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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第9章『西大陸篇』ー
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そしてプレレッサとー

ハーミットは視線をわずかに伏せ、静かに言葉を落とす。


「わかっているわ。自分たちの愚かさは、私自身、痛いほどに」


その声音には、責任と後悔が滲んでいた。


ミリィは不安げに目を向ける。


「…ハーミットさん」


ハーミットはゆっくりと顔を上げ、現実を受け入れるように言葉を続けた。


「それでもこうなってしまった現実は変わらないわ」


その言葉に、場の空気がさらに重く沈む。


アダラは歯を食いしばり、怒りを抑えきれないまま声を荒げる。


「開き直りかよ!タブラスカは私たちにとっては…本当に..、本当に偉大な英雄なんだ…それをそんな風に…タブラスカがかわいそうだ」


その瞳から、堪えていたものが溢れ出す。

涙が頬を伝い、怒りと悔しさが混ざり合う。


ビビもまた、珍しく険しい表情を浮かべ、強い意志を宿した声を落とす。


「ごめん〜私もそれは〜許せない〜」


ハーミットは二人の言葉を正面から受け止めるように、静かに続けた。


「批判も非難も承知の上です。断罪も甘んじて受けましょう。でも今は事実を受け止めて」


重い沈黙の中、ベルが低く問いかける。


「あいつを…タブラスカを元に戻すことは可能なのか?」


その問いに、ハーミットはわずかに間を置き、はっきりと答えた。


ハーミットは静かに息を整え、はっきりと言い切る。


「元に戻すことは…不可能です」


その一言が落ちた瞬間、ベルはわずかに視線を落とし、重く沈黙した。


ハーミットは構わず続ける。


「本来の予測では、彼の中の英雄タブラスカが現出するのは、数年先のはずだったの」


ミリィが不安げに問いかける。


「…それがどうして?」


ハーミットの視線が、まっすぐベルへと向けられる。

そして、はっきりと指を差した。


「あなたよ。魔王殺し」


突然の指摘に、ベルは目を上げる。


「俺?」


ハーミットは表情を崩さないまま言葉を続けた。


「あなたとの戦いで、想定以上に能力を振るったプレレッサは…私の推測より早く、英雄核が活性化、それにより加速したと仮定しています」


一拍置いて、静かに補足する。


「ただし、あくまで憶測に過ぎないけど」



ベルは何かを思い出したように、軽く手を打つ。


「あーそうだ!俺、この戦いが終わったら、どちみちお前らの国に行くよ」


その言葉に、アダラとビビが同時に顔を見合わせる。


「ついにその気になったか!」


ビビは肩を揺らしながら、からかうように笑う。


「や〜だ〜だいた〜ん」


ベルは軽く首を振り、話の本題へと戻る。


ベル「いやいや、そーじゃなくて、あと2人いるんだろ?魔王核のやつ」


その言葉に、ビビは目を丸くするように反応する。


「あ〜約束覚えてくれてたの〜?」


ベルは即座に頷く。


「ったりめぇじゃん」


アダラは満足げに笑い、胸を張る。


「そりゃー私からもお願いするよ!礼は期待していいぞ」


ビビも柔らかく笑みを浮かべ、軽やかに応じる。


「そうだね〜たっぷりお礼するね〜!」


そのやり取りに割って入るように、ミリィが一歩前へ出る。


2人とベルの間に立ち、まっすぐな視線で言い切った。


「私も、行きますから!」


ハーミットはわずかに肩を落とし、周囲の空気に視線を巡らせる。


「…この時折ピンクな雰囲気になるの、どうにかならないの?」


ベルは肩をすくめ、呆れたように答える。


「この2人がいるからなぁー…」


ミリィは少し頬を染めながらも、真っ直ぐに言い切った。


「ベルさんがいる限りは…」


ハーミットは周囲の空気を一度整えるように、静かに息を吐いた。


「もう一つ確認したいのだけれど、タブラスカとは魔王殺しが戦うということでよいのかしら?」


ベルは迷いなく頷く。


「おう。俺が1人で戦う。それは譲れねぇ」


その言葉に、アダラが勢いよく口を開く。


「そうだな。新旧英雄決戦になるかもだしな!」


ビビは拳を握り、興奮を抑えきれない様子で声を上げる。


「うぅ〜っ!燃える〜!」


ハーミットはその様子を見てから、真剣な表情でベルへと視線を戻した。


「だったらお願いがあるわ」


ベルは軽く笑いながら応じる。


「なんだよ。言われなくても勝つつもりだぜ」


しかしハーミットは静かに首を左右に振る。


「勝たなくてもいいわ。ただ、絶対に止めて欲しいの」


その言葉に、ベルの表情がわずかに変わる。


「止めるって…お前」


問い返すベルを、ハーミットは真っ直ぐに見据え、ただ視線で答えた。


ハーミットは一歩踏み出し、静かに言葉を続けた。


「勝つ事が目標ではなく、止めることを最優先にして。お願い」


ベルはわずかに目を細め、即答を避けることなく言い切る。


「それは…ちょっと約束出来ねぇな」


その言葉に、空気が一瞬張り詰める。

ハーミットは眉をわずかに動かし、低く言葉を返した。


「…これは遊びじゃないのよ」


ベルもまた視線を逸らさない。


「こっちだって本気だ」


両者の間に、張り詰めた緊張が横たわる。


ハーミットは静かに首を振り、言葉を重ねた。


「どっちが強いとか、倒したとか、そんなことはどっちでもいいの。とにかく彼を止めないと」


ベルが何か言いかけた、その言葉を受けるようにアダラが口を開く。


「魔王殺し、それしかねぇよ。きっとな」


続いて、ビビも穏やかな声で頷く。


「わたしもそ〜思うよ。わたしの時みたいには〜うまくいかないと思う〜」


ベルは一歩も引かず、はっきりと言い切る。


「いや、俺は諦めない」


その強い意志に、ハーミットの表情が険しく歪む。


「あなた!わかってるの!?」


ベルは即座に食い気味に返す。


「知らねぇよ!わかってるかどうかなんてな!」


空気が張り詰める中、ハーミットは苛立ちを抑えきれず、爪を噛みながら鋭く睨み返す。


その視線を正面から受け止めながら、ベルは一歩も退かない。


「だがな、やれるかどうかじゃねぇ!俺はやる!そんだけだ!」


その言葉は迷いなく、ただ前へ進む意思だけを宿していた。


ミリィはその背中を見つめ、小さく息をのむ。


「ベルさん…」


了解しました。修正します。



「とりあえず、そろそろ30分は経ったろ。行こうぜ」


ベルはそう言うと、重さを振り払うように立ち上がり、大きく背伸びをする。

張り詰めていた空気がわずかに緩み、その動きに呼応するようにビビとアダラもそれぞれ立ち上がり、肩や脚を伸ばして身体をほぐした。


「おまえらは戦わないだろ?」


軽く投げかけるような問いに、アダラは肩をすくめて笑う。


「何があっかわかんねぇしなー」


ビビは柔らかく笑いながら、少し崩れた言い方で応じる。


「そなえあればうれ〜なし〜!」


ベルはそのやり取りに小さく笑い、肩の力を抜く。


「そうかよ」


そのとき、ミリィがそっとベルの裾を引いた。


ベルが気づいて少し身をかがめると、ミリィはさらに顔を近づけ、周囲に聞こえないようにそっと耳元へ口を寄せる。


ミリィの小さな声が、静かに届く。


「勝って、ください」


ベルは一瞬だけ目を見開き、それからすぐに口元を緩める。


ベルは小さく笑い、力強く答えた。


「おう!見とけ!」


ベルは肩を回しながら、ハーミットへと視線を向ける。


「とりあえず、俺を信じて任せてくれよ」


ハーミットは何も言わずに見返す。その瞳には、わずかな怒りが滲んでいた。


沈黙が一瞬だけ場を支配する。


やがてベルが空気を断ち切るように声を上げる。


「よし!行くか」


その一言を合図に、ベルを先頭に一同が部屋を後にする。足音が重なり、通路へと消えていく。


しかし、最後までその場に残っていたハーミットは、動かずにただ見送っていた。


そして静かに、言葉を落とす。


「魔王殺し」


その声に呼ばれるように、ベルは足を止める。


ゆっくりと振り返り、ハーミットへと視線を向けた。


「プレレッサよ」


「プレ…?なに?」


ベルの問いに、ハーミットは言葉を重ねる。


「プレレッサ・オンリー。それが、擬似英雄となってしまった彼の、本当の名よ」

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