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だけど、やっぱり君が好き。  作者: 紫野 月
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薫さんのお友達

亜也子さんの悪友、薫さん視点でおおくりします。

時々、薫さんがエキサイトして言葉が乱れます。読みにくかったらすみません。

 私の同僚であり親しい友人である吉野亜也子はケタ違いの美人である。

 彼女はこの会社に入社した時、その美貌を買われて受付の仕事に配属された。

 受付の業務に就いていた期間はわずか一年半だったが、数々の輝かしいエピソードを残している。

 電話一本で済む用件なのに、彼女に会うためわざわざ会社までやって来る男達… なんて日常茶飯時で、なかには用もないのに毎日押し掛けて来るツワモノもいた。

 我が社一のモテ男が三ヶ月もの間毎日欠かさずデートに誘ったのに一度もイエスと言わなかったとか。どこぞの芸能プロダクションのマネージャーが窓口にいる彼女を見かけ、仕事中だというのにスカウトしだしたとか。彼女に一目惚れした大会社の社長が、500本の薔薇の花束を抱えて結婚の申し込みに来たなど、あげればきりがない。

 かれこれ五年も前のことなのに未だに社員の間で語り継がれている。もはや生きた伝説。レジェンドである。


 受付嬢時代、邪まな思惑を持った男どもを如才無い対応で捌いていく彼女の手腕を目の当たりにした秘書室長は、彼女を秘書室に引き抜くことにした。

 あの吉野亜也子が秘書室に来る。

 その辞令が告示された時、秘書室の女性たちはパニクった。

 まだ入社して二年目だというのに社内一有名な美女。

 聞けばk大の英文科卒だという。そんな顔も頭もいい女はエベレストより高いプライドを持っているに違いない。

 きっと秘書室に嵐が巻き起こる。そんな予感に皆、戦々恐々としていた。

 結果から言おう。それは杞憂に終わった。


 吉野亜也子という人物は我々の予想を大いに裏切った。

 まず彼女は自分の美しさに無頓着で、それを鼻に掛けるような言動がない。そして自分を特別視する変な自尊心とも無縁だった。

 秘書室に配属された時、礼儀正しく謙虚な態度で一番下っ端の雑務を文句を言わずこなしていき、いつの間にか秘書室の一員として溶け込んでいったのだ。

 実は私は彼女より一年後輩である。

 彼女が配属された時、私も秘書室に配属されてほんの数ヶ月しか経っていなかったのに、私を秘書の先輩として立ててくれた。

 そんな亜也子と無二の親友となるのにそう時間はかからなかった。


 親交を深めていって分かったのだが、亜也子はお酒に弱い。そして酔っ払うと重い口が軽くなる。

 なので適当に酔わせていろいろ聞き出していた。

 いや、だってこんな美人が近くにいたらいろいろ聞きたいことがあるじゃない。まあ特に恋愛関係の方だけどさ。ほら、なんか参考になるんじゃないかってね… まっ、ならなかったけどね。

 信じられないことだが亜也子は高校のときに好きになった人を一途に想い続けていた。

 さぞかし華麗な男性遍歴があるだろうと予測していたのに見事にはずれた。

 きっとその男性は途轍もなくいい男に違いない。だって亜也子が他の男に目もくれず、ずっと想い続けているんだものね。

 私はまだ見ぬ亜也子の彼氏を想像して、一人ドキドキ、ワクワクしていた。

 そして、亜也子の彼氏を紹介してもらう時がきた(私がシツコクお願いしたからだが…)

 その時の私の高鳴る胸の内がご理解いただけるだろうか!

 そしてその期待は見事に砕け散った。


 亜也子ほどの人が、どうしてこんなパンピーと…

 いや、確かに凄い人だよ。あの天下のk大で先生をしているなんて、世間様からすれば、エリートといっても過言ではない。

 だけど、なんていったらいいかな。亜也子の彼氏には役者不足っていうか… はっきり言って釣り合ってない。

 いやいやいや、駄目だよ私。外見で判断しちゃ。

 それにキラキラオーラが無いだけでよく見るとイケメンの部類に入るじゃないか。

 でも、常務クラスは無理だとしても、せめて営業の広田レベルのイケメン度が欲しいところだ。

 だから駄目だって。顔で優劣をつけちゃ…

 分かってる、分かっているよ。目も覚めるような美男美女が素敵な恋愛模様を繰り広げるのは、小説かTVドラマの中だけ。

 なかには美女と野獣のカップルだってあるくらいだ。それを思えば、なんちゃってイケメンと超美女… ありあり。大丈夫。全然OK。問題なし。

 それに、ヨレヨレのシャツを着ているから冴えないだけで、ダークスーツ着せてボサボサの頭を整えたら、広田は無理でも井上主任レベルまでは底上げ出来る気がする。

 心の中でしばし葛藤を続けてしまったのである。



 亜也子の彼氏、二宮和臣は実に不思議な男だった。

 初対面の私に、いきなり「魚は何が好きですか?」って真面目な顔で聞いてきたのだ。

 サカナはナニがスキですか?

 それってどう答えるのが正解?

 魚の名前? それとも食べ方? それとももっと奥の深い質問なのか?

 質問の意味が分からずフリーズした私に、彼はニッコリ微笑んで「僕はチンアナゴが好きなんです。見たこと有りますか? 」そして、チンアナゴの生態について一時間近く語りだしたのだ。

 亜也子は隣でウットリと彼氏のこと見てるし…

 なんじゃ、これは!

 優秀な人間は変わってる人が多いらしい。

 凡人では気付かない所に目が行くんだから、そうなのかもしれない。それにしたって、これは、どうよ。


 翌日、亜也子が「カズ君は、魚のことになると夢中になってしまうの。ビックリしたでしょ。ごめんね」 と謝ってくれた。

 会う前に言っといてくれたら、こちらも対処の仕方を考えておいたのに。



 亜也子。君の彼氏は大丈夫か?

最後まで読んでいただきありがとうございます。

楽しんでいただけたでしょうか。

薫さん視点でこぼれ話を書いていこうと思ってます。

5~6話程度で終わる予定です。

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