西の大陸の話ー
波止場を離れ、ベルは二人を従えて街灯の並ぶ港の通りを歩き出した。潮の香りが心地よく、波の音が静かに耳に届く。
アダラは前を歩きながら、時折港の明かりに目を輝かせる。
「こっちの街灯、うちの国にはあんまりないな〜」
ビビはベルの隣でふわふわ歩きながら、ちょっと跳ねるように言う。
「ほんと〜夜でも明るくて〜気持ちいいよね〜」
ベルは肩越しに二人を見て、少し笑った。
「そうだな。こうやって歩いてるだけでも、街の雰囲気楽しめるもんな」
アダラは波止場を指さしながら、興味津々で話す。
「海の匂いと灯りの感じ、なんか落ち着くな〜」
ビビは波の反射を見つめ、声を伸ばしてつぶやく。
「うん〜水面がキラキラしてて〜なんか魔法みたいだよ〜」
ベルは少し目を細め、夜風に吹かれる二人を眺めながら問いかけた。
「……お前らの国って?」
アダラもビビも、港町の夜を満喫しながら、少し考え込むように歩き続けた。
やがてアダラが口を開いた。
「私らの国はカダブランカって言うんだ」
ベルは眉を少し上げて、興味深そうに二人を見つめる。
アダラは楽しげに続ける。
「砂漠の広がる国で、港町もあるけど大部分は広い砂原だな〜。気候は暑くて乾燥してる。砂漠の風景ってのは、街から少し離れるともう一面、砂と岩だけになるんだ」
ビビも顔を輝かせ、波止場の灯りを眺めながら加える。
「建物は木や石で作られてて、街の人はみんな軽装が多いんだ〜暑いからね〜」
アダラは少し自慢げに、手を広げて言った。
「でも港町の方は商業も盛んで〜砂漠の交易で栄えてるんだぜ。船でいろんな物を運んで、他国と交易するのも楽しいんだ」
ベルは少し微笑みながら、波の音に耳を傾ける。
「ふーん、砂漠の国か……面白そうだな」
ビビはにこにこしながら、手をひらひらさせる。
「うん〜面白いよ〜でも暑いのは大変〜」
アダラとビビの話に、夜の港の潮風が混ざって、港町の静かな夜がさらにゆったりとした空気に包まれた。
ベルは少し首をかしげ、二人を見比べて言った。
「だからビビは焼けてんのか。でもアダラは白いんだな?」
その言葉にアダラは一瞬ぴくりと身体が硬くなった。
「う、うるせ……」声が少し裏返る。
ビビは慌てて両手をぱたぱたさせ、声を伸ばす。
「や〜めてよ〜からかわないでよ〜!」
ベルは肩をすくめ、にやりと笑った。
「ふーん、白いのって珍しいのか」
アダラは俯き、少し声を震わせながら小さく呟いた。
「…………西大陸じゃ、英雄と同じ褐色の肌が普通なんだ……」
ビビはくすくす笑いながらも、横で手をぱたつかせてフォローする。
「うん〜でも〜アダラ〜そのままでいいよ〜!」
ベルは肩をすくめ、にこりと笑った。
「まーいいじゃねぇか!人それぞれだしな」
アダラは少し俯き気味にうなずく。
「おぅ……」
ビビはぱっと顔を明るくして、手をひらひらさせる。
「よーし!気を取り直して〜」
アダラも少し笑みを戻し、ベルに向かって言った。
「でさ〜、何かお礼にご馳走させてくれない〜?」
ベルは驚きつつも、にやりと笑った。
「え?奢ってくれんの?それならありがたくいただくよ」
ビビは跳ねるように喜び、声を伸ばす。
「やった〜!楽しみ〜ベルさん〜」
三人は港を後にし、街へ向かって歩き出した。
夜風に潮の香りが混ざる通りを、ベルは軽やかな足取りで進む。アダラは少し遅れ気味に歩きながら、街灯に照らされた石畳をじっと見つめる。
ビビは両手をぱたぱたさせながら、ベルの横をふわふわと歩く。
「うん〜街の明かりもキレイだよね〜」
ベルはちらりと二人を見やり、口元に笑みを浮かべた。
「まあ、せっかくだ。夜の街も見て回るか」
アダラはちょっと背伸びをし、建物のシルエットを見上げる。
「こんな街並み、うちの国じゃあんまり見ないな〜」
ビビは小さな声で、でも楽しそうにささやく。
「ね〜ベルさん〜屋台とかもあるのかな〜?」
ベルは波止場での静かな夜から一変した、街の明かりと人の気配を感じながら、二人の後ろ姿を見守った。
こうして三人は、港町の夜を抜け、石畳の道を街の中心へと歩き進めていった。




