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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: K.K.
第1章『旅の始まり』
11/127

ー王都にようやく到着したけど、もう少しだけ焦らしたいー

石畳を打つ車輪の音が、次第に重く、規則正しくなる。


「見えてきたぞ、王都だ」


御者の声に、ベルは顔を上げた。


遠く、地平線の向こうにそびえる白い城壁。


幾重にも重なる塔。

空を切り取る尖塔。

陽光を受けて輝く大門。


その圧倒的な輪郭に、思わず息を呑む。


村とは比べ物にならない。


街ですらなかった。


それは——ひとつの世界だった。


馬車が近づくにつれ、人の流れは濃くなる。


商人の列。

荷を引く獣。

巡回する騎士たち。


城門の前には長い列ができている。


「身分証を用意しろ」


門番の声が響く。


ベルの指先が、無意識に赤いスカーフを握る。


――身分証は、ない。


胸の奥がひやりと冷える。


馬車が止まる。


前の旅人が書類を差し出し、門番が確認し、通していく。


一人、また一人。


やがて——


「次」


ベルの番が来る。


視線が集まる。


騎士の鋭い目が、黒ずくめの少女を見下ろす。


「身分証は?」


空気が止まる。


王都は広い。


だが——規律は厳しい。


ここは“規律と制約の中心”。


ベルは一歩、前に出る。


その瞳は、揺れていない。


ベルは一瞬だけ息を整え、胸元から大切に折りたたんでいた紙を取り出した。


シスターミーファ――教会で渡された紹介状。


両手でそれを差し出す。


「これを……」


門番は無言で受け取り、封蝋と紋章を確認する。


「……教会の印か」


低く呟くと、視線がわずかに変わった。


「少し待て」


そう言い残し、門番は書状を持ったまま足早に門の内側へと消えていく。


ベルの心臓が静かに跳ねる。


周囲の旅人たちの視線を、無意識に感じる。


――通れるかどうかは、この紙一枚にかかっている。


しばらくして。


鎧の擦れる音と共に、門の奥から一人の騎士が歩いてきた。


装飾の多い甲冑。

背筋の伸びた立ち姿。

周囲の騎士より明らかに格上の気配。


「こちらの方です」


門番が恭しく頭を下げる。


「王都騎士団警備隊――隊長だ」


隊長はベルを一瞥し、次に紹介状へ目を落とす。


封を解き、中身を丁寧に読み進める。


……数秒の沈黙。


そして——


「教会の紹介者か」


声音が、先ほどとは明確に違う。


硬さが消え、わずかに敬意が混じる。


「失礼した。確認が取れた」


手のひらを返したように態度が変わる。


門番に短く指示を出す。


「通して構わない。警備記録にも記載しろ」


「はっ」


隊長は再びベルへ向き直った。


「王都へようこそ。滞在目的は?」


ベルは少し緊張しながらも、はっきり答える。


「……旅です」


「よろしい。規律を守り、騒動を起こさぬ限り、王都は旅人を拒まない」


短い言葉。


だが——正式に“入場”が認められた瞬間だった。


門がゆっくりと開かれる。


ベルは一歩、王都へ足を踏み入れた。


――――


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