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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第8章ー甦る英雄ー
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激突&激闘ー

ベルがタブラスカを睨む。


「ちょっと見たくらいで姫神を理解した気になるなよ!」


そのまま駆け出す。


「ミカゲ!なめられてるぞ!」


再び大きく跳び上がる。


――だが、そのまま着地した瞬間。


ベルの身体が、つま先から影へと沈み込んだ。


音もなく、抵抗もなく。


そのまま全身が影の中へと消えていく。


そして、影そのものが消失した。


タブラスカがわずかに目を細める。


「なるほど……気配も消えるのか」


剣を握り直し、静かに構える。


その時。


タブラスカの影が揺れた。


その中から、人の両手が突き出る。


「下か!?」


両足首を掴まれる。


次の瞬間、つま先が現れ、そのまま一気に全身が影から飛び出す。


勢いのまま放たれた蹴りが、タブラスカの頬をかすめた。


「これも避けるのかよ!」


ベルは両足首を掴んだまま、逆立ちのような姿勢で叫ぶ。


そのまま両足を開く。


「カタナ!やるぞ!」


瞬間、ベルの踵から鋼鉄の刃が伸びる。


両足首を掴んだまま、突き上げるように放つ連撃。


タブラスカは片方の刃を剣で受け、もう片方を手で受け流した。


刃と肉体がぶつかる鈍い音が響く。


それでも体勢は崩れない。


タブラスカは足首を掴まれたまま、強引に蹴り上げる。


ベルの身体が弾かれるように宙へ浮く。


そのまま空中で体勢を整え、軽やかに着地する。


「アカリ!抉れ!」


ベルの両拳に光が集まる。


さらに続ける。


「カレン!鬼の剛力!」


重みが乗る。


光と膂力が、同時に拳へと宿る。


そのまま地面へ叩きつけた。


轟音。


地面が割れ、乾いた砂埃が一気に舞い上がる。


視界が閉ざされる。


ミリィとハーミットはとっさに目元と口を覆い、距離を取る。


砂煙の中、気配だけが残る。


ややあって。


その中から、光を纏った拳が撃ち出された。


至近距離。


タブラスカは剣の腹で受け止める。


衝撃が腕に伝わる。


「……ん、これは」


ベルが踏み込む。


「おらあっ!」


受け止められた拳を、そのまま振り抜く。


光を纏った一撃が、剣ごと叩きつける。


鈍い音。


次の瞬間――


刃が、砕けた。


砕けた刃が、地面に散る。


その破片を一瞥し、タブラスカは小さく息を吐いた。


「……なるほど」


わずかに口元が緩む。


「これは、武器に頼っている場合じゃなさそうだ」


その瞬間。


タブラスカの手の甲に刻まれた紋様が、淡く光る。


次の瞬間――


ベルの周囲に衝撃が叩きつけられる。


「……なんだ!?」


ベルは踏み込みを切り替え、最小限の動きで軌道から外れる。


衝撃が地面を抉り、砂が跳ね上がる。


着地と同時に、ベルの視線が鋭く走る。


「紋様術……面倒なもん持ってんな」


タブラスカは静かに手を下ろす。


「知っているなら話は早い」


再び紋様が光る。


今度はベルの足元。


地面が爆ぜる直前、ベルはすでに跳んでいた。


タブラスカはわずかに目を細める。


「やはり経験があるんだね」


ベルは笑う。


「何度か、な」


ベルは踏み込みながら低く言う。


「カレン!2倍でいくぞ」


次の瞬間、身体の内側から力が溢れ出す。


筋肉が膨張し、空気が震える。


タブラスカはその変化を見て、わずかに目を細める。


「身体強化か。ならばこちらも」


両肩に刻まれた紋様が、赤く光る。


その光が筋のように全身へと走り、巡る。


血管のように、赤い線が身体を縫っていく。


静かに、だが確実に。


タブラスカの気配が一段階、重くなる。


ベルが踏み込み、両肘の刃を振るう。


タブラスカはそれを、手のひらで受け流す。


刃が滑り、軌道が逸れる。


そのまま間合いが潰れ、二人は組み合った。


両手と両手がぶつかり合う。


力と力の正面衝突。


押し合い、拮抗する。


地面がわずかに軋む。


ベルが歯を食いしばる。


「2倍の力と同じって……どんな力してやがる」


タブラスカは余裕を崩さない。


「こっちも普段より高めの出力なんだけどね」


わずかに力を込め直しながら続ける。


「君のその姫神って能力こそ、どうなってるんだい?」


互いに睨み合ったまま、両手にさらに力を込める。


指が軋み、筋が浮き上がる。


拮抗は崩れない。


その圧に耐えきれず、足元の地面が沈む。


二人の足が、じわりと土へめり込んでいく。


大地が軋む。


それでも、どちらも退かない。


タブラスカは力を込めたまま、わずかに口を開く。


「それ、どれくらい出力を上げられるんだい?」


ベルは歯を見せて笑う。


「さぁな。試したのは20倍までだけどな!」


タブラスカが目を細める。


「20倍か。とても敵いそうにないな」


ベルがさらに圧をかける。


「その割には余裕じゃねぇ、か!」


押す。


だが――相手も同じだけ押し返す。


拮抗は崩れない。


タブラスカはそのまま静かに続ける。


「力だけが強さじゃないからね」


「僕たちの紋様術は、つまるところ魔術を簡易的に速攻で放つための技術だ」


「多様性では勝ると思うな」


言葉と同時に、右腕の紋様が光を放つ。


次の瞬間、ベルの頭上に数本の氷の槍が現れた。


切先が揃い、狙いを定める。


一斉に撃ち出される。


ベルは視線だけでそれを捉えた。


「アカリ!撃ち落とせ!」


声に応じ、光の球が生まれる。


放たれた光が氷の槍を正確に撃ち砕く。


砕けた氷の破片が、月光と光を受けてきらめく。


それでも――


拮抗は崩れない。


力も、距離も、そのまま。


互いに笑う。


ベルが力を込めたまま、笑う。


「多様性が、なんだって?」


タブラスカはわずかに目を細める。


「すまない。訂正しよう」


「姫神というのは、均一の能力というわけでもなさそうだね」


ベルは歯を見せる。


「俺が想像した願いを叶えてくれるのが、姫神の能力だからな!」


タブラスカの目が鋭くなる。


「なんだい、そのでたらめな能力は」


ベルは鼻で笑う。


「俺からしたら、魔術の方がよっぽどでたらめだぜ!」


さらに力を込める。


タブラスカも、それに応じる。


押し合う力が、もう一段階引き上がる。


地面がきしみ、沈む。


空気が震える。


そして――


二人の力の拮抗が、崩れる。


ベルが吠える。


「リューナ!ぶっ潰せ!」


姫神が応える。


次の瞬間、ベルの周囲に重い圧が発生する。


見えない力が空間ごと歪め、タブラスカへと叩きつけられる。


重力。


押し潰すように、真下へと引きずり込む。


タブラスカの身体が沈む。


足元の地面が砕け、さらにめり込む。


「くっ……これは……!」


全身にかかる圧に、わずかに表情が歪む。


ベルはそれを見て、口元を吊り上げた。


「ようやく笑顔が消えたな!」


タブラスカの身体が沈む。


重圧に押され、片膝をついた。


その上から、ベルがさらに力を込めて押し込む。


両手で、真上から叩きつけるように。


「どうやら、力比べは俺の勝ちみたいだな!」


タブラスカは息を吐く。


「……そうだね……これは、勝てない……」


その瞬間。


左手の甲の紋様が光る。


次の瞬間、タブラスカの両手から炎が噴き上がった。


「ちっ」


ベルは即座に手を離し、後方へ跳ぶ。


炎が地面を舐め、熱が広がる。


重圧から解放されたタブラスカも、同時に後ろへ跳んだ。


距離が開く。


再び、二人は向き合う。


夜の静寂の中で。


互いに息を整えながら。



ミリィが目を輝かせる。


「すごい……どっちもすごいです」


ハーミットは腕を組み、目を細める。


「魔王殺し……さすがね」


視線は外さない。


砂煙の向こうで対峙する二人から、一瞬たりとも。


張り詰めた空気に、自然と呼吸が浅くなる。


戦いを見守る二人にも、熱が入っていた。







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