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第4話「魔獣と魔生物」


「ふぅ…、久し振りだったが、なんとかなったな…」



 屋敷に戻ると、俺は前世振りに精霊術を使って戦った疲労感から、倒れるように居間のソファに腰を下ろした。

 


「お疲れ様でした、お兄様」

 


 そう言って、本人も疲れているはずなのだが、俺を居間に案内するなりキッチンに向かった月火つきひが、二人分のお茶をお盆に載せて持ってきた。



「おっと、ごめんな、月火つきひだって疲れとーやろうに…」


「いえ、構いませんわ、お兄様のお世話をするのが、わたくし、妹の役目ですから♪」



 そう言いながら、月火つきひはお茶の入ったコップを左右にテーブルの上に置いて、自身は広いソファの俺の隣に座った。


 俺が案内された部屋は、十畳くらいはあるだろうか、とても広い洋間で、部屋の隅には暖炉があり、中央には直径3メートルくらいの丸テーブルが置かれていて、暖炉の反対側の壁には長辺が5メートルくらい、短辺が3メートルくらいの超巨大なテレビ、そしてガラス張りの引き窓から見える庭は日本庭園を思わせるような池と自然が広がっているのが見えた。


 今俺達がいるのは、その超巨大テレビの前に置かれた長さ2メートルくらいの超ふかふかなソファで、このソファとテレビの間には、これまた高そうなテーブルが置かれていて、そのテーブルに置かれた、月火つきひの淹れてくれたお茶を飲みながら、ギャラスの襲来で、話の途中になっていた俺の知らないこの世界のことについて聞くこととなった。



「まず、今のこの世界には、かつての戦争の生き残りである魔人と、その“使い魔”である魔獣、そして“マナプール”から自然発生する魔獣というものが存在します」


「“マナプール”…?」



 まず、魔人や魔獣達の扱う“魔力”と“魔術”について説明する。

 魔力とは、魔人や魔獣の体内に存在する力のことで、その力を使った術が魔術ということになる。


 対して、“マナ”というのは、大気中に散った魔力残滓のことで、魔術を放った時に飛散したり、魔獣達の遺体に残った魔力が気化したりしたものだそうだ。

 そして、それらマナが気流などによって一地点に集まり、一定量以上のマナが貯まることで発生する現象を“マナプール”と呼び、そこからさらに気温や気圧、湿度など様々な影響が重なることで、この“マナプール”から魔人に使役されていない、()()()魔獣が自然発生することがあるという。



「じゃあ、さっきのギャラスの大群は、その“マナプール”から発生した、と?」


「それだけではありません。

 ギャラスの生態は魔獣の中でも特異でして、まず“マナプール”から一匹が自然発生すると、その一匹が巣を作り、卵を産んで、数を増やしたところで、人間達を襲いに街へとやって来るわけなんです」


「なるほどね、俺がいた前世のこの世界では、魔人や魔獣がこの世界にやって来たばかりで、まだ大気中のマナが少なかったけん、マナや“マナプール”といった現象は確認されんかったわけか…

 それで、あのゴブリンは?確か魔生物とか言ったか、アイツらは何なん?」


「アイツら、魔生物に関しては謎な部分も多く、どのようにして発生してきているのか、ハッキリとしたことは分かっておりません。

 ただ、分かっていることは、ヤツらは体内にある“魔石”を使って魔術を行使し、また生物学的でいうオスしか存在しないため、繁殖期には人々を襲い、人間の女性を犯して自らの仔をはらませるのですわ」


「な…っ!?」



 “魔石”とは、マナが自然界で結晶化したものだそうで、魔生物達はそれらを体内に取り込むことで、魔術を行使しているらしい(俺がこの世界に来た時に、月火つきひが倒したゴブリン達の死体の代わりに残った黒い石が“魔石”だったそうだ)。

 ちなみに、この“魔石”は金になるそうで、“対魔隊”の隊員にとって、魔生物を倒して集めた魔石はいい収入源になるという(勿論、それとは別に“対魔隊”としての給料や、場合によっては討伐報酬としてのボーナスなども出るそうだ)。



 とにもかくにも、ある日突然この世界に現れた、ゴブリンやオーク、オーガなどといった種が存在する魔生物達は、普段は山奥や森林、洞窟の奥などで群れを作って生活しているが、繁殖期になると、人間のメスを求めて人間の住む町へとやって来るらしい。



「なんでそんな連中を野放しにしとるん?討伐隊みたいなんは出さんと?」


「勿論、過去にはそういった討伐隊が組まれたこともあったそうです。

 ですが、ヤツらは賢い上にしぶとく、完全に殲滅することは出来ず、その対策に今も苦戦しているのですわ」


「そうだったのか…」



 とりあえず、今のこの世界の現状は大体分かった。


 分かったところで、さて、これからどうしたらいいのか…



 俺は戻って来たこの世界で、一体何をすべきなのか…?



 俺が考え事をしていると、隣に座っていた月火つきひが、俺の腕を自身の豊満な胸で挟み込むようにして掴むと、上目遣いで俺を見つめながら、こう言った。



「ではお兄様、まずは一緒にお風呂に入りましょう♥」


「…え?」





 かぽーん!



「ふふ♪いいお湯ですわね、お兄様♪」


「あ…、ああ……」



 流れるままに、俺は月火つきひと一緒に屋敷の大浴場に入っていた。


 月火つきひの家の大浴場は、まさに大浴場の名に相応しく、温泉旅館とかにあるような立派な風呂だった。


 そもそも、月火つきひと、彼女の現世の兄である月人つきとが二人暮らししているこの屋敷は、月人つきとが“対魔隊”で出世していったことから手に入れた屋敷らしく、元々は何処かの貴族がかつて持っていた屋敷で、その貴族が没落して安く売りに出されていたものを月人つきとが買い取ったものだそうだ。

 本来なら、お手伝いさんなどを雇って管理するような豪華な屋敷なのだが、二人ともそういった他人を雇って家に住まわせるという行為に抵抗があったため、この屋敷には二人だけで住んでいるという(両親は“精霊術師”としての任務中に殉職して、すでに他界しているそうだ)。

 ただ、週に数回程度、日雇いのヘルパーさんに来てもらって、屋敷の掃除や庭の手入れなどをしてもらっている感じらしい。



 そんな元貴族の屋敷にあるこの大浴場は、先程も言ったが、温泉旅館にあるような大浴場で、洗い場は広く、蛇口と姿見が複数設置されている。

 そして湯船は、掛け湯用の小さな湯船から、中央にある大きな湯船(その中心には裸の女神像が桶を持っていて、その桶からお湯が流れ出している)に、滝風呂(打たせ湯)、泡風呂、寝湯、水風呂にサウナと、本当に温泉旅館に来たような設備が揃っている。



「ねぇ、お兄様?どうしてさっきからこちらを見てくれないんですか…?」



 俺の左腕を挟み込んでくる、柔らかくてモチモチとした()()()感触…!

 そのせいで、俺は今まで意識しないようにしてきた月火つきひの裸を、目の当たりにしてしまった。



 そう、俺も月火つきひも、身にまとっている物は何も無い状態で、中央の大きな湯船に浸かっているのだ。


 湯気とお湯越しに、月火つきひの豊満で、かつ胸やお尻以外には一切の無駄な脂肪が付いていない、美しい肢体がチラチラと見えていた。

 薄っすらと、胸の中央にある桃色の突起や、無毛の恥丘も見えていた。



(そうか…、月火つきひはパ◯パンなのか…って、そうでは無くっ!!)



 俺は月火つきひの肢体から目をらしつつ、頭の中で素数を数え始める。



 風呂に入るのだから、裸になるのは当然と言えば当然なのだが、いくら前世で兄妹きょうだいだったとはいえ、今は血の繋がりは無く、さすがにこの状況はマズい…!



「ふふ♥お兄様、わたくしの裸を見て興奮されてますのね♥」



 モチモチでポヨポヨなメロンをさらに押し付けて誘惑してくる、我が前世の妹。

 推定バストサイズ95はあると思われるそのメロンの誘惑はいかんともし難く…、俺のきかん()が今にも暴れ出しそうだった。



「と、とりあえず月火つきひ!その、男としては非常にありがたいおっぱい…、いや、状況なんだが、一旦離れてくれるか?」


「嫌です、お兄様」



 そう言うと、今度は足を絡ませてきて、身体ごと俺に抱きついてきたのだ!



「つっ、月火つきひっ!?」


「はぁ…、はぁ…♥お兄様…っ、お兄様ぁ…っ♥♥」



 ヤバい!?月火つきひの目がマジだ!?



「もう、離しませんわよ、わたくしのお兄様…!前世では血のえにしという越えられぬ壁のせいで、とうとう一線は越えられませんでしたが、お互いに転生して、血のえにしから解放された今なら…っ!!」


「おおおおっ、おちっ、落ち着け月火つきひっ!!こういうのはもっと段階を踏んで、」


「段階ならば前世で散々踏んできましたわっ!!」


「そ、それは…、そうかもしれないが、しかし、」


「覚悟を決めて下さい、お兄様っ!共に、大人の階段を駆け登りましょうっ!!」


「待て待て待てっ!?月火つきひーっ!?」



 俺はなんとか逃げ出そうと後ろ向きに湯船から出ようとしたが、



「逃がしませんわっ、お兄様っ!」


「あっ、ちょ…っ!?」



 月火つきひに正面から押し倒されるような形となり、そのまま洗い場のタイル床へゴチーン!!と、頭をぶつけてしまった。



「ぎゃんっ!?」


「きゃんっ!?」



 前者は俺で、後者の可愛らしい悲鳴は月火つきひのものだ。

 どうやら、月火つきひも勢い余って、洗い場のタイル床におデコをぶつけてしまったようで、俺達兄妹(きょうだい)は、そのまま裸で抱き合うように、仲良く気絶してしまっていた。



『ありゃりゃ、二人とももう夢の中か。ま、予定よりちょっち早いけど、“精霊石の欠片”は一つ回収出来たみたいだし、この勢いのまま、もう一つの“欠片”も回収してもらおうかな!

 というわけで、『異世界転移』術、はつどーう!きらきらーん☆次に君達が目覚めた時、そこは、こことは違う別の世界である…っ!』



 気絶中に、聞いてると一発殴りたくなるような声で、そんなことを言われたような気がした………

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