そしてプレレッサとー
ハーミットは視線をわずかに伏せ、静かに言葉を落とす。
「わかっているわ。自分たちの愚かさは、私自身、痛いほどに」
その声音には、責任と後悔が滲んでいた。
ミリィは不安げに目を向ける。
「…ハーミットさん」
ハーミットはゆっくりと顔を上げ、現実を受け入れるように言葉を続けた。
「それでもこうなってしまった現実は変わらないわ」
その言葉に、場の空気がさらに重く沈む。
アダラは歯を食いしばり、怒りを抑えきれないまま声を荒げる。
「開き直りかよ!タブラスカは私たちにとっては…本当に..、本当に偉大な英雄なんだ…それをそんな風に…タブラスカがかわいそうだ」
その瞳から、堪えていたものが溢れ出す。
涙が頬を伝い、怒りと悔しさが混ざり合う。
ビビもまた、珍しく険しい表情を浮かべ、強い意志を宿した声を落とす。
「ごめん〜私もそれは〜許せない〜」
ハーミットは二人の言葉を正面から受け止めるように、静かに続けた。
「批判も非難も承知の上です。断罪も甘んじて受けましょう。でも今は事実を受け止めて」
重い沈黙の中、ベルが低く問いかける。
「あいつを…タブラスカを元に戻すことは可能なのか?」
その問いに、ハーミットはわずかに間を置き、はっきりと答えた。
ハーミットは静かに息を整え、はっきりと言い切る。
「元に戻すことは…不可能です」
その一言が落ちた瞬間、ベルはわずかに視線を落とし、重く沈黙した。
ハーミットは構わず続ける。
「本来の予測では、彼の中の英雄タブラスカが現出するのは、数年先のはずだったの」
ミリィが不安げに問いかける。
「…それがどうして?」
ハーミットの視線が、まっすぐベルへと向けられる。
そして、はっきりと指を差した。
「あなたよ。魔王殺し」
突然の指摘に、ベルは目を上げる。
「俺?」
ハーミットは表情を崩さないまま言葉を続けた。
「あなたとの戦いで、想定以上に能力を振るったプレレッサは…私の推測より早く、英雄核が活性化、それにより加速したと仮定しています」
一拍置いて、静かに補足する。
「ただし、あくまで憶測に過ぎないけど」
ベルは何かを思い出したように、軽く手を打つ。
「あーそうだ!俺、この戦いが終わったら、どちみちお前らの国に行くよ」
その言葉に、アダラとビビが同時に顔を見合わせる。
「ついにその気になったか!」
ビビは肩を揺らしながら、からかうように笑う。
「や〜だ〜だいた〜ん」
ベルは軽く首を振り、話の本題へと戻る。
ベル「いやいや、そーじゃなくて、あと2人いるんだろ?魔王核のやつ」
その言葉に、ビビは目を丸くするように反応する。
「あ〜約束覚えてくれてたの〜?」
ベルは即座に頷く。
「ったりめぇじゃん」
アダラは満足げに笑い、胸を張る。
「そりゃー私からもお願いするよ!礼は期待していいぞ」
ビビも柔らかく笑みを浮かべ、軽やかに応じる。
「そうだね〜たっぷりお礼するね〜!」
そのやり取りに割って入るように、ミリィが一歩前へ出る。
2人とベルの間に立ち、まっすぐな視線で言い切った。
「私も、行きますから!」
ハーミットはわずかに肩を落とし、周囲の空気に視線を巡らせる。
「…この時折ピンクな雰囲気になるの、どうにかならないの?」
ベルは肩をすくめ、呆れたように答える。
「この2人がいるからなぁー…」
ミリィは少し頬を染めながらも、真っ直ぐに言い切った。
「ベルさんがいる限りは…」
ハーミットは周囲の空気を一度整えるように、静かに息を吐いた。
「もう一つ確認したいのだけれど、タブラスカとは魔王殺しが戦うということでよいのかしら?」
ベルは迷いなく頷く。
「おう。俺が1人で戦う。それは譲れねぇ」
その言葉に、アダラが勢いよく口を開く。
「そうだな。新旧英雄決戦になるかもだしな!」
ビビは拳を握り、興奮を抑えきれない様子で声を上げる。
「うぅ〜っ!燃える〜!」
ハーミットはその様子を見てから、真剣な表情でベルへと視線を戻した。
「だったらお願いがあるわ」
ベルは軽く笑いながら応じる。
「なんだよ。言われなくても勝つつもりだぜ」
しかしハーミットは静かに首を左右に振る。
「勝たなくてもいいわ。ただ、絶対に止めて欲しいの」
その言葉に、ベルの表情がわずかに変わる。
「止めるって…お前」
問い返すベルを、ハーミットは真っ直ぐに見据え、ただ視線で答えた。
ハーミットは一歩踏み出し、静かに言葉を続けた。
「勝つ事が目標ではなく、止めることを最優先にして。お願い」
ベルはわずかに目を細め、即答を避けることなく言い切る。
「それは…ちょっと約束出来ねぇな」
その言葉に、空気が一瞬張り詰める。
ハーミットは眉をわずかに動かし、低く言葉を返した。
「…これは遊びじゃないのよ」
ベルもまた視線を逸らさない。
「こっちだって本気だ」
両者の間に、張り詰めた緊張が横たわる。
ハーミットは静かに首を振り、言葉を重ねた。
「どっちが強いとか、倒したとか、そんなことはどっちでもいいの。とにかく彼を止めないと」
ベルが何か言いかけた、その言葉を受けるようにアダラが口を開く。
「魔王殺し、それしかねぇよ。きっとな」
続いて、ビビも穏やかな声で頷く。
「わたしもそ〜思うよ。わたしの時みたいには〜うまくいかないと思う〜」
ベルは一歩も引かず、はっきりと言い切る。
「いや、俺は諦めない」
その強い意志に、ハーミットの表情が険しく歪む。
「あなた!わかってるの!?」
ベルは即座に食い気味に返す。
「知らねぇよ!わかってるかどうかなんてな!」
空気が張り詰める中、ハーミットは苛立ちを抑えきれず、爪を噛みながら鋭く睨み返す。
その視線を正面から受け止めながら、ベルは一歩も退かない。
「だがな、やれるかどうかじゃねぇ!俺はやる!そんだけだ!」
その言葉は迷いなく、ただ前へ進む意思だけを宿していた。
ミリィはその背中を見つめ、小さく息をのむ。
「ベルさん…」
了解しました。修正します。
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「とりあえず、そろそろ30分は経ったろ。行こうぜ」
ベルはそう言うと、重さを振り払うように立ち上がり、大きく背伸びをする。
張り詰めていた空気がわずかに緩み、その動きに呼応するようにビビとアダラもそれぞれ立ち上がり、肩や脚を伸ばして身体をほぐした。
「おまえらは戦わないだろ?」
軽く投げかけるような問いに、アダラは肩をすくめて笑う。
「何があっかわかんねぇしなー」
ビビは柔らかく笑いながら、少し崩れた言い方で応じる。
「そなえあればうれ〜なし〜!」
ベルはそのやり取りに小さく笑い、肩の力を抜く。
「そうかよ」
そのとき、ミリィがそっとベルの裾を引いた。
ベルが気づいて少し身をかがめると、ミリィはさらに顔を近づけ、周囲に聞こえないようにそっと耳元へ口を寄せる。
ミリィの小さな声が、静かに届く。
「勝って、ください」
ベルは一瞬だけ目を見開き、それからすぐに口元を緩める。
ベルは小さく笑い、力強く答えた。
「おう!見とけ!」
ベルは肩を回しながら、ハーミットへと視線を向ける。
「とりあえず、俺を信じて任せてくれよ」
ハーミットは何も言わずに見返す。その瞳には、わずかな怒りが滲んでいた。
沈黙が一瞬だけ場を支配する。
やがてベルが空気を断ち切るように声を上げる。
「よし!行くか」
その一言を合図に、ベルを先頭に一同が部屋を後にする。足音が重なり、通路へと消えていく。
しかし、最後までその場に残っていたハーミットは、動かずにただ見送っていた。
そして静かに、言葉を落とす。
「魔王殺し」
その声に呼ばれるように、ベルは足を止める。
ゆっくりと振り返り、ハーミットへと視線を向けた。
「プレレッサよ」
「プレ…?なに?」
ベルの問いに、ハーミットは言葉を重ねる。
「プレレッサ・オンリー。それが、擬似英雄となってしまった彼の、本当の名よ」




