聖戦ー
神殿最深部──天高くそびえる石柱に囲まれた広間は、闇と光が交錯する神聖な空気に満ちていた。漆黒の大理石の床は、長年の荘厳さを静かに映し出し、両脇には歴代教皇の肖像画が並ぶ。
中央に据えられた玉座には、神殿国家群の教皇が座していた。白金に輝く法衣を身にまとい、その眼差しは冷厳かつ深淵のように重い。広間の空気は、その一挙手一投足に従うかのように凍りつく。
教皇が立ち上がり、ゆっくりと両手を広げると、その存在感だけで広間の空気が震える。側近の高位神官たち、玉座を囲む神殿騎士団長たちは、声を発することもなく、その姿を見上げてひれ伏す。
「我、神殿国家群の教皇たる者、ここに宣言せん。」
その声は広間の奥底にまで響き、石柱に反響して倍音を奏でる。
「魔王殺しベル・ジットに関わる全ての街、村、国家に告ぐ。異端を匿う者は、いかなる正当性をも持たぬ。教会、大陸警察、ギルドであろうと例外ではない。」
教皇の声が広間に響き渡るたび、神官や騎士たちの胸の奥に決意が宿る。言葉に頷き、短く息を整え、互いの視線を交わすだけで、全員が一つの意思を共有する。
玉座の背後に吊るされた巨大な紋章が、教皇の声に合わせてかすかに光を放つ。まるで全世界に向けてその宣言が投影されるかのようだ。
神官たちは額を床に近づけ、神殿騎士たちは剣の柄に手をかけ、全身で教皇の意志を受け止める。言葉はない。反応は、全員の沈黙と立ち姿に集約される。
「世界秩序を乱す存在を討ち、秩序を回復せん。世界をあるべき姿に戻すため、我ら神殿国家群は総力をもって行動する。」
教皇は一歩前に進み、その手を空に掲げる。光が微かに広間を満たし、荘厳さが頂点に達する。
「これを以て、世界に告ぐ──これは、聖戦である。」
玉座の背後の紋章が光を帯び、神殿騎士の鎧や神官の法衣に反射する。光は、広間の奥底にまで届き、皆の心を揺さぶる。
教皇の手が空に向けられると、広間に集う全員が無言でそれに従う。沈黙の中で、天と地にその意志が伝わるかのようだった。
そして教皇の声に呼応するかのように、広間に集う神官と騎士たちは、息を合わせ──
「世界をあるべき姿に」
その言葉が、石柱の間を渡り、神殿の奥深くにまで響き渡る。静かで厳かな響きは、やがて外の世界にまで届くように思えた。
言葉と同時に広間に鳴り響いた鐘の音が、遠く街や村にまで届くかのように響き渡った。世界の片隅で、戦いの序曲が今、静かに幕を開けたのであった。




