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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第6章ー西大陸からの使者ー
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西の大陸の秘密ー

マリーナは腕を組み、鋭い視線でアダラを見据えた。


「聞けばこの1週間、このベルに夜這いを仕掛け続けたと聞いておりますが、それも真剣だったと?」


アダラは肩をすくめ、目を逸らさずに答える。


「あぁ、そうだ」


アルティシアは少し眉を寄せ、声を落として言った。


「2人でベル様の子……子供を欲しいと画策したのも、正統な理由から、と?」


「あぁ、そうだよ」


ミリィは目を大きく開き、少し戸惑いながら口を開く。


「わ、私にはいつも悪ノリに見えました……でも、そうじゃないってことですか?」


アダラは真剣な眼差しで、少し声を強めた。


「だから、そうだって。こっちはお前らや他の大陸のやつみたいに、好いた惚れたとか、そんなに呑気じゃいらんないんだよ」


アルティシアはため息混じりに視線を落とし、静かに言う。


「わたくしも西の大陸の風習などは聞いておりますが、それにしても……」


アダラは突然、顔を赤らめて怒りをあらわにした。


「何も知らないくせに勝手なこと言うな!!」


胡座のまま、声を荒げる。

「お前らには……」


その瞬間、ベルは静かに手を上げて制した。


「待てよ。まずはその理由ってのを聞かせてくれよ」


いつになく真剣な表情で、ベルはアダラの目をまっすぐに見据えた。


アダラとビビは目を合わせ、お互いに軽く頷いた。


「いいだろう。この際だ。ビビ!」


呼ばれたビビは、胸の布に手をかけ、するすると緩め始める。


「こんな時に何を……」


アルティシアが慌てて声を上げる。


「いいから、黙って見てろ」


アダラは冷静に指示を出し、ビビは従う。やがて布を外し、胸元を広げて見せる。


「それが……なんだと言うのです?」


マリーナは眉をひそめつつも、組んだ腕を持ち上げ、胸元を強調してみせる。


「ビビ、見せてやれ」


「は〜い」


ビビの胸の中央が、少しずつ膨らみ始める。


「え……えぇ!?」


ミリィが思わず声を上げる。だんだんと膨らみは大きくなり、中央から裂け目が開いた。


「よぉーく見とけ。これが西の大陸だ」


裂けた皮膚の中には、子供の握り拳ほどの赤い石が埋まっていた。ビビの身体に半分以上埋まり、正確な大きさまではわからない。


「おい……なんだそれ」


ベルは目を見開き、息をのむ。


「これは『英雄核』と言ってな、ビビが生まれた時に埋め込まれた、力の源だ。こいつをひとたび起動させれば、ビビは無敵の戦士になる」


マリーナは眉を寄せ、静かに呟く。


「西の大陸でそんな人体実験まがいの行為など……流石に聞いたこともない」


「そりゃそうさ、門外不出だからな」


アダラは真剣な眼差しで続ける。


「それも、強さを求めた結果、ということですか?」


「そういうことだ。英雄を産み出すのが西の大陸の人間の長年の夢だ。かつての英雄タブラスカみたいな英雄を」


アダラは胸を張り、語気を強める。


「英雄が産まれないなら、作ればいい。そう提言した奴らがいたんだよ」


「その結果が、これだ」


ベルは目を細め、胸の中で言葉を反芻するように呟いた。


「英雄……核だと?」


アダラは静かに頷き、力強い口調で答える。


「そうだ。英雄を人の手で生み出すための技術だ」


ベルは少し身を乗り出し、鋭い目でアダラを見つめる。


「だがそれを……俺は知ってるぞ?」


アダラは思わず微かに笑みを漏らす。


「さすが……魔王殺しだな」


アルティシアは眉を寄せ、声を震わせながら問いかける。


「ベル様、どういうことですか?」


ベルは足元に視線を落とし、低く呼びかけた。


「ミカゲ、見てるか?」


呼びかけに応えるように、部屋の床に落ちた影がゆらりと揺れる。


そして、どこからともなく澄んだ声が響いた。


「はい。主様、いつでも貴方様を見ています」


その声に、一瞬で部屋の空気が凍りついた。

アルティシアもマリーナも、アダラも、ミリィも、ビビも、全員が目を見開き、息をのむ。


ベルは静かに影を見下ろし、いつになく険しい表情を浮かべた。


ベルは影に向かって低く問いかけた。


「ミカゲ、どう思うよ?」


影の揺れの向こうから、静かで澄んだ声が返る。


「……間違いありません。同じ匂いがします」


ベルは少しうなずき、眉間に皺を寄せる。


「……やっぱそうか」


マリーナは腕を組み直し、鋭い視線をベルに向けた。


「ベル、どういうことだ?わかるように説明してくれ」


ベルは少し肩をすくめ、赤い石を指差しながら答える。


「どうもこうもねぇよ、それは英雄核なんで呼ばれちゃいるが……」


指先がビビの胸元に埋まった赤い石を示す。


「それは――『魔王核』だろ」


その言葉に、部屋の空気がさらに張りつめる。

アルティシアもマリーナも、アダラも、ミリィも、ビビも、一瞬息を飲んだ。


ベルは影と赤い石を交互に見つめ、深く息をついた。


アダラは少し目を細め、鋭い笑みを浮かべた。


「さすがは『魔王殺し』、どうやら本物みたいだな」


ベルは眉をひそめ、赤い石を見つめながら呟く。


「英雄になるために、魔王の力を使ったって、そういうことか?」


アダラは肩をすくめ、静かに肯く。


「間違ってはない。要するにそういうことだ」


アルティシアは思わず手を口元に当て、言葉を失った。


「なんと……なんと言うことを……」


マリーナも唇を引き結び、声を潜める。


「これは……こんなことが……」


ベルは軽く目を細め、アダラに問いかける。


「お前ら幼馴染なんだろ?そんなんいいのかよ?」


アダラはふふっと笑い、表情を一変させる。


「いいわけないだろっ!!!」


声に怒りと悔しさを滲ませ、アダラはそのまま続けた。


「ビビと、私は生まれた時から一緒で、幼馴染なんかじゃなく、本当の姉妹みたいに育って来たんだ!」


顔を赤らめ、拳を握りしめながら叫ぶ。


「こんな……こんなの許せない……でも、そうなってるんだから、どうしようもないんだよ!」


部屋の空気は一瞬、怒りと切なさで張りつめ、全員が言葉を失った。


ミリィは目を大きく開き、手を胸の前で組んだまま、震える声で問いかけた。


「で……でも、それとベルさんのお嫁さんになるのと……一体なんの関係が?」


アダラは少し視線を遠くに向け、静かに語り出す。


「要するに、目的は英雄なんだよ。ビビに求められてるのは、英雄になるか、英雄を作るか、どっちでもいいんだ。英雄が生まれるなら、それでいい」


アダラはビビの胸元をそっと見やり、声に力を込める。


「だからビビが魔王殺しに嫁げば、その可能性が生まれる」


「それでいい。それだけでいいんだ」


アルティシアは眉を寄せ、腕を組みながら困惑の色を滲ませた。


「やはり……わかりません。そうすることで、何があるのですか?」


アダラは唇を引き結び、少しだけ俯く。


「……ビビは、18歳になるまでに英雄になんないと、殺されちまうんだよ」


マリーナは思わず息をのむ。


「なっ……」


アルティシアも声を震わせ、視線をアダラに向けた。


「どういうことでしょう?」


部屋の中は一瞬、静寂に包まれ、全員が言葉を失った。

ベルは赤い石を指先で軽く触れ、黙ってその状況を見つめている。


アダラは深く息をつき、言葉を選ぶようにゆっくり話し始めた。


「西の大陸にある魔王核は三つ。それを三人の人間に埋め込んだ。その一つが、ビビだ」


視線をビビに向け、アダラの目には覚悟が宿る。


「西の大陸は、早く英雄が欲しいのさ。だから期限を決めた。英雄核を埋め込んだ人間が、十八になるまでに英雄になれなければ、殺して、また新たな依代に移す」


その言葉に、部屋の空気は凍りつき、誰もが息をのむ。

ベルは赤い石に触れたまま、静かに顔をしかめる。

アルティシアは唇を引き結び、思わず眉を寄せた。

マリーナは目を大きく開き、冷や汗を感じながらその意味を理解しようとした。

ミリィは小さく体を震わせ、ビビの肩に手をかける。

ビビは無言で顔を伏せ、胸に埋まった魔王核を意識せざるを得なかった。


ビビは小さく肩を落とし、ふわりと声を伸ばした。


「私は〜もういいよ〜て言ったんだけどね〜」


アダラは眉をひそめ、強い口調で返す。


「何度も言わせんな。そんなんいいわけないだろ」


ビビは俯きながら、か細い声で応える。


「だって〜どうしようもないよ〜王家には逆らえないもん」


アダラの表情は真剣そのもので、手を前に差し出しながら訴えた。


「だからさ!力貸してくれよ!お前が、『魔王殺し』のお前がビビを嫁さんにして、子供作る意思を示してくれたらさ、少なくとも数年は……ビビは生きられるんだ!」


声を震わせ、アダラはさらに言葉を重ねる。


「なぁ、頼むよ!……頼む……」


「私にできることならなんでもするからさ……お前が望むなら私のことも好きにしていいから」


部屋の中には、静かな緊張と切迫感が張りつめ、ベルの胸に問いかけるような視線が突き刺さる。

ビビは小さく息を吐き、目を伏せたまま、アダラの言葉を受け止めている。



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