英雄の行方ー
翌朝。
ミリィとベルが研究室を訪ねると、そこにハーミットとタブラスカの姿はなかった。
代わりに、職員が一通の手紙を差し出す。
王室と研究室は、王子であり重要機密施術者であるタブラスカ=プレレッサが消えたことで慌ただしく動き回っていた。
ベル達が何を尋ねても、返ってくるのは曖昧な言葉ばかりで、誰もまともに答えてはくれなかった。
仕方なく、手紙だけを受け取って研究室を後にする2人。
街の喧騒の中、静かなカフェへと足を運ぶ。
窓際の席に腰を下ろし、ベルが封を切った。
中から現れた紙には――
(※ユーザー設定の人物名はそのまま使用します)
カフェの窓際、手紙を読み終えたベルは、しばらく黙ったままだった。
その内容は――
タブラスカは目を覚ましたが、極度の混乱状態にあること。
このまま研究室に置いておくのは危険と判断し、ハーミットが彼を連れ出したこと。
そして、安全な場所で鎮静化の方法を探すため、別の国の研究室へ向かうこと。
「心配するな」とだけ、簡潔に記されていた。
さらに、もしベルの“二人”を分ける方法が見つかれば連絡する、と。
最後には――
「もうあんな方法で自分を犠牲にしたりはしない。これからはしっかり手綱を引く」
そう締めくくられていた。
そして、手紙の隅。
馬に乗ったハーミットらしき、少し不格好なイラスト。
ベルはそれを見て、ぽつりと呟く。
「ハーミット……絵心ないなぁ……」
ミリィと視線が合う。
二人は同時に、苦笑した。
けれど、その苦笑はどこか安心したようなものでもあった。
「何か頼もっか」
ベルの言葉に、ミリィが小さく頷く。
そのとき――
ベルがふいに手を挙げる。
「すいませーん!」
呼びかけたその左手。
光を受けて、4つの指輪が静かに輝いていた。
その光は、さきほどまでの重さをわずかに振り払い、次へ進むための小さな合図のように見えた。
英雄になることを使命と考えていた青年は、こうして英雄となった。
だが、それは思い描いていた理想とは、あまりにもかけ離れた形だった。
そしてその英雄は、魔王殺しによって止められた。
その影で何が失われたのかを、誰も知らないままに。
――カフェの扉が静かに開く。
店内に入ってきたのは、アダラとビビだった。
ベルとミリィの座るテーブルへと歩み寄る二人。
これからの目的地について話を詰めるために。
次に向かう先は――
同じ西大陸に存在する国。
――カダブランカ王国。
新たな舞台が、静かに幕を開けようとしていた。




