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王子の婚約者候補 〜ヴァレンティナは旅行をやめられません〜  作者: siro


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7)旅行先はキーワナオ国

 キーワナオ国は、大小様々な島からなる国だ。

 見どころは、白い橋で繋がっていることと、精霊信仰で作られた寺院が各島ごとにあり、その中でも、本島と中くらいの島にある3つの寺院と旧寺院跡が有名だ。

 まずは旧寺院跡を見学、島の端の崖の上にあり、今は風化を防ぐために、旧寺院を覆い隠すように大きな建物を被せるように建ててある。

 見栄えを損なわないために、入り口は大きな扉になっているが、普段はその扉に作られている小さな扉から出入りする形だ。


 中は天窓から日差しが入り込み、まるで洞窟の中に佇む遺跡のような雰囲気だ。まず目に入るのは白い石柱と色鮮やかに塗られた石像と建物。

 手前のはレプリカらしく、奥は色が落ちて白い石像となっている。

 添乗員が旗を振って説明をし始めた。


「ここは海の精霊を祀っていた寺院です。できた時期は白雉時代340年頃と言われており、記録では茶雉時代の100年までは利用され続けていたそうです。朱海戦の時に半壊したあとは放置されていました、地元の人たちの手によって守られていたため、現存している古い寺院です。

 現在は保管維持のために建物で覆われていますが、こちらの写真の通り、元々は海を背景にし、この建物の祭壇の窓から、夏至の時期に月が見えたそうです」


「まー素敵ね〜」

「見てみたいですね〜」


 思わず想像してうっとりとしてしまう。


「地元の人の言い伝えだと、夜にこの寺院の窓から花を投げると願いが叶うという言い伝えもあったそうです。たいていが、恋愛成就が多かったそうです。そのため、外に窓枠だけ再現したスポットがあります、皆さんも是非に投げてみてください。ご夫婦の方はちゃんと話し合ってから投げてくださいね」


「あら、残念ね〜、ヴァレンティナちゃんは思い人はいないの?」

「え、私ですか? いないですよ〜」


 一瞬掠めたのは、懐かしい人の笑顔だったが、ふと視界に入った装飾で消えた。


「これ凄い。珊瑚礁に人魚? 魚?」

「もう、流したわね!」


 キーシナ夫人の話題から逃げつつ見上げた像で、タイミングよく添乗員も来て説明し始めた。


「こちらは、レプリカの海の妖精たちだそうです。本物は美術館に保存されていますが、かなり風化が進んでしまったそうで、こちらは昔の写真や絵をもとに再現されています。色を再現していますが、実は元の顔料は白雉時代の珊瑚礁で作られており、煌めきのあるものだったそうです。流石にレプリカで同じものを使うにはお金が足りないため、色だけの再現になっています。左手にある石像の上、皆さん見えますかー? ここに一部残っています。キラキラしてるでしょ?」


 添乗員が指した方向にを見れば、確かに一部含量が残っていてキラキラと星屑のように輝いていた。


「さて、ここで30分の自由時間となりまーす。集合場所はこの建物を出た入り口に私が立っています。それでは解散!」


 添乗員の言葉と同時にツアー客は思い思いで中を散策し始めた。もちろん、ヴァレンティナも。


「文字も残ってるのねー。古典で出てきた文字で読めないな……」


 石碑に文字は読めないが、その横に置かれた案内板に少しだけ書かれていた。

ーー石の成分から黒雉時代に作られた石碑だということは判明している。欠損してしまい全ては読めないが内容は ”大聖霊が降り立ち、******荒れ狂う海を沈めるため*******精霊の子は捕ま******海に住まう魔物を探し出し退治した。” と記載されている。


「神話っぽいのね。それにしてもセイの字が聖なる方なのね、てことは元々はアリックス教の国なのかな?」


 旅をして面白いことの一つは、やはり宗教だ。同じ宗派なのに呼び方が違ったり、使い方が違う。周辺諸国は、多神教国家が多く、大体が同じ自然や土地の精霊を隣神とする考えだ。

 大きな力を持って人形になって現れるのが精霊で、その精霊よりも巨大な力を持っているのが大精霊とするのが基本なのだ。なんで読み方が違うのか、宗教学者じゃないのでヴァレンティナはさっぱりわからないが、面白いと思っていつもメモをしているため、うっすらとだけ違いがわかる。

 ちなみに、妖精はちゃんとした人の形ではなく、光や動物や自然の形で現れるものたちのことを指し、魔術の手助けをしてくれる存在だ。魔眼を持っていると見えるらしいが、そんな人は国に数人のみで、基本妖精が見せようと思わない限り見えない存在だ。


 ぐるっと中を回って写真もいっぱいとったら、外に出て先ほどのスポットに来てみた。

 なんと、ちゃんと観光客向けに投げる花が売られており、みな白い窓枠を使って投げ込んでいた。


「あ、キーシナ夫人が投げてる」


 旦那さんに写真を撮ってもらいながら写真を撮っていた。


「あら、ヴァレンティナちゃんも投げる? 写真撮ってあげるわよー」

「えっと」

「お願い事はなんでもいいらしいわよー、恋愛成就、金運アップ、健康」

「金運!! それじゃー金運で投げます。写真、お願いします」


 即返事をして、花を買って早速レプリカの白い窓枠に向かって投げた。


 黄色い薔薇はふわりと弧を描いて海に落ちていく。

 陽の光を浴びながら水面が宝石のように輝いている。そこに向かって黄色い花弁を少し散らしながら、薔薇が吸い込まれるように落ちていく。

 まるで、アルベルト殿下の瞳のような揺らめく海に。


「願い事叶うといいわね」

「え、あ、はい」


 しまった、金運をお願いし忘れたと思った時には、薔薇は見えなくなり、次の人が願い事を投げていた。


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