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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
籠の中の鳥ー
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シスターアリスの気遣いー

「なんだよこれーどうしたんだ?」


金髪の少女が、鳥かごの中を覗き込みながら言う。


黒髪の少女は少しだけ視線をそらしながら、答えた。


「旅の行商人さんが、安く譲ってくれて。それでー」


金髪の少女は、興味深そうに小鳥を見つめる。


「へーいいじゃん!かわいい!でも……」


その視線は、かごの中の小鳥へと注がれたまま。


小さく、弱々しいその姿。


黒髪の少女は頷いた。


「うん、弱ってるから、まずは暖めたらいいのかな?って」


その言葉を聞いた瞬間、金髪の少女は何かを決めたように動いた。


自分の上着をさっと脱ぎ、それを鳥かごの上に掛ける。黒髪の少女が掛けた上着の上から、重ねて掛ける。


同じく白いインナー姿になり、少し寒さに震えるのを我慢する。


布がかごを覆い、冷たい空気を遮る。


そしてそのまま、寒さに少し肩を震わせながらも、笑って言った。


「これで少しはマシだな」


その様子を見て、黒髪の少女は思わず小さく笑った。


やわらかく、少しだけ安心したような笑みだった。


承知いたしました。ご指定どおり続けます。



窓際。


二人の少女は並んで立ち、鳥かごを見つめていた。


布の下で、小さな気配がかすかに揺れている。


淡いオレンジ色の命。


そのかすかな存在を、二人はじっと見守っていた。


「なぁこれ、大丈夫かなぁ?」


金髪の少女が、不安そうに呟く。


黒髪の少女は、視線を落としたまま、小さく答えた。


「わかんない。心配…」


短い言葉だったが、その声には隠しきれない想いが滲んでいる。


少しの沈黙。


そして、金髪の少女が顔を上げた。


「シスターに聞いてみよっか!」


その一言に、黒髪の少女の表情がぱっと明るくなる。


迷いがほどけたように、顔を上げた。


「うん!」


二人の視線が、もう一度鳥かごへと向けられる。


小さな命は、まだそこにあった。


それを確かめるように、黒髪の少女は一歩だけ後ろに下がる。


そして、金髪の少女と目を合わせた。


次に向かう場所は、もう決まっていた。


承知いたしました。続けます。



鳥かごをそっと窓際に残し、二人は部屋を出た。


孤児院は狭く、部屋と呼べるものも限られている。


シスターのための個室などはなく、彼女がいる場所はいつも決まっていた。


食堂か、礼拝堂か、それとも外での作業。


二人は顔を見合わせ、うなずく。


まずは礼拝堂へ向かった。


静かな廊下を抜け、扉を押し開ける。


中はひんやりとした空気に包まれていた。


整然と並ぶ長椅子と、簡素な祭壇。


だが、そのどこにも人の気配はない。


二人は足を止め、辺りを見渡す。


「いないね……」


小さく呟く声が、静かな空間に溶けていく。


そのまま礼拝堂を後にし、次は食堂へ向かう。


扉を開けると、ほんのりとした匂いが残っていた。


まな板の上に置かれた野菜。


使われたばかりの鍋。


昼食の準備をしていた形跡が、そこかしこに残っている。


だが、やはり――


姿はない。


二人は顔を見合わせ、少しだけ首を傾げた。


最後に、外へと出る。


冷たい空気が頬を刺す。


庭には、洗濯物が風に揺れていた。


白い布が、ぱたぱたと音を立てる。


その間を縫うように視線を巡らせるが、


どこにも、シスターの姿は見えない。


二人はその場に立ち尽くした。


探す場所は、もう多くは残されていなかった。


承知いたしました。続けます。



二人は顔を見合わせ、小さく息をついた。


それ以上探しても見つからないと、どこかで分かっていた。


足音を揃えながら、来た道を戻る。


再び、あの部屋へ。


窓際のベッドへと近づいていく。


黒髪の少女は、少しだけ足を速めた。


布のかかった鳥かご。


その前で立ち止まり、そっと手を伸ばす。


そして、布をめくった。


「あ!」


思わず声が漏れる。


金髪の少女もすぐに横から覗き込んだ。


かごの中。


そこには、小さな布に包まれた何かが置かれていた。


黒髪の少女は、ためらいながらもそっと手を入れる。


指先が触れる。


――あたたかい。


確かな熱が、そこにあった。


「これ、魔法石だなー冬にカイロにしてるやつだよ」


金髪の少女が、すぐに言う。


かごの中は、二人の上着とその小さな魔法石のおかげで、ほんのりと温もりに満ちていた。


その中心で、小鳥は静かに身を丸めている。


さっきよりも、少しだけ落ち着いた様子で。


黒髪の少女は、そっと息を吐いた。


「シスターかな?」


金髪の少女は、すぐに頷く。


「シスターだな」


二人は顔を見合わせる。


そして、同時に小さく笑った。


窓から差し込む光の中で、かごの中の温もりは、確かにそこにあった。


承知いたしました。続けます。



かごの中、小鳥は丸まったまま動かない。


淡いオレンジ色の羽も、今はそのほとんどが見えないほどに小さく縮こまっている。


呼吸はある。


だが、それだけだった。


黒髪の少女は、じっとその様子を見つめる。


餌を与えるべきか、一瞬だけ迷う。


けれど――今は無理だと、直感的に分かった。


「……まだ、無理そうだね」


小さく呟く。


金髪の少女も、腕を組みながら覗き込み、同じように頷いた。


「だな。今はあっためて、体力戻るの待つしかねぇな」


二人は顔を見合わせ、そっと距離を取る。


見ていたい。


でも、それが負担になるかもしれない。


その気持ちを、どちらも分かっていた。


だからこそ、少しだけ離れる。


窓際のベッドに腰を下ろし、鳥かごを見守るように座る。


時折、ちらりと視線を向ける。


それだけに留める。


静かな時間が、ゆっくりと流れていく。


外では風が鳴り、窓ガラスをかすかに揺らす。


部屋の中は、淡い光と、わずかな温もりに包まれていた。


やがて――


少女たちのまぶたが、ゆっくりと重くなる。


寄り添うようにして、肩が触れる。


小さな寝息が、ひとつ。


またひとつ。


二人は、そのまま静かに眠りに落ちていった。


窓際。


鳥かごの中で、小さな命はまだ丸まったまま。


だが、その周りには確かな温もりがあった。


静かな部屋に、三つの命の気配だけが、そっと寄り添っていた。



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