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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第8章ー甦る英雄ー
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英雄タブラスカー

英雄タブラスカは、西大陸において最初の国家を築いた開祖として語られる伝説的な英雄である。


10の権能と呼ばれる力を持つ完全なる英雄。


強く正しく民を導いた伝説の英雄。勇敢にして勇猛。


白い髪、白い肌、青い目。長く流れるその髪は、頭の後ろでひとつに束ねられている。


体躯は高く、鍛え抜かれた肉体は無駄がなく、静かに力を内に秘めている。


金色の布を身にまとい、その姿は見る者に威厳と気高さを感じさせる。


剣を手にすれば、その一撃は迷いなく放たれ、敵を打ち砕く。

馬に乗れば、その背は風を裂き、戦場を駆け抜ける。


彼はただ強いだけではない。


弱き者を守り、迷う者を導き、恐れる者に進む道を示す。


その背に従う者は数多く、

その名を呼ぶ声は大陸に響き渡った。


やがてその存在は、ひとつの象徴となる。


英雄タブラスカ。


それは力の名であり、

正しさの名であり、

そして理想そのものの名であった。


遠い昔、他大陸から一族を率いてこの地に辿り着き、過酷な環境と混乱の中で人々を導き、秩序と国家を築き上げたとされている。その功績により、後世では英雄の中の英雄として崇拝に近い扱いを受けている。


タブラスカは単なる優れた戦士ではなく、「英雄とは何か」という概念そのものを体現した存在とされる。

あらゆる状況において揺らぐことのない意思を持ち、迷いなく正義を貫き、従う者を導き、守る者を守り抜いたと伝えられている。


その姿は多くの記録や伝承に残されているが、実在については議論があり、神話として語られる側面も強い。

しかし、それでもなおタブラスカは西大陸において「英雄の原点」として確固たる位置を占めている。


西大陸において、英雄とは何か。


それは、ただ強い者のことではない。剣が鋭い、魔術が優れている、戦場で名を馳せる――そうした要素は、英雄の一端に過ぎない。


この大陸において英雄と呼ばれる存在は、もっと重く、もっと厳しい意味を持つ。


迷いなき意思。

揺るがぬ正しさ。

そして、人々を導き、守り続ける覚悟。


それらすべてを背負い、なお崩れない者だけが、英雄と呼ばれる資格を得る。


力だけでは足りない。

優しさだけでも足りない。

どれほど強大であっても、正しさを見失えば、それは英雄ではない。


逆に、どれほど苦境に立たされても、

自らの信じる正しさを貫き通すならば――


その者は、英雄として名を刻まれる。


西大陸の民は、英雄に過剰なまでの理想を重ねる。

英雄は国家の象徴であり、秩序の支柱であり、希望そのものだ。


だからこそ、英雄は自由ではない。


常に見られ、常に試され、常に期待される。

一度でも迷えば、それは弱さと見なされる。

一度でも誤れば、それは失墜となる。


それでもなお、その重圧を受け入れ、前に進む者だけが、英雄と呼ばれる。


英雄とは、選ばれるものではない。

英雄とは、背負い続けるものだ。


誰かのために戦い、

誰かのために迷いを捨て、

誰かのために自分を削り続ける。


その果てに残るものが、英雄と呼ばれる存在である。


西大陸において、その在り方の原点とされるのが――


英雄タブラスカであった。


西大陸には、「英雄願望」と呼ばれる思想が深く根付いている。


それは単なる憧れではない。渇望に近い、切実な願いである。


かつてこの大陸に現れた英雄タブラスカ。その存在は、国家を築き、人々を導き、秩序と正義の象徴となった。


あの時代を知る者も、知らぬ者も、等しく求め続けている。英雄の再来を。


西大陸において英雄とは、理想そのものだ。力でもなく、才能でもなく、ましてや偶然の産物でもない。


人々が望み、祈り、受け継ごうとする存在。


その願いはやがて、ひとつの価値観として定着した。


「英雄は再びこの大陸に生まれるべきである」


そして、その思想は社会の隅々にまで浸透していく。


特に女性にとって、「英雄を産むこと」は最高の栄誉とされた。


英雄の血を受け継ぐ子を産むこと。それは使命であり、誇りであり、人生の到達点とされる。


女性たちはそのために、あらゆる努力を惜しまない。血統、環境、信仰、鍛錬――英雄を産む可能性を少しでも高めるため、あらゆる手段が選ばれてきた。


それは時に歪みを生み、時に犠牲を伴いながらも、なお止まることはなかった。


西大陸の民の多くは、黒髪に黒い瞳、褐色の肌を持つ。


だが、ごく稀に、白い髪、白い肌、青い瞳を持つ子供が生まれることがある。


それは偶然ではなく、兆しとして扱われる。


一部の特徴を持つ者は「英雄の子孫」と呼ばれ、すべての特徴を備えた者は、「英雄の生まれ変わり」と呼ばれる。


それは、ただの呼び名ではない。期待であり、重圧であり、そして確信である。


この子は英雄になる。


そう信じられた瞬間から、その存在は特別な意味を持ち始める。


西大陸にとって、英雄は理想であり、目的であり、救いである。


人々はそれを待ち続ける。自らの手で、次の英雄を生み出そうとしながら。


この大陸の願いはひとつに集約されている。


英雄よ、再びこの地に現れよ。


西大陸の人々は彼を英雄として崇め、

そして今では神となった存在だと信じている。


人々は誓うとき、こう口にする。


「――英雄タブラスカの名に誓う」


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