第2章「女神、居候を始める」
神様というのは、もっと遠い存在だと思っていた。
だが、実際には、台所に立ち、ソファでくつろぎ、洗濯物を取り込んでいる——
そう、今日も彼女は、普通に「居る」。
西伊豆の片隅で、神様との奇妙な同居生活が始まった。
「なあ……いつまで、いるつもりだ?」
翌朝、悠馬は頭を抱えていた。
ちゃぶ台の向かいには、昨日の“神様”、ベンちゃんが普通に朝食を食べていた。
「んー……しばらく?だって人間界、楽しいし」
ご飯に焼き魚、味噌汁、そしてなぜか明太子。
誰が用意したのかといえば、もちろん彼女だ。
「味付け、悪くなかったでしょ?私、料理アプリ見ながら頑張ったの」
「……スマホ使えるのかよ」
「ネットの海も、まあ、ひとつの世界だからね。神様、案外アップデート早いの」
悠馬は何も言えず、湯呑みを手に取る。
夢じゃなかった——神様は、本当に家に居る。
—
それからというもの、ベンちゃんは悠馬の家に“普通に”住み着いた。
しかも、彼にしか見えない存在ということで、周囲には説明できない。
ある日、漁協の集まりに出るため支度していると、後ろから声がした。
「ねぇ、私も行きたい!地域のこと、知りたいんだもん!」
「おまえが出たら騒ぎになるだろ……」
「見えないようにするし、音も出さないように頑張る」
「頑張るって……どうせ騒ぐだろ」
「ふふ、バレた?」
—
その日、漁協の会議室の隅で、悠馬は必死に気配を無視し続けた。
笑いをこらえるベンちゃん、後ろで浮かれて踊ってるベンちゃん、
たまに横から茶々を入れるベンちゃん——
地元の面々には見えないのが幸いだったが、悠馬の心労は限界だった。
—
夜、自宅の縁側で並んで座る二人。
月が海に落ちて、波が白く光る。
「……なんで、俺なんだ?」
ふとこぼれた悠馬の問いに、ベンちゃんは少し静かになった。
「うん……“あなたなら、大丈夫”って思った。沈まなかった、あなたの心がね」
「……それ、神様っぽい答えだな」
「たまにはね!」
彼女は笑い、悠馬も思わず吹き出した。
こうして、少しずつ、奇妙な関係が“日常”になっていく。
神様は、意外と生活力がある——
そして、意外と自由奔放だ。
悠馬の家は、今日も少し騒がしく、でもなぜか、心があたたかい。
次回予告
次回、第3章「祭りの計画、始動!」
ベンちゃん、西伊豆の未来を語る!?
観光客を呼ぶアイデアとは一体……そして、悠馬が巻き込まれていく“海の祭り”の全貌が明らかに——!
どうぞ、お楽しみに。
※この物語の関連動画です。
https://youtu.be/jlX9LsIHPq4




