あれからの2人ー
広場の片隅、木漏れ日の差すベンチに二人は並んで座っていた。昼ベルは手元のランチをゆっくり口に運す。久しぶりにこうしてミリィと一緒に座る時間が、なんだか懐かしい。
「最近、修行修行の毎日でお疲れ様でした。もう終わったんですか、ベルさん?」
ミリィは小さな声で、でもきちんと敬語を使いながら尋ねる。金髪が光に透けて、ふわふわ揺れる。
ベルはフォークを置き、少し考えるように空を見上げた。
「終わったわけじゃないけど……なんとなく掴めた気がするの」
小さく笑う。
「あとは、自分でやってみる。少しずつでも、体に覚えさせるの」
ミリィは頷き、ほっとしたように微笑む。
「……さすがですね、ベルさん。確かに、感覚で掴む部分もありますものね」
二人の間に、言葉少なでも通じ合う静かな時間が流れる。昼ベルは口の中の味よりも、こうして穏やかに隣で食事を共にする時間のほうが、今はずっと心地よく感じられた。
「……でも、やっぱり難しいですね」
小さくため息をつきながらも、ベルの目は少しだけ輝いている。
ミリィはそんなベルを見て、優しく微笑んだ。
「大丈夫です、ベルさん。焦らず、ゆっくり、ですね」
昼の柔らかい日差しの中で、二人のランチタイムはゆったりと過ぎていった。
ランチを終えて、ベルはのんびりと口を拭きながらミリィに聞いた。
「ねぇ、ミリィ。最近、あいつとはどうなの?もう仲直りとかしたの?」
ミリィは少し顔をそむけ、くすっと笑いながらも、まだ眉がぴくっと動く。
「……まだ怒ってます。簡単には許せません」
ベルは肩をすくめて苦笑い。
「そっか……まあ、そうだよね。でも、毎晩アダラたち来てるんでしょ?」
ミリィは小さくうなずく。
「はい。毎晩、必ず撃退しています。でも、ベルさんと直接話しては……まだしてません」
ベルはフォークを置き、少し首をかしげながら言った。
「でもさ、たぶんあいつって……変な気持ちでお尻叩いたわけじゃないって、ミリィもわかってるでしょ?」
ミリィは目を伏せ、小さく息をつく。
「それは……もちろんです。でも、だからって許せないんです。自分でもよくわからないんですけど……なんだかもやもやして」
ベルは肩をすくめ、ちょっと笑った。
「なるほどねー。ってことは……ミリィも女の子ってことだよね」
ミリィはびっくりして顔を上げ、目をぱちぱちさせる。
「……? どういう意味ですか、ベルさん!?」
ベルはにやっと笑いながら、スカーフをくるくるいじった。
「いや、だってさー……ちょっとムカつくけど、なんか気になっちゃう……みたいなことでしょ?」
ミリィは頬を赤くしてすぐ目をそらす。
「そ、そういうことですか……ベルさん」
ベルはくすっと笑い、肩を揺らす。
「ふふ、わかってるよ。急に仲直りしろとか言うわけじゃないし。ただ、正直な気持ちっていうのは、そういうことなんだなーって思っただけ」
昼の柔らかい光の下、二人の間にはまだ微妙な距離感があるけど、少しだけ空気が和らいだようだった。
ベルとミリィがランチを終え、少しのんびりしていると、アダラとビビがやってきた。
「なんだ、お前らまたあいつの話してんの? ほんと好きだよな」
アダラはにやっと笑いながら、ベルの横に立つ。
ミリィは顔を赤くして、ぱっと手を胸に当てる。
「べ、別に好きじゃありません!」
ベルは思わず吹き出しそうになり、手で口元を押さえる。
「ふふ、まぁ……確かに話題にはなるけど、別に“好き”ってわけじゃないよね」
ビビは横でくすくす笑いながら、肩をすくめる。
「でも、毎晩アダラが来るの、ちゃんと撃退してるんでしょ〜?」
ミリィはきりっと頷き、少し胸を張る。
「……はい。ですが、それと感情は別です!」
アダラは手を振ってにやりと笑い、少しからかうように言った。
「そっかそっか、まあ楽しそうでいいけどなー」
ベルはそのやり取りを見ながら、思わずくすっと笑った。
アダラがにやりと笑いながら言った。
「私ら、魔王殺しに会いたいんだけど、あいつ昼間はいつもどこにいるんだ?」
ベルとミリィはそろって明後日の方向を見つめ、もごもごと答える。
「さ……さぁ?」
ビビがくすくす笑いながら首をかしげる。
「何それ〜、なんかあやし〜」
アダラは肩をすくめて、手を広げる。
「じゃーいいや、とりあえず今夜は会わせてくれよな?」
ミリィはきっぱりと首を振る。
「絶対ダメです!」
アダラはにやりと笑い、首を振った。
「違うって、夜這いはもういいからさー」
ベルは首をかしげて、少し驚いた声で言った。
「え? 違うの?」
アダラは笑いながら頷く。
「うん、あのさ、魔王殺しに私らの国に来てほしくって」
ベルは少し目を見開いて、驚いた声で言った。
「西の大陸に?」
アダラはにやりと笑い、手を広げる。
「そうだ! もちろんお前らも一緒にな!」
ベルは首をかしげて、ちょっと慎重に尋ねる。
「でも、なんでいきなり? どうして私たちも一緒に来なきゃいけないの?」
アダラは少し真剣な顔になり、肩をすくめた。
「いや、あのさ、魔王殺しに私らの国に来てほしくって……色々頼みたいことがあるんだ」
ミリィは小さく目を見開き、息をつく。
「……なるほど……それなら理由次第ですね」
ベルは少し考え込み、腕を組みながら言った。
「うーん、そういうことなら……でも詳しく聞かないと、ちょっと判断できないな」
ビビは横でくすくす笑い、軽く肩をすくめる。
「ベルさんらしい反応だね〜」
アダラはにやりと笑いながら、さらに説明を始めた。
「だからさ、夜までに準備してもらって、理由も全部説明するからさ!」
ミリィは小さくため息をつき、でも頷く。
「……わかりました。ただし、無理なことはしません」
ベルは少し考えた顔のまま、でも興味は湧き始めている様子だった。
「まずは話を聞いてから決める、ってことね」
ベルは少し考え込みながら言った。
「もちろん、あいつが行くって言ったら、だけど……」
(あいつ、面白がって行きたがるだろうな……)
アダラは笑いながら手を広げる。
「その心配はねぇって! 私とビビがベットん中で頼めば、断れる男はいないだろ」
アダラはビビの方を指さし、からかうように言った。
「見ろよ、これ」
ビビは胸を張って自慢げに胸をそらす。
「えっへん〜」
ベルは思わず目を丸くして、口元に手を当てる。
「……ほんとに、頼れる二人だね」
ミリィはため息混じりに小さく首を振る。
「……本当に、油断も隙もありませんね」
ミリィはきりっと頷いた。
「今夜は、私も同席します!」
ベルは少し考えながら、微笑んで言った。
「そうね……すごい心配だから、ミリィにお願いするわ。私はいられないけど」
アダラは肩をすくめて、軽く笑う。
「別にいいけど、見てる分にはあんま楽しそうじゃないけどな」
ビビはのんびり笑いながら、胸を張る。
「ねぇ〜、私たちも初めてだから楽しみ〜。だけどちょっと怖いね〜」
ベルは目を丸くして首をかしげる。
「え……? させる気はないけど……そういう経験ないの?」
アダラはちょっと心外そうな顔をして言った。
「私もビビもないよ? そんなふしだらじゃねぇし」
ベルは目を細め、にやりと笑う。
「いや、充分ふしだらだよ」
アダラは胸を張って、にやりと笑った。
「でも大丈夫! お姉様たちからいろいろ話は聞いてるから!」
ビビはのんびり声を伸ばして、楽しそうに言った。
「そぉ〜、がんばる〜」
ベルは思わず目を細めて、ため息交じりに言った。
「いや、絶対止めるけどね。ミリィが」
ミリィはきっぱりと頷き、腕を組む。
「……はい。私が必ず止めます」
ベルはミリィの肩を軽く叩きながら、真剣な顔で言った。
「ミリィ、ほんっとにお願いね」
ミリィはきりっと胸を張って答える。
「はい! 任せてください! 身体を張ってでも止めます!」
アダラは軽く笑い、手を振った。
「お前が身体張っても止まらないって」
ビビはのんびり声を伸ばして心配そうに言う。
「無理しないで〜」
ミリィは腕を組み直し、きっぱり返す。
「そういう意味じゃありません!」
ベルは小さくため息をつき、眉を寄せる。
「……不安」
アダラとビビはにやりと笑いながら、軽く手を振って去っていった。
「また今夜〜!」
残されたベルとミリィは、しばらく静かに席に座っていた。
ベルは小さくため息をつき、呟く。
「朝から、濃い話だった……」
ミリィは肩をすくめ、少し疲れた表情で頷いた。
「……はい」




