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マスク考

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/10/01

あの狂乱の季節を、人々はどんな気持ちで過ごしていたのだろう。街中が同じ白い布で顔を覆い、互いの表情を探り合っていたあの頃。世界が「正解」とされる行動に右倣えする中で、どうしてもその波に乗れなかった天の邪鬼な人間が一人、ここにいる。これは、社会の波にささやかな抵抗を試み、ひとり迷走を繰り広げた、とある「マスク嫌い」の滑稽で切実な記録である

 あの頃。つい最近のような気もするしずっと昔のお話だったような気もする。とにかく新型コロナウイルスが一番流行ったあの頃━━。感染患者数が急速に増え、さらに感染が急拡大しそうな雰囲気があったっけ?まあ、テレビを持たぬわたしはそうなって初めてコロナウイルスの存在を知ったのであるが。

 あーそれでマスクをしていないと、どこか白い目で見られた訳ね━━。

 やっと気付いたくらいだ。

 それでもわたしは頑(かたく)なにマスクを着けるのをギリギリまで拒(こば)んだ。

 わたしは心が捻(ひね)くれていたから。これではコロナウイルスかや流行っているのかマスクかま流行っているのかわからん、とばかりに反抗してみせたのである。大衆迎合は嫌だった。強制には断固として応じないし、『推奨』なんて書いてあったら、そんなものは逆に信じないのである。マスクを着けないことこそ正義であり、テレビへの細(ささ)やかなる反抗作戦だったのである。

実際、緊急事態宣言も完無視しながら普通に暮らしていて、どうやってもコロナにかからないのだしで、既にわたしにはコロナウイルスへの免疫が体内に作られていたか、コロナウイルスなんて嘘だ。そんなものはない━━。

 と、かなり論理に無理がありながらも本気で信じているわけで、まあ結果的に無事に過ごしたのだから、テレビのいうことなど嘘も良いところ、視聴率稼ぎのためだけのデタラメ情報に違いないという自らの主張に証拠をつけたのであった。(良い子の皆様方は決して真似しないでください。実際感染するりすくもありますし、医師や各自治体の支持に従いましょう)わたしはもともとテレビという娯楽がかなり好きではないので、テレビでしか得られない情報は何もしなけれぼ得られないのでもある。

 そういえば、当時『マスク美人』という言葉が流行ったよね。いや、大して流行ってなかったような気もするけど。知らん。まあ、それは経済的なマスク需要の喚起策に過ぎないのだろうけと。

 マスクを掛けるととても可愛らしくも知的でフェミニンに見える方は大勢いたよね〜。

 まあ、わたしには無理なようだけれど。眼鏡もサングラスもヘアクリップもバレッタもカチューシャもエクステも何一つ似合わないのだから。

しかしならば、顔のおよそ半分を隠すますに対抗して……。顔中すべてを白い包帯で覆い隠すミイラ男みたいな人間、『ミイラ美人』というのはどうだろうか?それも成立するのではないか?そう考えたのである。

 あの包帯の中身はきっと美人なんだろうな……。と思って貰えるミイラ男美人はやはり没あいでなのだろうか?

 まあ、それは実行しなかったけどね。


     【了】

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

作中では散々な言いようをしてしまいましたが、もちろんマスクそのものや、当時現場で奮闘されていた医療従事者・関係者の方々に悪気があったわけではありません。

ただ、誰もが同じ方向を向き、「正しさ」を突きつけられていたあの異常な空気の中で感じた、息苦しさとちっぽけな反抗心を、ひとつの滑稽な思い出として形に残しておきたかったのです。

ちなみに「ミイラ美人」作戦は、包帯を買うコストと巻く手間の面倒くささに負けて幻となりました。やらなくて本当に良かったです。

またどこかの作品でお会いできれば幸いです。

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― 新着の感想 ―
マスク社会になってから、マスクの下がスッピンの人も増えた気がします。 マスクの下がスッピンで こんな顔だったんだ(マスク装着時のイメージよりは美人ではない)ってのが前よりも増えました。 私は、メイ…
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