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「しゃぁ!俺の勝ちだ!」
竜也が道路を原付で走っている中、和也は外壁の上を走り、挙げ句、屋根の上を通ったりと、パルクールのような動きをして、竜也より先に家に着いた。
「おいおい…。屋根の上はずりぃだろ…。」
和也が家に着いて一分程経った後、竜也が家に着いた。
そして、和也の身体能力の高さと、道がなければ作れば良いじゃない、と偉い人が言いそうな位の考えに驚きを隠せないでいる。
「そんなことより早く準備しよーぜ!」
竜也が原付を駐車させようと、押して動かしている中、玄関で手を振って竜也を急かす。
竜也は荷物を持って、和也が玄関を開けている間にいに入る。すると、
「おかえり」
と、少女の少し不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「ただいま~」
「お邪魔するね~」
と、二人は返す。そのまま和也の部屋に向かい、荷物を下ろす。
「美嘉ちゃん、なんか不機嫌そうな感じしたけど、どしたの?」
ヘッドギアの用意をしながら、和也に問う。
「リュウが家に来なくなってから一週間ぐらいからかな、ああなったの…。正直理由が分からないから困ってんだ…」
和也は自他共に認めるシスコンだ。性的とかではなく、彼にとっては、美嘉だけが家族だからだ。両親はいない。ある事故に巻き込まれ、亡くなってしまった。それ以来、妹を溺愛するようになった。
なので和也はその悩みを、今回のヘッドギアの準備に合わせて竜也に聞いてみた。
「ん~。正直俺には分からん。第一女心なんてもっと分からん。」
ヘッドギアのセットを終え、和也の部屋にあったクッションに座って答えた。
「そこは追々、自分で聞いてみるしかないだろ。ところで、キャラの名前は決めたか?」
以前来たときと部屋の違いはどこかなと部屋を見回しなが聞いた。
「いや、なんも。全く閃かん。」
ベッドに座りながら竜也と会話を続ける。
「なんか良いのないかな?」
「ならさ、こんなのはどう?連想ゲームのようにして考えてみたけどさ、カズは戦闘狂だろ?だからた、戦い、戦、イクサってのはどうだ?」
和也は腕を組んで考える。そして、
「うん、それ良さそうだな。それにしよう!」
と言って、ヘッドギアに手を掛ける。
「いちようゲーム自体はセットしたけど、このヘッドギアにはアップデートのデータは入ってないから少し時間掛かるからな。後、俺はニュービーが最初に来る町の冒険者ギルドにいるから。因みに名前はリュウだ。」
自分の荷物をまとめ、帰る準備をしながら言った竜也の言葉に和也は反応し、
「俺が呼んでるのと同じじゃないかよ。」
「仕方ないだろ。さんざんカズに言われてきたんだからな。他の呼び名だと反応できないからね。じゃ、また、後でな。」
荷物を持って部屋から出ていく竜也。
ベッドに横になり、ヘッドギアを被って、和也は電源を入れ、仮想の世界に沈んでいった。