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満月の日の新人着任編 1-9  「満月の夜の事件 木更津雪穂編」

――― 鎌ヶ谷拓真と茂原水奈がショッピングモール内で戦闘を繰り広げていた同時刻



白川県 小和田郡 海林町 



『はいはーい、パトカーが通過しまーす! そこの前の白の軽自動車運転手さん、左に寄って道を開けてくださーい!』



 夜の海林町内に、若い女性の声が響き渡る。


 国道508号線を1台の覆面パトカーがサイレンを鳴らし、緊急走行で北方面へと向かっていた。

 運転席でハンドルを握っているのは、白川県警 警備部 戦対第一課所属の警部補:木更津雪穂である。



「はぁ … 隣に鎌ヶ谷君が居ないと、なんか寂しいよね … 」



 つい数日前までは、いつも鎌ヶ谷拓真と2人1組のペアとなって行動していただけに、こうして助手席に誰もいないとなると彼女自身寂しい思いをしていた。



「今頃2人とも … ちゃんとうまくやってるかな … 。 大丈夫かな?」



 弟のように可愛がっていた鎌ヶ谷拓真のことが心配で仕方がない雪穂。

 ちゃんと新人と上手くやっているか心配しながら交差点を通過したとき、本部から無線が入った。



『白川本部から、海林PS管内に出現した透怪物事案従事中の戦対003へ』


「こちら戦対003です。どうぞ」


『18時51分入電。透怪物傷害事案発生。現場は、白川鉄道小和田線 播摩駅構内。駅職員1名が負傷しており、車両に数名の乗客が取り残されている模様。よって至急現場に急行し保護を急げ。以上、白川本部』


「戦対003、了解」



 彼女は チッ! と舌打ちをした。



「もう被害が出ちゃったのね。これだから満月の日は嫌いなのよ」



 それから覆面パトカーを走らせること5分後、ようやく白川鉄道小和田線 播摩駅前に到着した。

 既に駅前にはパトカー数台が停まってあり、数名の警察官がボーっと駅建物を見つめている。


 車両を降りた木更津雪穂は助手席に乗せていた大きなギターケースを肩に背負い、バタンッと車のドアを閉めると、その音に気が付いたのか1人の警察官が彼女の元に駆け寄ってきた。



「あの … 現在、播摩駅は立入禁止となっていますので、お引き取り下さい」


「はぁ … もう」



 溜息を吐いた木更津は、仕方なく警察手帳を取り出して見せた。



「私は要請を受けて本部からやって来た戦対第一課所属の木更津雪穂なんだけど!」


「こ、これは … 本部の捜査員でしたか! 申し訳ございませんでした!」



 警察官の男性は、彼女が本部の人間だと分かる否や、咄嗟に敬礼ポーズをとった。

 どうやらこの警察官は、木更津雪穂が警察の人間であるということが分からなかったらしい。なぜならば、木更津雪穂の服装が警察関係者らしくなかったからだ。


 木更津は白いキャミソールの上から淡いオレンジ色のパーカーを肩に羽織っており、赤色チェックのミニスカートという服装。そしてガーターベルト付きのオーバーニーソックスと茶色のブーツを履いている。

 完全に見た目が警察官には見えなく、ただの女子大学生にしか見えない。



「そんなことはいいからさ、状況を聞かせてくれる?」


「あっ、はい。我々が駆けつけた時には、既に駅員男性1名が腕から血を流して倒れていました。救急車を手配して病院へと搬送したものの、命に別状はないみたいです」


「それはよかったじゃない」


「ですが、問題はここからです。現在、駅ホームに2両編成の車両が停まっているのですが、その車両が左右に激しく揺れているのです。車両の天井部分がへこんでおり、まるで巨大な何かが車両の上にいるかのような … 」


「なるほど … それが透怪物リフレクターだわ。それでその車両の中に乗客は?」


「外から目視してみましたところ、運転手・車掌・乗客7名の姿が確認出来ました」


「そう、分かったわ。後は私が引き継ぐから、あなた達は誰も駅構内に入らないように見張ってて」


「はっ、承知しました!」



 木更津はそう告げると、静肩に大きなギターケースを背負ったまま駅舎に向かって歩き始めた。



 彼女は小さな木造の駅舎内に足を踏み入れ、改札を通過し、1つしかないホームに躍り出る。

 確かにホームには2両編成の列車が停まってあった。


 しかし、それは普通の列車ではなかった。その2両編成の列車が激しく左右に揺れているのである。そして天井部分は大きく凹み、窓ガラスにはヒビが入っている。まさに今にも押し潰されそうな状態だった。

 車両の中にいる乗客たちが恐怖の表情を浮かべているのが、ここからでもはっきりと見える。


 それを見て木更津は肩にかけていたギターケースを降ろし、中からサーモグラフィー搭載型のHMDを取り出して装着した。

 右側視界半分に熱分布映像が広がる中、彼女は標的の姿を捕捉する。


 列車の上にのし掛かっていたのは、全長15mもある軟体生物だった。

 4本の分厚い脚が巨大な体を支えており、その体の周りからは吸盤付きの8本触手がのびている。シルエット的には巨大なタコのように見える透怪物リフレクターであった。



「あれは … 結構な大物ね。たぶん三級怪物のクラーオクトに間違いないわ」



 そう呟き、続けてギターケースの中からHannibal Modelライフルという猟銃を取り出した。

 猟銃を構え、照準器を覗き込み、トリガー(引き金)に手をかけながら、標準をクラーオクトの8本触手の基部に位置する急所である頭に合わせる。

 そして彼女は何の躊躇ためらいも見せずにトリガーを絞る。

 ドンッ!という重く腹にこたえるような音が鳴り響いたと同時に、銃口から魔力付与されたライフル弾が飛び出し、クラーオクトの1本の触手を根元から吹き飛ばした。


 このHannibal Modelライフルは通称T-REXライフルと言われており、弾薬は585口径の大型獣狩猟用マグナム弾を使用している。

 巨大なクジラを一撃で即死させるほどの破壊力を持っており、狩猟用では世界最強の威力を持っているという。

 そのゆえ発砲したときの反動は凄まじく、反動に耐えきれずに後ろにこけたり、銃自体が吹っ飛んでしまうほど威力が強いのだが … 木更津の場合は違った。


 大の大人でも反動に耐えられない程の威力を持つハズなのに、彼女はライフルを発砲した直後、ほんのわずかに身体が揺れたものの、ほぼ無反動に近い姿勢のままだったのだ。

 その理由は、威力軽減魔法を使用して銃の反動を殺したからであるのだが。



「チッ … 外したか」



 一発で仕留めようと思ったのだが、クラーオクトの急所である頭は非常に小さかったので、狙いが定まらなかったようだ。

 海の生物タコもそうなのだが、頭部に見えるあの丸くて大きな部位は実際には胴部である。この構造を持つ生物のことを頭足類と呼ぶのだが、クラーオクトもその頭足類と呼ばれる分類に属している。


 木更津はもう一度狙いを定めようとしたが、それよりも先に3本の触手が伸び襲いかかってきた。

 咄嗟にパワー増幅魔法で5mの高さまでジャンプして回避するものの、さらに別方向から2本の触手が伸びてきたので、木更津はライフルの引き金を絞り、その触手を木端微塵に吹き飛ばす。


 そのまま駅舎の屋根に着地した彼女は、ライフルに弾を装填しながらクラーオクトを睨みつけた。



「あの触手が厄介だわ。まずはアレを全部吹き飛ばしてから … 」



 だが、ここで予想外なことが発生した。

 今まで計3本のクラーオクトの触手を吹き飛ばしているのだが、その触手が突如元通りに再生したのだ。



「なっ … 嘘でしょ!? クラーオクトって再生するの!!」



 木更津は今まで日本各地で出現した透怪物リフレクターを記録した捜査資料に目を通したことがある。

 江の島や羽田空港にクラーオクトが出現したという資料を目にしたことがあるのだが、その資料にはクラーオクトが再生したという記述はなかったハズである。



「クッ、再生するんじゃ、近づくことさえ無理じゃない … 」



 試しにここから奴の弱点である頭部を狙ってみるが、ウネウネと動いた触手を盾にしているので狙えない。



「はぁ … 日本刀の扱いが上手いチート鎌ヶ谷君なら、こんな相手でも簡単にやっつけちゃうんだろうな … って、まずっ!?」



 またもや触手3本が襲いかかってきたので慌ててジャンプして回避。駅舎の屋根に触手が激突し、屋根は木端微塵に破壊された。


 ジャンプして宙に浮いた木更津はライフルによる攻撃を諦め、得意な遠距離魔法攻撃に移ることにした。

 スカートのポケットからライターを取り出した彼女は、こう呪文を唱える。



火炎操縦フランメシュトイアム!!」



 直後、ライターの火がみるみるうちに巨大化していき、1体の巨大で細長い炎の龍が形成された。

 その炎の龍は星空に向かって遠吠えを上げ、一直線に向かってクラーオクトに向かって突き進み始める。

 しかし、口を大きく広げた火炎龍がクラーオクトを呑み込もうとした瞬間、突如その炎龍がジュウー!!という音を立てて固まったと思ったら、水蒸気爆発を起こして跡形もなく消滅してしまった。


 『火炎操縦フランメシュトイアム』は、火種があれば自由自在に炎を操ることができる魔法である。木更津の得意魔法の1つであり、いつもは炎から炎龍を生み出して攻撃手段に使っている。

 炎の温度は最低3000℃~最高5000℃までに達し、あらゆるものを焼き尽くす炎魔法であるのだが … その炎が一瞬にして消滅してしまったのだ。

 普通の水では消すことが出来ない炎をクラーオクトが一瞬にして消し去った。これには木更津も動揺を隠せない。



「なっ … なんで、あたしの炎龍が消滅したのよ!!」



 自慢の魔法があっさり破られたことに愕然がくぜんとしていると、その隙を見計らってまたもやクラーオクトの触手が彼女に襲いかかった。

 しまったと気が付いたときには既に遅い。



「かはッ …… !?」



 1本の分厚い触手によって木更津の細い身体を薙ぎ払われ、物凄いスピードでコンクリート製の駅ホームに叩き付けられてしまった。

 コンクリート製のホームが粉々に砕けて瓦礫と化した中に、木更津が頭から血を流してぐったりと横たわっている。



(くっ … 何て、威力なの … )



 物凄い速さで伸びてきた触手に薙ぎ払われ、コンクリートの駅ホームに頭から突っ込んだにもかかわらずに、木更津は生きていた。

 普通の人間ならば即死していただろう。でも彼女は普通の人間ではない。だって彼女は魔力保有者スペラーと呼ばれる魔法使いなのだから。


 木更津はゆっくりとした動作で起き上がる。

 額から血が流れ落ちて、足はふら付き、右腕がダラリと力が抜けたように垂れ下がっていた。

 コンクリート製ホームに叩き付けられる瞬間、木更津は威力軽減魔法を唱えてダメージを押さえたつもりだったのだが、ここは相手の威力の方が上回っていたのだろう。



「それほど … あの触手の威力は、強いってことなのね … うッ!!」



 その時、ズキッ!とした鈍い痛みが全身を駆け抜け、木更津は顔を苦痛に歪めてダラリと力が入っていない右腕を押さえた。

 実は彼女の右腕の骨は折れていたのであった。そのため右腕に力が入らない状態だった。

 今は鉛のように重く感じる右腕を押さえながらも、彼女はもう一度巨大な蛸型の怪物:クラーオクトを見上げて顔をひきつらせる。



「くっ … このままやり合っても、こっちに勝ち目なんて見られない … 。鎌ヶ谷君 … やっぱ私って無能 … なのかな … ?」



 木更津の脳裏に、つい先日まで一緒にペアとなって戦ってきた元相棒:鎌ヶ谷拓真の顔が思い浮かぶ。

 近距離攻撃が得意な鎌ヶ谷拓真と遠距離攻撃が得意な木更津雪穂。この二人ならこの世に倒せないモノはない。木更津はそう思っていた。


 だがそれは間違いだったということに気づかされる。

 上司である木更津雪穂よりも、部下である鎌ヶ谷拓真の方が圧倒的に実力はあったハズだ。いつも戦闘では鎌ヶ谷拓真が主力して動き、木更津はその援護を務めていただけだから。



「鎌ヶ谷君は … やっぱ凄いよ。上司の私よりも実力があるんだから」



 そう呟くと、木更津は小さく苦笑した。



「ふっ … 鎌ヶ谷君が強いのは当たり前か。だって鎌ヶ谷君は … 世界に7人しかいない …… 」



 そう言いかけた時、



「あーあー、そこのお姉さん? どうやら右腕の骨をやられたようですね。これはこれはさぞかし痛いでしょうに」


「だ、誰なの!?」



 木更津は後ろを振り返ってみると、そこに立っていたのは1人の少年だった。

 歳は10代半ばぐらいで、髪は短くて亜麻色をしている。白のカッターシャツに紺の長ズボンという服装である。どこかの学生さんだろうか? と木更津は思った。



「ボクはただの通りすがりの通行人です」


「ちょっと … どうやってここに入ってきたの? 駅前で警察官に呼び止められなかったの?」



 木更津の質問に対し、少年は爽やかな笑みを浮かべただけで何も答えはしなかった。



「それにしても … のん気に突っ立っていてもいいんですか? ほら、早く列車の中に残っている乗客を助けないと、彼ら死んじゃいますよ?」


「っ!?」



 少年にそう指摘されて木更津は顔を青ざめると、腕の痛みそっちのけで列車に向かってダッシュした。

 幸いにも列車はまだ潰れてはいない。


 クラーオクトからの攻撃を気にしつつも、木更津は列車の歪んだドアを魔法でぶち破った。

 列車の中には運転手・車掌・乗客の計9名が身体を寄せ合いながら震えていた。

 木更津はそんな彼らに向かって大声で呼びかける。



「みなさん、今のうちに外に!!」



 乗客たちは一斉に列車の外に飛びだしていく。

 最後の乗客が外に飛び出して木更津が安心したのも束の間、クラーオクトの触手が列車をスクラップ状に押し潰した。


 これで乗客の心配はなくなったものの、依然としてクラーオクトを倒さなければならないということには変わりないのだが。



(どうやって奴を倒せばいいのよ。私1人じゃ無理 … ここは増援を呼ぶしか … )



 と考えていると、突如木更津が脚をふらつかせ、その場でガクンと両膝をついてしまった。



(えっ … ? 足に … 力が入らない!?)



 触手に薙ぎ払われてコンクリートに激突した際のダメージや疲労が今になって襲ってきたのだろうか。何度も何度も立とうと試みるが立つことが出来なかった。


 動くことが出来なくなってしまった木更津の姿を捕えたのか、クラーオクトの触手が彼女の元へ伸びていく。



「くっ … 何で動か … きゃっ!?」



 触手は無防備となってしまった木更津の胴体を絡め取り、そのまま宙に持ち上げ、物凄い力で締め上げ始めた。



「かはっ …… はぅ ……!!」



 メキメキッ!という骨がきしむ音が鳴り響き、木更津は呻き声を上げる。

 必死に脚を動かして抵抗するものの、身体が押しつぶされそうな程の圧倒的な力には勝てなかった。骨折している右腕も締め付けられ、木更津の体力が急速に奪われていく。



(くっ … ここまで、か)



 既に戦意を消失してしまった木更津の目が虚ろな目になっていく。

 やがて視界が歪んで頭がボーっとしてきて、意識朦朧となってきた時、



「―――!?」



 突如、パパパパパパン!という乾いた連続音が鳴り響き、木更津の身体を締め付けていた分厚い触手が粉々に吹き飛ばされたのである。


 木更津は空を見上げた。

 上空に1機のV-22オスプレイがホバリング(空中停止)してあり、後方ランプに木更津の顔見知りの男性が立っているのが見えた。

 その男性を見て、木更津は驚いたように瞳を見開く。


 少し長めの髪に眼鏡をかけ知的な顔に見えるその男性とは、警備部 戦対第一課の課長を務めている船橋ふなばし影朗かげろうであった。

 ちなみに歳は29歳で、木更津雪穂の恋人でもある。


 船橋影朗はオスプレイから飛び降りると、地面に落下していた木更津の身体をキャッチして抱きかかえた。

 そのまま魔法でゆっくりと減速しながら華麗に地面に着地する。



「雪穂、大丈夫か?」


「うっ … 何で、ここに … 」


「お前がソロで行動していると聞いて、慌てて本部から飛んできた」


「影ちゃん … 来るのが遅い、よ。私 … もう少しで、殺され … かけるところ、だったのよ … ?」


「悪い」



 しかし木更津は船橋の腕の中で嬉しそうに微笑んだ。



「でも、助けに来てくれて … ありがとう」


「とりあえずお前はゆっくり休んでおけ。後のことはこっちが引き継ぐ」


「うん」



 安心したのだろうか、木更津は頷くとそのまま瞼を閉じて気絶してしまった。


 とりあえず船橋は木更津を地面に仰向けに寝かせ、無線機を使い、ヘリを操縦している我孫子玄蔵に向かって指示を出す。



「我孫子、聞こえるか? とりあえずガトリング砲でクラーオクトの触手を吹き飛ばせ」


『了解した』



 直後、オスプレイの左右に取り付けられたM197機関砲という電動式三砲身ガトリング砲から、ガガガガガッ!!という耳をつんざくほどの轟音と共に20mm口径の魔弾丸が飛び出し、クラーオクトの8本の触手をすべて木端微塵に吹き飛ばした。



「雪穂に手を出した罰だ。今度はミサイル攻撃をお見舞いしてやれ」



 無線機に向かってそう指示を送ると、ヘリのミサイル発射機から2発のTOW対透怪ミサイルが発射され、クラーオクトの巨大な胴部に着弾し爆発した。

 クラーオクトの胴部2カ所が吹き飛ばされ、巨大な穴ができる。



「さて、トドメと行こうか。暴風手裏剣ウォスタンストーム!!」



 船橋がそう呪文を唱えた直後、周りの空気が圧縮されて手裏剣の形をした空気の渦が数百個形成され、クラーオクトに向かって一直線に飛んでいき始めた。


 体の再生が追いつけなかったのだろうか、クラーオクトは触手を使って弱点である頭部を防御することが出来なかった。

 空気の手裏剣が次々と頭部を貫通していき、やがてクラーオクトは絶命した。そのボロボロの巨大はガラスが砕けるようにして分解され、空気中に飛散していった。


 それを見届けていた船橋は少し心配そうな表情を浮かべ、ぐったりと仰向けで気絶している木更津の顔を眺めながら、無線機に向かって報告をする。



「こちら船橋だ。標的のクラーオクトは無事に始末した。それよりも木更津雪穂が負傷しているから至急、救急車を手配してくれ」


『了解したぜ、課長さん』



 無線を終えると船橋は辺りを見渡してみた。


 駅舎の屋根は破損しており、コンクリートの駅ホームは粉々に粉砕されている。駅ホームに停まっていた2両編成の列車はスクラップしたかのようにペチャンコに潰れている。線路は歪み、あちこち地面が陥没していた。

 凄まじい戦いぶりだったということが、この光景を見ただけでも分かる。



「今日は一体どうなっている? 雪穂がこんなにやられたとは … ビッグタウンでは、あの鎌ヶ谷拓真でさえ手こずっていたそうだが … 。まぁ、後は本部に帰ってから考えるとするか」


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