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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第9章『西大陸篇』ー
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姫神VS英雄ー

斬り落とされた腕が床に転がり、血が遅れて広がっていく。


その光景を、誰もが一瞬理解できなかった。


「べ、ベルさーーーんっ!いやぁっっっっ!?」


ミリィの絶叫が、広間に鋭く響き渡る。


アダラの目が見開かれる。


「…折れ、ただと!?」


信じられないものを見るように、砕けた刃の残骸へと視線が向く。


ビビもまた、いつもの調子を崩し、言葉を失いかけながら呟く。


「わたしの〜英雄召喚にも耐えた、のに〜!?」


それは“壊れない前提”だった。


だからこそ、今起きた現実が異常すぎる。


ハーミットだけが、冷静に状況を見ていた。


だがその声は、わずかに低く沈んでいる。


「…それより、まずいわね」


視線はベルへ。


「左手が…」


そこにはもう、何もない。


溢れ出る血だけが、現実を突きつけていた。


床に膝をついたまま、ベルは荒い呼吸を繰り返す。

肩口から噴き出していた血が、なおも止まらない。


「イバラキ…頼んだ」


応えるように、傷口から茨の蔦が這い出す。

生き物のようにうねりながら、断面へと絡みつき、強引に縛り上げていく。


肉を締め、血を押さえ込む。


「サンキュー…」


かすれた声が漏れる。


左肩を押さえたまま、ベルは片膝をつく。

額から脂汗が流れ落ち、視界がわずかに揺れる。


「こいつぁ…たまらなく痛ぇな」


無理やり笑うが、その呼吸は明らかに乱れていた。


タブラスカは静かにそれを見下ろす。


「我剣はすでに始剣は音速を超え、終剣も極まりつつある。もはや避けようがないと思え」


淡々とした宣告。


ベルは顔を上げ、歯を見せる。


「どーやら…そうみてぇだな」


一拍、息を吐く。


「まさか…カタナの刃が折れるとは、思ってもなかったぜ」


砕けた刃の感触が、まだ腕に残っている。


了解です、この流れに合わせて小説として整えます。



タブラスカは静かにベルを見下ろし、わずかに口を開いた。


「貴様の姫神とやら、出してみるがいい」


その声には余裕と、確信があった。


ベルは即座には答えない。


肩口を押さえたまま、ただタブラスカを見返す。


「……」


タブラスカは続ける。


「魔王を倒しているのは貴様ではなく、使役する姫神と聞いた。見せてみろ」


挑発でも、命令でもない。


ただ“確認”するような言葉。


ベルは――


その言葉を聞いて、笑った。


「いいのかよ?後悔すると思うぜ」


軽い口調。


だが、その奥には確かな意志がある。


タブラスカは微動だにしない。


「英雄に後悔などない」


即答だった。


迷いも、揺らぎもない。


ベルは一度、息を吐く。


そして――


右手をゆっくりと持ち上げた。


指を、開く。


「だったらー……」


空気が張り詰める。


周囲の全てが、その瞬間を待っているかのように静止する。


ベルは、はっきりと叫んだ。


「出てこい!カレン!」


――その声と同時に。


世界が、軋んだ。


ベルの右手が、ゆっくりと掲げられる。


指が開かれる。


「出てこい!カレン!」


その声が落ちた瞬間――


世界が、息を呑んだ。


空間が裂ける。


音もなく、しかし確かに。


そこに“裂け目”が生まれると同時に――


光が溢れ出す。


眩い、しかし荒々しさのない光。


まるで夜明けそのものが形を持ったかのように、空間を満たしていく。


そして――


その光の中から、一つの“存在”が現れる。


白金の長髪。


滑らかに、流れるように揺れながら現れるその髪は、まるで光を編んで作られたかのように美しい。


額には、一本の角。


七色の輝きを宿したそれは、見る角度によって異なる光を放ち、神秘と威厳を同時に宿している。


瞳は金。


しかしその輝きは、宝石ではない。


“力”そのものを映した光。


さらに――


衣。


鬼の姫神にふさわしい、華やかで、そして気品に満ちた和装。


風もないのに、その裾がふわりと揺れる。


それはまるで――


世界が彼女にひれ伏しているかのようだった。


カレン。


その存在は、ただ現れるだけで場を変える。


空気が変わる。


重さが変わる。


“格”が変わる。


広間の全てが、彼女の登場を受け入れるかのように静まり返る。


そして――


ゆっくりと。


優雅に。


カレンは、その場に降り立つ。


音もなく、乱れもなく。


まるで舞うように。


着地と同時に、微かな衝撃だけが走る。


それだけで――


床に細かなひびが広がった。


だがそれすらも、美しさの一部のように思わせるほどに。


そして。


その場に在るのが当然であるかのように――


カレンはベルへと視線を向ける。


くつくつと、楽しげに笑いながら。


「……主様」


その一言は、親しみを伴いながら自然に落とされた。


この場において、そう呼ばれるのはただ一人。


ベルだけ。


カレンの笑みが深くなる。


「妾を呼ぶ時は――」


少しだけ、悪戯っぽく目を細める。


「もっと早く呼んで欲しいものじゃな」


そして。


そのまま視線をわずかに横へ流す。


タブラスカ。


空気が、変わる。


笑みはそのまま。


だが、その奥にある“質”が変わる。


楽しげに、しかし明確に――


“獲物を見る目”へ。


「……ほぉ」


低く、嬉しそうに呟く。


「面白い相手がおるのう」


七色の角が、淡く強く輝いた。


了解しました、その前提はしっかり重要ですね。


その情報を踏まえると、ビビの反応は「初めての姫神に対する純粋な感動」ではなく、

**“一度姫神を知っている上で、それを超えてくる存在への驚き”**になります。


そのニュアンスで修正します。


ミリィの呼吸が止まる。


「……あれが……姫神...カレンさん……」


ただ見ることしかできない圧。


その存在の“重さ”に、言葉が追いつかない。


アダラが低く呟く。


「……これが、姫神……」


理解している者の声。


それでもなお、想定のさらに上を突き抜けている。


ビビは、目を細める。


一度、ゆっくりと息を吐いた。


「前に戦った姫神とまた違うんだ〜?」


ぽつりと漏れる言葉。


かつて戦い、敗北した姫神。


その記憶を踏まえた上で――


「……やっぱ格が違う〜……」


驚きではない。


確信に近い、冷静な判断。


そして、その奥にわずかな戦慄。


「紋様術じゃ〜……届かないね〜……」


ハーミットが眼鏡を押し上げる。


「ええ……」


静かな声。


だがその視線は、鋭くカレンを捉えている。


「これが...姫神...」


四人の視線が、ただ一点に集まる。


白金の髪を揺らす、鬼の姫神。


カレン。


その存在を前にして――


全員が理解する。


“今、この戦いは完全に別物になった”と。


ハーミットは、わずかに目を細める。


「……“理解”なんて、できるわけがないわね」


静かな声。


「けど……見ればわかる」


カレンを見据えたまま。


「“あれ”は、私たちが扱う理屈の外側にいる」


一呼吸置いて――


「分析する意味すら、薄いレベルでね」


その言葉に、重みが宿る。


了解しました。流れをそのまま引き継いで、カレンの感情の変化をしっかり乗せて書き直します。



カレンは、ゆっくりと目を細めた。


ベルの右手が上がり、自分が呼び出された――その事実に、わずかな喜びが滲む。


くすり、と笑う。


そして、軽く流し目を送る。


「やはり、主様は妾を――」


言葉が、途中で途切れる。


視線が――


落ちる。


ベルの左肩。


そこに、本来あるべきものがない。


血。


途切れた腕。


床に滴るそれを見た瞬間――


カレンの表情が、止まる。


次の瞬間。


笑みが、消えた。


「……」


空気が変わる。


軽さが、一切なくなる。


七色の角が、淡く――しかし確実に強く輝き始める。


「……なぜじゃ」


低く、押し殺した声。


一歩、踏み出す。


床がわずかに軋む。


「なぜ……」


さらに一歩。


圧が増す。


「主様の腕が――」


声に、明確な揺れが混じる。


怒り。


そして、それ以上に――


理解できないという感情。


「――取れておるのじゃ」


視線が、鋭くタブラスカへ向く。


その瞬間。


空気が一変した。


先ほどまでの余裕も、いたずらも、消えている。


あるのはただ一つ。


“怒り”。


そして――


殺意。


カレンは静かに口を開く。


「……誰じゃ」


声は低く、重い。


「妾の主様に――」


一拍。


空間が張り詰める。


「何をしたのじゃ」


その一言で――


広間の空気が、完全に凍りついた。






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