エピローグ
その後、各地から集まった大陸警察、教会、ギルド、そして各国家の人員は、戦うことなく戦後の整理に追われた。崩壊した神殿国家群の跡地には、焦げた大地と消えた都市の痕が残るのみ。中でも、地図の更新作業には、最も多くの人手と時間、そして予算が必要とされた。
神殿国家群は消え去ったが、教皇や神官たちの行方は定かではない。
彼らもまた炎に焼かれたのか、それとも生き延びて逃げたのか、誰も知る者はいなかった。
残されたのは、逮捕拘束されていた月光師団長と、アンジュに捕らえられた陽光師団長――ルーシェだけであった。
二人の存在は、焼き尽くされた大地の静寂の中で、かろうじて戦いの痕を物語っていた。
アンジュたち三人は、気づけばその姿を消していた。おそらく、教会への報告に走ったのだろう。
マリーナたちは街に残り、焼け跡の整理や戦後処理に奔走している。
ほかの人間も、やるべきことがある者は残ったが、ほとんどは自分たちの拠点へと戻っていった。
ミリィはルグレシア王国に到着すると同時に、戦争の終結を伝えられた。そのまま帰路につこうとしたところを、アルティシアに引き止められ、結局今朝になってようやく王国を立ったという。
そしてベルは、静かにその焼けた大地を見渡していた。
空はまだ薄く赤く染まり、焦げた大地からはわずかな熱気が立ち上る。周囲には誰もいない。戦いの跡だけが、荒涼とした静寂の中に残っていた。
ベルの目には、これまで見てきた世界の中で最も広く、最も恐ろしい景色が映っていた。
しかし同時に、胸の奥には小さな光が残っている。たくさんの人たちが協力してくれた、そのすべてが、まだ消えてはいなかった。
深く息を吸い込み、ベルはゆっくりと歩き出す。
この大地に残る者たちのために、そして自分自身のために。
焼け跡の街を越え、静かに、しかし確かな決意を胸に、ベルは前へ進んでいった。
その右手から、もうあの腕輪は消えていた。




