魔王殺しと西の姫ー
夜の港は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。波の音が岸壁に柔らかく当たり、冷たい潮風が銀髪を揺らす。ベルはそのまま波止場の端に腰を下ろし、夜の海を眺めていた。昨日は結局、遭難騒ぎで街を見て回るどころではなかった。
そのとき、後ろから声がかかった。
「おー探したぞ!お前がベル・ジットだな?」
ベルは振り返る。そこに立っていたのは、見慣れぬ白髪の少女――ダブラ。その隣には長い黒髪の少女が会釈している。
ベルは目を細めて問い返した。
「なんだお前?」
アダラは手を腰に当て、声を張る。
「なんだとはなんだ!お前、失礼だぞ!」
隣のビビが軽く手を上げ、落ち着いた声で嗜める。
「まぁまぁ、アダラ。失礼なのはこちらも同じですし、まずは自己紹介を」
ビビはにこりと笑い、続けた。
「私はビビです。アダラと一緒に行動しています〜」
アダラも少し照れたように肩をすくめ、恥ずかしそうに言った。
「私はアダラ。あんたに礼を言いたくてな!」
「あー!昨日の船の連中か!」
やっと思い出す。
ベルは腕を組み、少し笑いながら言った。
「礼なんていいぞ。昨日は大変だったけど、無事でよかったな」
ベルは腕を組み、少し眉を寄せながら問いかけた。
「そんで?なんでお前ら遭難してたんだ?」
アダラは少し考え込むように顔をしかめ、口を開いた。
「うーん……まあ、ちょっとした事情でな。言ってしまえば、船がうまくいかなくて……気付いたらこんな目に遭ってたんだ」
ビビは肩をすくめ、ふんわりと付け加える。
「海の流れに任せるしかなくて〜途中で力尽きちゃったの」
ベルは海を見つめながら、ため息交じりに言った。
「なるほどな……でも無事でよかったよ。あんたら、運が強かったな」
アダラは少し照れくさそうに笑い、ビビもにっこり微笑んでベルを見つめた。
アダラは目を輝かせ、ビビもにっこり笑いながら、改めて感謝の気持ちを伝えた。
アダラは胸を張り、目を輝かせながら言った。
「これもタブラスカのお導きだな!」
ベルは首をかしげ、眉を寄せる。
「タブ……?なんて?」
ビビは少し照れくさそうに笑いながら説明する。
「英雄タブラスカ様〜、私たちの国で崇められる神様なの〜」
アダラは得意げに頷き、ベルに向かって胸を張る。
「だからこそ、私たちが助けられたんだ!」
ベルは腕を組み、少し苦笑しながら返した。
「へぇ……そういうのに守られてたってわけか。ま、無事でよかったな」
ビビもにっこり笑い、アダラの横でうなずいた。
「ほんとに〜助かって嬉しいです〜」
ベルは肩をすくめながら、波止場の夜風に吹かれて言った。
「じゃー気をつけて帰れよ」
アダラは手を振りながら声を張る。
「待て待て待てぃ!」
ベルは腕を組み、少し呆れたように言った。
「なんだよ?用事は済んだんだろ?」
アダラは目をギラリと輝かせる。
「命を助けられて言葉だけで済ませられるか!何か礼をさせろ!」
ベルは肩をすくめて、軽く笑った。
「いいよ。面倒くせぇから」
アダラは口をとがらせ、少し不満そうに呟く。
「めんど…」
ビビはすぐにアダラを制しながら、やわらかく説明する。
「私たちの故郷では〜恩を受けたら必ず報いなければ恥と言われてて〜」
アダラはビビを睨みつける。
「ビビ!こいつむかつく!」
ビビは慌てて手を広げて制する。
「まぁ〜まぁ〜まぁ〜」
アダラがビビの胸に巻いた布をぐいぐい引っ張り続ける。
「あぁ〜ちょっと、やめて〜」
ベルは腕を組んだまま、少し呆れた顔で二人を眺める。
「……なんだこいつら、やっぱり面倒くせぇな」「あぁ〜ちょっと、やめて〜」
アダラはにやりと笑いながら、ビビの胸に巻いた布を軽く引っ張る。
「そう言えば昼間に、お前と同じ名前の女とチビっ子に会ったぞ」
ビビはまだ布を押さえながら、顔を赤らめて声を伸ばす。
「もー、やめてよ〜こぼれちゃうよ〜」
アダラは肩をすくめ、少しあきらめたように手を下ろす。
「ま、いいや。礼も言えたしな」
ビビは息を整え、にっこり笑いながら言った。
「うん〜助かったよ〜」
ベルは波止場の端に座ったまま、夜風に吹かれながら二人を眺める。
「……よし、これでひとまず落ち着いたか」
港に漂う潮の香りと、波のきしむ音の中、三人の間に短い静けさが流れた。
ベルは腕を組み、少し眉を寄せて問いかけた。
「んで、お前達どこに行こうとしてたんだ?」
ビビは口をとがらせ、声をふんわり伸ばす。
「それは〜精霊様のお導きに従って〜」
アダラはくすくす笑いながら頷く。
「だから道に迷って……ああなっちまったんだよな」
ベルは少し目を細め、海の波面を見つめる。
「ふーん……そりゃ大変だったな」
ビビはにこにこしながら、手をぱたぱた振る。
「うん〜もうちょっとでヤバかったよ〜」
アダラも笑みを浮かべ、少しほっとした表情を見せた。
ベルは腕を組み、二人を見つめて問いかけた。
「お前らはこれからどうすんの?」
アダラは少し考え込み、口を開く。
「それはー…」
するとビビが慌ててアダラの腕を引き、声を伸ばして止める。
「や〜めてよ〜言っちゃダメだよ〜!」
アダラはちょっと驚きつつも、にやりと笑った。
「おいおい、なんで止めるんだ?」
ビビは目をぱちぱちさせながら必死に言い訳する。
「だって〜まだ言えないんだもん〜!」
「ふぅん、まぁ事情もあるだろうしな」




