出そうと立ち上がろうとした。でも、どっかの某マンガの宇宙船のように重力が加わって動けなくなり座らされた。(何故か知らないが正座になっていた。)
そしてこの女が言ったとうり、お話をしました。じっくり、一時間程。正直、足が痛くて頷く事しか出来なかった。
「ふむ…これ位で良いでしょう。」
そう言うと加重が無くなり、体制を崩す事が出来るようになった。ダメだ完全に足の感覚がない。
「あ、えっと、自業自得ですけど、大丈夫ですか?」
まだ警戒しているのか手や肩ではなく足に触ろうとする少女。えっ?何で足に触れようとしているのかねキミ?手払いたくても足のせいで動けない!あ、ヤバい。ピリピリしてきた。ダメ、触らないで!あっ…
「っ~~~!」
「おっと。」
足が、足が…。蛇がのたうちまわるかの如く、それはもう転がった。普段鍛えてるから転がった程度で動けなくなるわけはないが、この時は暫く動けなかった。
「大丈夫ですか?」
うわ、良い笑顔だなオイ。くそぅいつか復讐しちゃる。
「ハァハァ…で?あんた誰?」
「申し遅れました。私はこの∞・ワールドを管理する者の部下のようなものでして、名前はアイリスと言います。」
成る程ね…。まぁ、そうでなければここにいないか。
にしてもここは何だ?ずいぶん壮大な草原だこと。
お、向こうで熊とウサギが仲良く遊んでる。俺も遊ぼっと。
「ちょっとどこ行くつもりですか?」
「いや、あそこの熊さんと戯れてこようと…。」
「そうですか…。まだお話が足りないようですね。」
「すみませんでした!」
ぬぐぅ。VRの熊さんがどれだけやるのか知りたかっただけなのに…。この女、俺の楽しみを奪うなよ。いくら真っ平らだからってそれは…
「何かよからぬことを考えてますね?」
「ナンノコトダカ?」
「…はぁ、まぁいいでしょう。こんなことでは怒られてしまいます。ただでさえ催促が来てるんですから。」
催促?なんのことだ?…あぁ。上司が居るみたいなこと言ってたな。
「んで、何のようだ?」
「いったい奴の口が…!はぁ、ではあなたのお名前を教えて下さい。これは多くのプレイヤーが見るので余りにひどい名前はだめですよ?」
おっとそうだった。ここがゲームだというのを忘れてた。で、名前?どうしよう。…おぅ。リュウと決めていたのをまた忘れてた。さっきから色んなことが起こりすぎて記憶が飛んでるのか?
「俺はイクサだ。」
「分かりました。イクサ様ですね?」
「おう。」
次は何が来るんだろか?そんな事を考えていたら五つの画面が現れた。
「では、これからイクサ様には職業を選択していただきます。まずは…」
まず、職業は複数あり、最初は五つの中から1つしか選べない。
その五つは、剣士、騎士、魔術師、弓兵、僧侶である。
これらは後から変更可能で、ある程度プレイし、特定のクエストをクリアすると、サブ職業を決める事が出来る。
そして職業は経験値を最大まで上げると上位職業が解禁され、それを選択して使用できるようになる。
この職業、複数の職業の経験値を最大まで上げたり、特定のクエストをクリアすると特殊な職業を入手出来るらしい。
例えば、戦士。これは肉弾戦や斧やハンマー等を使って攻撃すると、戦士NPCの元で修行をするクエストが発生する。
もう1つの例えは、武道家。これは戦士と僧侶を鍛えると選択出来るようになる。僧侶は最大まで鍛えなくて良い。これは格闘戦に光属性の技が存在するからだ。
職業のスキルについてはそれぞれの長所を生かすような内容になっている。
「では、どの職業にしますか?」
「うえ!?あー…、じゃあ剣士で。」
体を使った戦闘もしたいが、折角ファンタジーなゲームをするんだから剣を使ってみたいからな~。
ハッキリ言ってイクサはアイリスの説明は最初の剣士の所以外殆ど聞いてはいなかった。
ある程度はリュウから聞いていたし、分からなければ彼に聞けば良いやって思っていたからだ。
「最後に種族を選択していただきます。」
種族には人間、獣人、ドワーフ、エルフがいる。
だがこれは大雑把に表したもので、獣人だと亜人、鳥人、ワーウルフといった様々な種類が存在する。
さらにスケルトンやゴブリンといったモンスターを選択する事も出来る。だが、
「あ、俺人間でよろしく。」
「獣人には…って、え?せ、説明聞かないのですか?」
「うん。体に慣れるの大変だしな。」
涙目になったが直ぐ我慢して、分かりました、と言って周りにあった画面は消え、また扉が出てきた。
「おい、また目が」
「あ、光の方は大丈夫です。あれを調節していたのは私でして、実を言うとチュートリアルを担当するの初めてだったんです。今回はちゃんと調節しました。」
「それなら、大丈夫か…。」
「はい!では、こほん。これから貴方は無限の道を歩みます。剣一筋でプレイするもよし。魔法を極め、崇められるのも良いでしょう。ですがこれは可能性の極一部です。多くの道を通るのも、真っ直ぐ1つだけの貴方次第です。私達はそれを歓迎します。そして貴方の道筋に祝福あらんことを。」
それを聞いたイクサは、
「これがテンプレ…なのか?」
「いいから早く行ってください!」
イクサは背中を押され、扉の向こうに消えていった。
そしてアイリスは思った。なんてプレイヤーが来てしまったのか、と。
これから∞・ワールドの世界です。
第一章はイクサがゲームに慣れていく内容にしたいと思っています。