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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第9章『西大陸篇』ー
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ダンジョン攻略、前日ー

夕食の席。


砂漠の夜は冷え込み、焚き火の光が揺れている。


ベル、ミリィ、ハーミット、アダラ、ビビ――5人が輪になって座っていた。


アダラが、皿を片手に頬杖をつく。


「プレレッサ……何度か顔を合わせたことはあるけど……」


少しだけ視線を落とし、思い出すように呟く。


「そっかぁ、そんなことになってんのか」


ビビは、軽く肩を揺らしながら微笑む。


「ククルカナンの噂は聞いていたけれど〜」


「そこまでやっちゃってるなんてね〜」


ベルが、まっすぐに二人を見る。


「だから、私たち、彼を止めたいの」


その言葉に、アダラはあぐらをかいた膝をピシャリと叩く。


「よっし!」


「私らも一緒に行く!」


ビビも、少し首を傾けながら軽く頷く。


「ん〜そだね〜」


ベルが、思わず身を乗り出す。


「え?いいの!?」


アダラは、少しだけ目を細めてベルを見る。


「だってあんたらに任せても……心配だし」


ぶっきらぼうだが、そこには明確な意思があった。


ビビも、柔らかく続ける。


「ん〜」


「ちょ〜っと、戦い向きじゃないもんね〜」


ミリィが小さくうなずく。


「……たしかに」


ハーミットが静かに口を開く。


「アダラ王女とビビ、噂は聞いてますわ」


「ご尽力、感謝します」


アダラは手をひらひら振る。


「気にすんなって」


そして、少しだけ真面目な顔になる。


「西大陸の英雄が絡んでるとなると……」


ビビが、焚き火を見つめながら続ける。


「ほっとけないもんね〜」



朝。


キャンプは静かに動き出していた。


焚き火は消され、天幕は順に畳まれていく。


荷物をまとめる武装集団たちの動きは無駄がない。


ラクダがゆっくりと起き上がり、鼻を鳴らした。


アダラが手早くその背に乗る。


「さっさと行くぞ」


ビビも慣れた手つきで後ろに乗る。


「〜準備はできてるよ〜」


ハーミットは最後に周囲を確認し、短く頷いた。


「出発するわ」


ベルとミリィもそれぞれのラクダに乗り込む。


列が整う。


風が砂を撫で、静かに吹き抜けていく。


そのまま一行は、砂漠の道へと進み出した。




強い日差しの下、砂漠の王都ククルカナンは普段通りの喧騒に包まれていた。


白い石造りの街並みの中を、ハーミットが迷いなく歩いていく。


アダラとビビ、ベルとミリィもその後に続く。


ハーミットは一度も立ち止まることなく、王都の通りを抜けていくと、建物の並ぶ一角へと入った。


その先にあるのは、研究機関の施設。


重厚な扉の前で足を止めると、ハーミットは鍵を取り出し、慣れた手つきで扉を開ける。


「ここが私の研究室よ」


中に入ると、整然と並べられた書架と、各種の器具が目に入る。


机の上には資料が積まれ、壁には地図や図面が貼られていた。


外の喧騒が嘘のように静かな空間だ。


ハーミットは奥の机に向かい、軽く手を置く。


「必要な準備はここで整えられるわ。情報も、装備もね」


アダラが部屋を見回しながら言う。


「なるほどな。こういうとこか」


ビビも柔らかく微笑む。


「〜落ち着く場所だね〜」


ベルは静かに周囲を見渡し、小さく頷いた。


「……ここなら、動きやすい」


ハーミットは短く頷く。


「ええ。ここを拠点にして動くわ」


王都の中で、一行の足場が整った。


ハーミットが地図の上に指を滑らせ、淡々と告げる。


「陵墓へは王都から半日もあれば着けるから、今日中に準備をして、今夜か明日の朝に出発としましょう」


ベルは小さく手を挙げ、迷いのない声で応じた。


「あ、じゃあ今夜で……」


その瞬間、鋭い声が割り込む。


「待てっ! お前、魔王殺しに丸投げする気だろ?」


アダラが眉を吊り上げ、ベルを睨みつける。対してビビは頬を膨らませながら、羨ましそうに身を乗り出した。


「い〜な〜! 変わってもらえてずるい〜!」


二人の視線を受けて、ベルは少しだけ困ったように笑う。


「えへへ」


ミリィが不安げに視線を巡らせながら、小さく口を開く。


「今夜出発なら……」


ハーミットは短く頷き、手元の地図を軽く叩いた。


「そうね。早めに準備をして、一旦仮眠をとった方が得策ね」


落ち着いた提案に、場の空気が整いかけたその時、ベルがあっさりと首を振る。


「あ、私は大丈夫」


その一言に、アダラが即座に噛みついた。


「やっぱ押し付ける気じゃん」


さらにビビが羨望を隠さず声を重ねる。


「いいな〜いいな〜」


ハーミットが淡々と視線を巡らせ、指先で眼鏡のブリッジを押し上げる。


「では確認です。私ハーミットと、ベルさん……その頃には魔王殺し、そしてアダラ姫、ビビさんの四名で陵墓に向かいます」


一瞬の間のあと、ビビがぱっと両手を広げて声を弾ませた。


「わ〜ぉ! ハーレムだね!」


すかさずアダラが肩をすくめ、にやりと笑う。


「こりゃー何が起きても仕方ないな!」


ビビも悪びれる様子なく、くすくすと笑いながら頷いた。


「そうだね〜。仕方ない仕方ない〜」


そのやり取りに、ベルは眉をひそめる。


「え? 大丈夫? また何か企んでないよね?」


返事は、ハーミットの静かな一言だった。


「そうね。仕方ないでしょう」


きっぱりと言い切られ、ベルは思わず身を引く。


「ちょっと……ほんとにやめてよ」


ミリィはそっと右手を挙げ、控えめに声を落とした。


「や、やっぱり心配なので私も行ってもいいですか?」


その不安げな申し出に、アダラは軽く笑い飛ばすように肩を叩く。


「安心しろ! なるようになるだけだ!」


ビビも無邪気に笑いながら、何でもないことのように言い放った。


「ミリィがいてもいなくても〜やるときはやるから〜大丈夫〜」


ミリィはその場で固まり、困惑したまま小さく呟く。


「……全然だいじょばないのですが……」


ベルは小さく身を乗り出し、ミリィと視線を合わせる。


「あ、ちょっと……私も不安なんだけど……」


その言葉に、ミリィは同じように不安げな表情を浮かべたまま、小さくうなずいた。


その間に、ハーミットは冷静に言い切る。


「安心なさい。私がいるから」


だがベルは、わずかに眉をひそめて首を傾げた。


「ハーミットはハーミットで心配なんだけど……」


その直後、アダラとビビが妙に息の合った動きで手を合わせる。


「西大陸ー! おー!」


「お〜!」


場の空気が一気に置き去りにされ、ベルは思わず二人を見つめたまま固まった。


ハーミットが軽く視線を巡らせ、静かに問いかける。


「出立前に入浴したい人いる? 浴場もあるけれど」


ベルがすぐに手を挙げる。


「あ、私は入りたいかも」


ビビも楽しそうに身を揺らした。


「じゃ〜私も〜」


アダラは腕を組み、にやりと笑う。


「みんなで入ろうぜ!」


和やかな空気が広がる中、ハーミットが確認する。


「ええと、それじゃ今から入る?」


ベルが頷きかけた、その時――。


「待て待て! 少しでもきれいなままがいいから、夕方にしよう!」


アダラが素早く口を挟む。ビビも同調するように笑う。


「そだね〜それがいいよ〜」


ベルは一瞬納得しかけたが、すぐに表情を曇らせた。


「確かにその方がいいんだけど、夕方だと私の時間があまり……」


その言葉に、アダラとビビがそろって意味ありげにニンマリとする。


「……っ」


ベルの背筋に小さな違和感が走る。


「はっ!」


気付いた瞬間、迷いは消えた。


「今すぐ入らせてもらいます」


アダラが肩を落とす。


「ちぇー」


ビビも残念そうに息を吐いた。


「おしかったね〜」


ハーミットは眼鏡を指で押し上げ、納得したように小さく頷く。


「あぁ、そういうこと」


その様子を見ていたミリィが、そっと手を挙げる。


「やっぱりついていって、いいですか?」


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