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王子の婚約者候補 〜ヴァレンティナは旅行をやめられません〜  作者: siro


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9)旅行先はキーワナオ王国3

 旅というものは楽しければ楽しいほど、あっという間に過ぎてしまうものだ。気づけば旅行カバンはぎっちぎに旅の思い出でひしめき合ういっぽうで財布の中身は軽くなっているのだ。


「あーーもう終わっちゃう〜」


 船の上で海風を浴びながら、ヴァレンティナは嘆いた。

 キーシナ夫人の奢りでホテルのバーで高いお酒も飲めたし、素敵な夜景も見れたし。何より美しい寺院を堪能できた。しかもキーシナ夫人は、趣味でダンス講師をするほどの腕前だというのは帰りの船内で知った。しかもダンスパーティーでレクチャーを受けることになったのだが、他の人曰く、習うならかなり高い講師料を払わないと見てもらえない人らしい、本当に趣味ですか??。


 学校で習った先生よりも上手いというのは一緒に踊った瞬間わかった。次の動作を不自然なく、流れるように誘導されるのだ。まるで自分が上手くなったように錯覚するが、他の人と踊ったらボロボロだったので、やはり上手い人は違う。


 そんな思い出に浸りながら、どうやってこの思い出を文字として表現しようかと思い悩む。

 これから、提出用と日録ように書き溜めた内容を清書して見直さないといけないが、何よりも日録は大事なお小遣い源なので、手抜きはできない。


「あー港が見えてきちゃってる〜悲しい」

「ヴァレンティナ様、どうされましたか?」

「あ、添乗員さん。いえ、もう旅が終わっちゃうと思って、日常がもどってきてしまうー」

「あはははは、今回も楽しまれましたか?」

「とっても!」

「では、またぜひご参加ください! ご要望があれば、地域別にまた冊子をお送りいたしますので」

「本当ですか〜!! あーでも、最低でも半年は我慢しないとお金が……」

「では、半年後にお送りしますね!」

「わーーお願いします」


 嘆いていても船はちゃんと港に着いてしまう。

 着岸すると、船員たちが太いロープを係船柱(けいさんちゅう)にぐるぐる巻きにしている。


「はぁー降りる準備をするかー」


 諦めてヴァレンティナは甲板から降りたのだった。


「魔道列車に乗る方はこちらに集合してくださーい! 馬車の人は、お手伝いに来てくれたニース君のところにあつまってくださーい」


 添乗員の呼びかけに、ヴァレンティナは急いで向かった。

 魔道列車を利用するのはヴァレンティナとキーシナ夫人と旦那さん、そして老夫婦と若いカップルの計7人だ、彼らと一緒に駅へと向かうと、駅舎の前に凄い人だかりができており、旅行カバンを持って入るのは大変そうだなんて考えていると、一緒にいた人が「ここでこんなに混んでるの初めて見るわ。何かあったんじゃない?」というつぶやきに、添乗員も何かおかしいと感じたらしく、一旦道の脇に避難することになった。


「何かおかしいので、私一人でちょっと様子を見てきます! みなさんはここでお待ちください、すぐ戻ってくるので!」


 そういうと、添乗員は人混みの中突撃していった。もみくちゃにされながら、駅舎へと入っていく様子に、あれでは大きな旅行カバンを持っている自分たちでは入れないだろうなんて思った。


「どうしたんですかね?」

「すごい人よね」

「早く家に帰って荷解きしたいですよねー、明日の準備もあるしー」

「貴方明日もしかして仕事?」

「仕事なんですよー」

「あらー大変ねー私は休みとってあるわよー」

「えー羨ましい〜」


 雑談してると、添乗員さんが戻ってきたが、その顔はよろしくない様子。


「すいません。みなさん一旦広場に移動します」


 駅のすぐ近くにある広場に移動すると、添乗員さんは神妙な面持ちでいった。


「大変申し訳ありませんが、魔道列車が事故で動かないそうです」

「「え!!」」

「どうしよう、明日仕事なのに」

「本日中に復旧は無理なのは確実なため、本部に連絡して、本日泊まれる場所を確保します。もしも馬車でのご帰宅をご希望の方がいらしたら、今おっしゃってください」


「馬車だと何日もかかるから無理よ」

「私も無理ですね。王都まで馬車だと4日くらいかかりますよね……」

「では、みなさんお泊まりということになります。ここで、少々お待ちください。近くの通信所で連絡してきますので」


 まさかの予定外の延長、明日帰れたとしても仕事には間に合わないのは確実だった。


「職場に連絡しないと怒られる……」


 頭を抱える中、旅行業者が手配した馬車が迎えにきて、荷物を乗せて今日泊まるホテルへと移動となった。しかもまさかの五つ星ホテル。


「超高級ホテルじゃないですか?!」

「やったわね、子爵家の私では一生泊まれないホテルよ!」

「これは、災い転じて福となす だな!!」


 横にいた夫婦は鼻息荒くホテルを見上げながら言った、同じく私も一生泊まることのないホテルだ。確か、一等室は、今回の旅の費用並みの金額だったはずだ。


「本当に、ここに泊まれると?」

「あれ、添乗員さんも知らされていなかったんですか?」

「皆さん、落ち着いてください、ちょーっと確認してくるので! ぬか喜びさせてしまっているかもしれませんので!! すぐそこに支店があるので、待っててください!!」


 そういうと、馬車を待たせて、飛び出してしまった。


「あら、手違いかしらね〜」

「そうですよねーこのホテルって確か、高級ツアーのパンフにのってましたけど、桁が違いましたもんねー」

「そうそう、残念だわー」


 戻ってきた添乗員さんの手には紙を握りしめていた。


「お待たせしました! 誠に申し訳ないのですが、二手に分かれることになりました。今から呼ぶお客様は、私の後ろにいる、彼女に着いて真向かいのホテルに泊まっていただきます」


 そう言って名前を呼ばれてた人は残念がりながら荷物を持って道路を渡っていった。そして残ったのは、キーシナご夫婦とヴァレンティナ、そして若いカップルだった。


「えっと、残られた方々の3組様、えーこちらに宿泊になります」

「「え!!」」

「やったー!」

「皆さんラッキーですよ。このホテル、うちのツアーでも高級ツアーでしか利用しないホテルです。ご案内いたしますね」


 まさかの高級ホテル、これはいっぱい写真撮らねばならない! エントランスには大きな壺が置かれ、豪華な生花が煌びやかにいけられていた。荷物はすぐにボーイが受け取り、布袋に入れられ金のバケットカートに乗せられていく。


「はわわわ、天井、凄い大きなシャンデリアじゃないですかー」

「あらー本当だわー。やったわねヴァレンティナちゃん!」


「わー結婚前にまさか豪華なホテルなんて、ラッキーだねダーリン」

「そうだね、ハニー」


 隣のカップルはイチャイチャし始めてしまった。婚前前旅行で参加しているピクリットさんとマリオッツォさん、貴族ではないらしいけど、マリオッツォさんの実家がかなりお金持ちらしく彼女さんの自慢話の内容を聞く限り、かなりのビックマウスと見た。


 案内された部屋は、一番グレードの低い部屋らしいけど、それでも豪華な作りだ。しかもこのホテルは最上階が高級仕様のためが、高級デパートでしか見かけない昇降機が付けられいた。これがあるかないかで、ランクがかなり変わるのだ。


「わーー自分の家よりも広ーい」


 思わずフカフカのベッドにダイブするも、忘れてはいけない。


「職場に連絡しないと……ううううう」


 無理やり起き上がり、またロビーに降り立った。通話機を借りて、職場にかけると忙しそうな騒音の中出てきたのは、上司のケンジュだった。


『はい、書記係室です』

「お疲れ様です。シノノメです。その声は、ケンジュさんですよね?」

『あ? シノノメ! お前生きてたか!』

「え」

『無事でよかったわー! 魔道列車には乗ったのか?』

「いいえ」

『お、じゃー事故は知ってるか?』

「はい」

『こっちでも大騒ぎになっていてな、人手不足になってる』

「そうだったんですねー! では話が早いです〜 帰れ待てん!!」

『だろうな!! この忙しいのに帰ってこれねーとは!』

「仕方ないじゃないですかー乗ろうと駅に向かったら、もう駅舎に入れない状態だったんですよー」

『だーあー! ****** あ、お前今どこにいる?』


 誰かに声をかけられてケンジュがボソボソと会話しているのだが、よく聞こえなかった。そんな中居場所を聞かれるなんて悪い予感しかしない。


「え、ホテルですけど。旅行業者が用意してくれた」

『お前お金欲しいよな?』

「え、なんです、藪から棒に、なになに? 怖い怖い」

『どこのホテルに泊まってる!』

「なんかとっても言いたくないです!!」

『どこにいるか報告するためにもお前の居場所は把握しないといけないだぞ、さぁいえ!』


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