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LikE or LovE

作者: ソラ

もう、夏休みも終盤。

何度、携帯電話の待ち受け画面を見ても新着メールが来た様子はない。


夏休みの終わりの花火大会は毎年幼馴染みの海斗と行くことになってる。

それは、何というか決めごととかそう言うんじゃなくて。

小さい頃からそのお祭りだけは一緒に行っているから習慣のようになっている。


毎年、この時期になれば海斗からメールが来てたよね?


そんな疑問を抱きつつも何度も何度も携帯電話の待ち受けを確認してしまう。

花火大会がどれほど私にとって楽しみなイベントか、海斗は知らない。

もう、3年目だ。この、気持ちに気づいてから。



「芽衣ちゃんは好きな人いないの?」

「それとももう彼氏いるとか?」

高校入学して間もない頃、やっと名前と顔を覚えたようなクラスメイト数人に席を取り囲まれ質問攻め。その時はまだなんで私が質問攻めにあっているのかわからず笑顔で答えを返すことができた。


「好きな人も、彼氏もいないよ。なんで?」

私がそう言うと、周りの女子のほとんどが安堵の表情を浮かべた。


「じゃあ、じゃあ、海斗君ともただの幼馴染み?」

その一言ですべて悟った。

ここに集まった女子の興味、関心のすべては私ではなく海斗に向けられていることを。


海斗がそんなにかっこいいかな?

そう思って同じクラスになった海斗をぼんやり見つめた。

そこに居たのはいつもと変わらない幼馴染みの海斗。


私が見ていることに気づくと子供っぽくにこっと笑って来た。

ムスッとしたままでいると「なんだよー」とでも言いたそうな顔をする、幼馴染みの海斗。


でも、その数ヶ月後、海斗は幼馴染みではなくなった。


海斗は陸上部に入った。高飛びの選手だ。

ある日私が日直で放課後ひとりで日誌を書いていると、ちょうど打席から陸上部の練習しているグラウンドが見渡せた。

私は海斗どこにいるのかすぐわかった。

グラウンドの端、高跳びの練習をしている。

次は、海斗の番だ。


また、ぼんやり海斗を見ていた。

海斗が助走をつけて、飛ぶ――。


自分でも驚くほど海斗から目が離せなかった。



あの日から海斗は私の好きな人。


好きな人との花火大会。

なんど、気持ちを伝えようと思っただろう。


来年は、きっともうないだろう。

2人だけの大会で、告白できるラストチャンス。


なのに、今年はまだ花火大会に誘ってもらってない。

よく考えれば、彼女ができててもおかしくない。


今年は彼女と行くのかもしれない。

海斗にとっての私は、いつまで経っても幼馴染みのままだ――



花火大会前日。


もう、メールは来ないだろう。

そう言えば海斗のことが好きな女の子はたくさんいるんだっけ。

みんな、私よりかわいいし。

きっと、花火大会だって誘われてるんだろうな・・・。


時計を確認するために携帯電話の待ち受けを見た。

6時ちょうどだ。


目を離そうとした瞬間、着信音が部屋中に響く。


それはメールじゃなくて電話だった。

それは、もちろん海斗から。


「もしもし?」


「もしもし?芽衣?」


「うん」


「花火誘うの遅れてごめんな」


海斗、もうわかってるよ。

今年は無理なんでしょ?

彼女と行くからなんて恥ずかしくて他の理由考えてたんでしょ?


「今更なんだけどさ、今年も一緒に花火見に行かない?」


え?なんで?

不意にそう言いかけた。


私と、行くの?

安心したせいか、涙がこぼれた。


「もしもし?芽衣?なに、なんか、泣いてる?」


涙と一緒に、自分の中にあった何かがはずれた。


「泣いてるよ、誘うの遅いんだもん。ばか」


「ごめんて」


「私は海斗との花火大会が楽しみで楽しみで・・・・・・。海斗にはわかんないよね」


「俺だって楽しみだよ」


「違うよ」


海斗の楽しみと、私の楽しみは違う。

だって、私の気持ちは一方通行だから、いつだって見てるのは私だけ。



「お前こそ、俺がお前を誘うのにどれだけ苦労してるか知らないだろ?」


苦労?


「好きな子に、つきあっても居ない子に、片思いの子に、芽衣に、花火大会行こうっていうのしんどいんだよ。好きな子と幼馴染みとして花火大会に行くつらさが芽衣にはわかんないだろ」


「・・・わかるよ」

だって、同じだもん。


なんだか、今まで自分が悩んでたのがおかしくて。

海斗と同じ気持ちだったことがうれしくて。

だけどちょっぴり幼馴染みとさよならするのがさみしくて。


だから たくさんわらってって、少しだけ泣いた。



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