8)旅行先はキーワナオ王国2
旅行先の楽しみといえば、遺跡以外にも色々とある。
例えばお店、国が違えば、お店も違う。並ぶ商品も違う。
ヴァレンティナは自由行動日は必ず街に出て、お店を見て回るのだ。まずは道端にある売店だ、日用品だけしか売っていない国もあれば、お菓子や軽食を売る場所もある。
この国では、ジュースがよく売られている。南国らしく、水分たっぷり入った大きな木の実をくり抜いてストローを刺して飲むタイプだ。
「シーヤの実ジュースだ!」
ヴァレンティナは、早速買って写真を撮った。店員が見かねて撮ってくれて、映えが良い写真だ。日録には使えないが記念写真としては完璧だ。
シーヤの実はさらっとした飲みごたえなのに、まろやかな甘さで南国には欠かせない飲み物だ。中身を飲み切った後も、中の白い身を削って食べれるので捨てにずに持ち帰る、ちゃんと袋付きなのがありがたい。
飲みながらぷらぷらと街を散策すれば、雑誌や本を売っている売店を見つけ、可愛い本と、新聞、ファッション誌を買い込んだ。
ここ本島には、旧都市と新都市に分かれていて、新都市のほうは建物の作りが違っていて、石造りで基本白く塗られたものが多く、華やかな印象だ。逆に旧都市は、落ち着いた色合いの茶系でしめられる木造の建物になる。
旅行ガイドに乗っていた、旧都市で売られている伝統的な柄の小皿を売っている店を探していると、曲がり角でおばあさんに声をかけられた。
「お嬢ちゃん一人かい? この先は危ないから行っちゃダメだよ〜」
「え、そうなんですか? この近くに可愛いお皿売ってる店に行きたいですけど」
「あぁ〜そのお店は移動したねー。新都市のほうだから、向こうだよ〜、あんたの顔、華抄族に似てるから気をつけな」
「え」
「華抄族は精霊の子って言われて、この地域じゃ家に住まわせれば幸運が訪れるって言い伝えがあってね、攫われるんだよ」
「わぁー、おばあさんありがとう! すぐに戻ります!」
ヴァレンティナは慌てて、元来た道を駆けた。
「また言われたなー。どの部分が華抄族なんだろう? さっぱりわからん」
じつは、時々旅行先で言われるし、一度怪しい人たちに、華抄族かと聞かれて攫われそうになったことがあったのだ。その時は添乗員さんが近くにいて、追い払ってくれてことなきを得たのだが。
そもそも、華抄族は、太古の昔にここに住んでいた人たちの呼び名で、それこそヴァレンティナの国であるイムゾナク国の建国神話に出てくる一族の名だ。
「あれ、ヴァレンティナ様どうされましたか? スリにでも会いました?」
「あ、添乗員さん! いえ、旧都市を散策してたら、地元の方に、華抄族に似てるから攫われるぞって言われて急いで引き返してたんです」
「え! そうだったんですか、それでしたら私と一緒に戻りましょうか」
「え、いいんですか?」
「もちろん! まさか、ここの地域が華抄族信仰が残っているとは」
「いえいえ、びっくりですよね。そんなに私って華抄族に似てるでしょうかね?」
「さぁ、我々もどこを基準で判断してるのかわからないんですよね〜。ほとんどの人が、華抄族の末裔だと思うんですが」
「そうですよねー」
謎だと思いながら、添乗員さんと一緒に目当ての小皿のお店に辿り着けた。一応過去の事件もあるので、その後は添乗員さんが一緒と巡ることになってしまった。
攫われたくはないが、自由に買い物ができなくなってしまった。
「次はどこにかいに行きますか?」
「んー化粧品を見ていこうかなと思ってます、やっぱり南国は、自国では売られていない発色の良い色を取り揃えているので」
「確かに、南側の人は化粧が派手ですよねー」
「添乗員さんは派手なメイクの女性は苦手なんですね」
「あははは、慣れていないのかもしれませんね。やはり文化が違いますから〜見慣れていないというのもありますね」
「添乗員さんは王都出身でしたっけ?」
「はい、商家の生まれでして、もともと国外の人を見る機会が多かったんですよ」
「そうなんですねー。お、このオレンジ綺麗」
「すごい色ですね……」
「これと、このピンクにします!」
「……」
「良いんです。こいうのは思い出なんで、実際に使うのは旅の間だけですよ」
購入してホテルに戻ればキーシナ夫人もちょうど帰ってきていた。
「ヴァレンティナちゃん、いっぱい買えた?」
「買えました〜! キーシナ夫人も買えました?」
「もちろん! お洋服また買っちゃったわ〜♡」
「何処に着ていくつもりなのか……」
旦那さんが呟いた瞬間キーシナ夫人が素早く肘鉄をくらわせて黙らせてしまった。
「ヴァレンティナちゃんはお洋服は買ったの?」
「今回はやめておきました。代わりに化粧品と小皿かいました!」
「あら素敵〜!」
買ってきた戦利品を見せ合いっこしようとしていると添乗員さんに止められた。
「みなさん、早く荷物を部屋に置いてきてください、あと20分後には出発しますよ」
「そうだった」
「あらあら、急がないと」
慌てて宿泊してるホテルの部屋に荷物を置きに行く。今日の午後は大きな寺院の見学なのだ。そしてそのまま海が見渡せるレストランでディナーという流れだ。
戦利品の写真を撮って、新聞紙は小皿を包んでスーツケースの中にいれた。
「……旧都市にある本屋にも行きたかったんだけどなー。添乗員さん、商家の生まれぽくないんだよなぁー」
国を出れば、国内では見れないものも見れたりする。
例えば情報規制された事件とか、外交とか。
「はぁ、最終日の自由行動日に探してみるかな」
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