脳内姫神会議
脳内姫神会議――
丸いテーブルに姫神たちが集まる。いや、もうテーブルなんて関係なし。誰かは机の上、誰かは床に座り、誰かは宙に浮かび、全員が好き勝手に自己主張している。
ミカゲは相変わらず冷静、上品、そしてちょっと怖い。
「皆様……本日の議題、昼のベルが表に出ている間、夜の彼は眠り、私が側にいた件について――」
カタナはぴょんぴょん跳ねながら叫ぶ。
「えええー!?マジでー!?ずっとそばにいたのに誰も知らなかったなんてウソでしょー!?」
エンカは腕組みして眉をひそめる。
「ったく、聞いてねぇじゃねぇか……あんた一人で勝手に決めんなよ、ミカゲ」
カレンは高飛車に口を尖らせる。
「妾に隠すとは…なんとまぁ、面白き愚策じゃのう」
アカリは小さく震えながら、ちょっと泣きそう。
「わ、私も知りませんでした……なんで誰も教えてくれなかったんですか……」
ミズキはのんびり笑いながら。
「まあまあ、夜のベルが安心して眠れたなら、それでよいのでは……?」
ユキメは拳を振り上げて熱血モード。
「ふざけんなー!知らなかったとか、ありえねぇだろ!俺だって知りたかったんだぞ!」
リューナは鼻を鳴らし、傲慢に。
「ちっ、まったく……私には関係のないお話ですわね。どうでもいいですわ」
キザミは片言で。
「ぼく、ぼく…なんか怒る?怒る?」
イバラキはツンデレ炸裂。
「別に怒ってなんかないんだからね!びっくりしただけよ、ほんとに!」
カタナが突然テーブルを叩き。
「ちょっとー!みんなー!笑いすぎじゃない!?信じられなーい!」
エンカも突っ込む。
「お前、そっちかよ!笑うとこちゃうだろ!?」
カレンが誇張して手を振る。
「妾は笑っておらぬわ、ただ…状況が滑稽すぎてのう!」
ミカゲはため息ひとつ。
「……皆様、本当に落ち着きがなくて困りますわね。昼の彼が無事で、夜の彼も守られていた――それだけで事は済んでいるのに」
カタナは小首を傾げ。
「えーでもでも、秘密ってドキドキしますよね!なんか楽しい!」
アカリは小さく顔を赤らめ。
「そ、そんなこと言って……」
ユキメが豪快に笑う。
「おいおい、あんたらマジで平和すぎだろ!」
リューナは手を組み、鼻を鳴らす。
「ふん……まったく、こんなに騒ぐなんて下賎な連中ですわ」
最後に、ミカゲが白い手でゆっくりテーブルを叩く。
「……まあ、結果オーライですわ。昼も夜も、ベルは守られた。これ以上騒ぐ必要はありませんのよ」
全員が一斉に反論しようと口を開くが、互いの声でかき消され、結局会議は収拾がつかないまま終了――というか、もう誰も議題なんて覚えていない。
会議室のような脳内空間で、眠ったままの夜ベルを囲む姫神たち。
カレンが真っ先に両手を広げて声を張る。
「妾によこせ!」
ミカゲは涼やかな声で静かに遮る。
「……嫌です。絶対に渡すことはできませんわ」
カタナはぴょんと跳ねて手を伸ばす。
「えー、なんでー!私も触りたいよ!」
エンカは腕組みし、姉御肌全開で睨む。
「ふん、俺もだ。勝手に取れると思うなよ」
カレンが鼻を鳴らし、じりじり前に出る。
「ふん、ならば妾が力ずくで――」
アカリは小さく頭を下げ、気弱に。
「わ、私も……いただくわけには……」
ミズキはおっとり、のんびりと。
「まあまあ、落ち着いて……皆で順番に……」
ユキメは拳を握って熱血モード。
「やるなら力ずくだ!絶対に渡させねえ!」
キザミは片言で手を伸ばす。
「ぼく…ぼくも…ほし…」
イバラキはツンツン顔で。
「別に欲しいわけじゃないんだからね!勘違いしないでよ!」
眠った夜ベルはまったく無反応。姫神たちは互いに押し合い、けん制し、時折「どかせ!」「どけ!」と口々に叫ぶ。
しかしミカゲだけは落ち着いた微笑みで、優雅に手を組む。
「……どんなに争おうとも、私の側から離れませんわ」
カレンが眉をひそめ、仕方なく後ろに下がる。
「……ふん、妾の手でなくとも、そう簡単には渡さぬ、ということか」
エンカもため息をつきながら後退。
「……いや、さすがにこれは手強いな」
その場には姫神たちの押し合いと怒号だけが残り、眠った夜ベルはまったく微動だにせず、全員が疲労感と諦めの空気に包まれるのだった。
眠った夜ベルを前に、姫神たちはどうしても順番を決めたい。
カレンが胸を張って声高に宣言。
「そうじゃ!じゃんけんで決めるのはどうじゃ?」
カタナがぴょんぴょん跳ねる。
「おー!いいね!じゃんけんで決めちゃおう!」
エンカは腕組みし、姉御肌全開で。
「しょうがねぇな、じゃんけんで決めるか。負けたら……責任はとってもらうぜ?」
アカリは小さく手を合わせ、気弱に。
「わ、私も……えっと……」
ミズキはのんびり笑いながら、
「じゃんけんですか……まあ、それなら……」
ユキメは拳を握り、熱血全開。
「絶対に負けねえぞ!誰が相手だろうとぶっちぎる!」
リューナは高飛車に鼻を鳴らし、
「妾の勝ちは既定路線ですわ。ふふん」
キザミは片言で、
「ぼく…じゃん…けん…」
イバラキはツンツン顔で、
「別に負けてもいいけど……勝てたらちょっと嬉しいだけ」
さあ、勝負だ!
「じゃんけん……ぽん!」
最初は順当に手が揃いそうだったが、カレンは「ずるい!」と連呼、カタナはぴょんぴょん飛び跳ねて手を入れ替え、ユキメは叫びながら指をパチパチ。
エンカが「お前ら落ち着け!」と叫ぶも、誰も聞かない。
ミズキはのんびりと「まあまあ落ち着いて……」と呟き、リューナは勝利を鼻で笑い、キザミは手がつりそうになっても片言で「もう…い…や…」と耐える。
気付けば、姫神たちの声と手の動きは戦場のように乱れ、机や椅子を蹴飛ばして大騒ぎ。
「ちょっと待てー!」「やり直しー!」「ずるいわよ!」
そんな喧騒が、ついに眠った夜ベルの耳に届いた。
「うっせぇぞ!!」
寝言で怒鳴ったその瞬間、姫神たちは全員、ぴたっと動きを止める。シュンと肩を落とし、顔を伏せ、口々に小さく、
「……ごめんなさい……」
ベルは相変わらず眠ったまま、何事もなかったかのように呼吸を続け、脳内姫神会議は一瞬の静寂に包まれた。




