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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: K.K.
第5章ー炎神の子ー
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来るべき時が来たならば!

アンジュはふんっと鼻を鳴らした。


「公にはできませんが――」


背中に背負っている大剣に手を添える。


鞘も柄も豪奢な装飾が施された、真紅の剣。

店の灯りを受けて鈍く輝くそれは、明らかにただの武器ではなかった。


アンジュは誇らしげに言う。


「この神剣レーヴァテインも――」


ベルが即座に言った。


「その使えないやつね」


アンジュが固まる。


「使え……」


口を開きかけて、言葉を飲み込む。


「まぁ、来たるべき時しか使えないのは確かですけれど」


軽く咳払いする。


そして胸を張った。


「ひとたび、この剣が抜かれたならば――」


声を低くする。


「世界は炎に包まれますわ」


ミリィがびくっとする。


アンジュは堂々と言い切った。


「危なすぎて使えませんわ」


リックが静かにパンをかじりながら言った。


「昔は戦いのたびに抜こうとして、抜けなくて泣いてたじゃないですか」


アンジュの動きが止まる。


リックは続けた。


「今も時々、一人でこっそり抜こうとしてるの、みんな知ってますよ」


バロムが静かに頷く。


「……見た」


アンジュがゆっくり振り向いた。


「……」


「……」


「……リーーーークッ!!」


机を叩く。


「どうしてそれを今ここで言いますの!?」


ベルが腕を組んで頷く。


「やっぱり使えないんだ」


「違いますわ!」


アンジュは必死に言い返す。


「これは選ばれた者にしか扱えない神剣なんですの!」


ベルが真顔で聞く。


「アンジュさん選ばれてないの?」


リックが横でぼそっと言う。


「一応、所有者ではあるんですけどね」


バロムが付け加える。


「……抜けない」


アンジュが叫んだ。


「今はまだその時ではないだけですわ!!」


その後――。


テーブルでは、ベルとミリィ、それにリックとバロムが今後の方針について話し合っていた。


「神殿騎士があそこまで来ていたとなると、この辺りも長くは安全じゃありませんね」

リックが静かに言う。


ベルはうなずいた。


「うん……たぶん、すぐに動いた方がいいと思う」


ミリィも小さく頷く。


「街道を使うのは危ないかもしれません……」


話しながらも、4人は時折ちらりと視線を店の奥へ向ける。


そこには――


壁を向いたまま、膝を抱えて座り込んでいるアンジュの背中があった。


完全にいじけている。


そして、なぜか小声で話していた。


「ママ……誰も信じてくれないの……」


少し間。


「うん、そう……うんうん……でもね……」


さらに小さく頷く。


「わかってる……いつでも笑顔でがんばる……」


ベルが真顔で呟いた。


「……怖いんですけど」


リックが苦笑する。


「放っておけばそのうち戻ってきますよ」


バロムが静かに言った。


「……いつもの」


ミリィが心配そうに聞く。


「本当に……大丈夫なんですか?」


リックは軽く肩をすくめた。


「ええ。リーダーはああ見えて、立ち直りだけは異常に早いので」


その瞬間――


アンジュが勢いよく立ち上がった。


くるっと振り向く。


「ーーーどうやら来たようですわ」



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