*序*
現代活劇ファンタジー“もどき”第三弾。
次なる対戦相手は「人魚」。
お時間のある方も、ない方も、一読して頂けたらありがたい限りにございます。
「お兄ちゃん、遊ぼうよ!」
無邪気な笑顔で、彼女はそう言った。
……………。
……曲線美。
彼女の姿を目の当たりにして、オレはその意味を理解した。
曲線美とは、女性のためにある言葉なんだ、と。
陶磁器のように白く、力加減を誤れば折れてしまいそうに細く、だけどしなやかな強さのある首筋。
熟れた果実のように丸々と、スイカやメロンというよりグレープフルーツみたいな、決して重力に負けることのない胸元。
ひょうたんや砂時計を彷彿させる、まるで反比例のグラフのように、しかしあくまでも自然なラインを描く腰回り。
熱帯魚さながらの鮮やかな青い鱗に包まれた、イルカのように滑らかな下半身――というか尾ビレ。
そう、彼女は人魚だった。
しかし、一般的なイメージとは大きく違う。
下半身は魚で、上半身は人間。これは合っている。だけど人間の部分に問題があった。
貝殻的なモノでなく、競泳用水着を着ているのだ。
よって、肌の露出は極めて低い。見えるのは肩から下と、首元から上だけだ。
だがしかし、どうだろう? これはこれで。
隠れているとはいえ、曲線美と言うに相応しいそのボディラインははっきりと見えている。
下手に露出しているより、想像力が働く。
その黒光りする布キレの向こう側への、好奇心が騒ぐ。
得体の知れない感情が、心の奥底から沸き上がってくる。
……もしや? もしかして?
もしかして、これが?
もしかして、これが男子高校生なら誰しもが秘めているという、あの有名な感情なのか?
その名も――。