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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第8章ー甦る英雄ー
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街中にてー

日差しがやわらかく降り注ぐ通りを、ベルとミリィは並んで歩いていた。


店先には布や雑貨、果物などが並び、人々の声が明るく行き交っている。路銀にも余裕が出てきたおかげで、今日は久しぶりにゆっくりと買い物を楽しめる日だった。


ベルは、軽やかな足取りであちこちの店を見て回っている。黒髪は背中までまっすぐに流れ、歩くたびにさらりと揺れた。白い肌に黒い瞳は柔らかく、表情もどこか楽しげだ。


「これ、かわいいね」


店先に並んだ小物を指さして、素直に笑う。


ミリィはその横で、少しだけ目を細めて頷いた。


「はい、ベルさんに似合いそうです」


「そうかな?」


ベルはくすっと笑って、品物を手に取る。


特別な緊張もなく、ただ普通に買い物をしているだけの時間。


「ミリィは何か欲しいものある?」


ベルが振り返って尋ねると、ミリィは少し考えてから、控えめに首を横に振った。


「いえ……でも、見ているだけでも楽しいです」


その言葉に、ベルはうん、と頷く。


「じゃあ、いろいろ見て回ろうか」


二人は並んで歩き出す。


人通りの多い通りで、ベルは店先に気を取られて、ほんの少し視線を横に向けていた。


次の瞬間、前に人の気配があることに気づく。


「……っ」


足を止めるのが一瞬遅れた。


軽くぶつかりそうになり、慌てて体を引く。


「ご、ごめんなさい!」


反射的に振り返って謝る。


そこに立っていたのは、白いコートをまとった女性だった。


金色のストレートヘアが肩に流れ、眼鏡の奥に碧い瞳が静かにこちらを見ている。


整った顔立ちだが、どこか張りつめた雰囲気を感じさせる人だった。


ベルは一瞬、言葉を失う。


見知らぬ相手。


けれど、危うくぶつかりそうになったことに、すぐにもう一度頭を下げる。


「本当にすみません……前をちゃんと見ていなくて」


声は素直で、飾り気がない。


その横で、ミリィも慌てて小さく頭を下げた。


「申し訳ありません……」


通りのざわめきの中で、三人の間に一瞬だけ、気まずい静けさが流れる。


通りの喧騒の中で、三人の間に一瞬だけ、小さな静けさが落ちていた。


人通りの中で、ベルとミリィは足を止めたまま、相手の女性を見上げていた。


白いコートを纏い、整った立ち姿を崩さないその女性は、落ち着いた声で口を開く。


「こちらこそごめんなさい。人を探していて」


少しだけ柔らかくなった声色に、ベルはほっとしたように小さく息をついた。


「いえ、こちらこそすみません……」


そのまま、ベルは首をかしげる。


「誰か探してるんですか?」


問いかけると、女性はわずかに視線を遠くへやりながら答えた。


「ええ……この辺りで、白い髪をこう結んでいる男性、見なかったかしら?」


そう言って、女性は自分の首の後ろに手を回し、髪を束ねるような仕草をしてみせる。


その動きは的確で、探している人物の特徴をはっきりと伝えていた。


ベルはその仕草を見て、少し考えるように視線を上に向ける。


「うーん……」


ミリィも隣で小さく首を振った。


「すみません……私は見ていないです」


ベルも頷く。


「この辺りでは、まだ見てないと思います」


そう答えながらも、ベルは相手の表情を気にしていた。


探しているという言葉に込められた焦りを、どこか感じ取っていた。


ハーミットは小さく頷くと、落ち着いた声で言った。


「そう、ありがとう」


そう言って、視線を軽く会釈に変え、その場を離れようとする。


その背に、ベルが声をかけた。


「あの……よかったら、私たちも探すの手伝いましょうか?」


足を止めたハーミットは、一瞬だけ目を伏せる。


考えるような静かな間が落ちた。


やがて、ゆっくりと顔を上げる。


「いいえ、大丈夫よ。それじゃ」


そう言うと、短く礼をして、迷いのない足取りで人混みの中へと歩いていった。


白いコートの背中が、通りのざわめきに溶けていく。


その姿が見えなくなってから、ベルは小さく息をついた。


「白い髪……アダラさんみたいだね」


ぽつりと呟く。


隣にいたミリィが、静かに頷いた。


「はい……白い髪の人なんてそうはいませんもんね」


二人はしばらくその場に立ったまま、行き交う人々の流れの中で、先ほどの女性の背中を思い返していた。


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