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第1話「“ワールドサルミリア”」


 “ワールドサルミリア”と呼ばれるこの世界は、魔法と科学の融合した“魔法科学技術”が発展した世界だ。



 そうなった背景には、かつてこの世界にこの世界とは別の並行世界パラレルワールドからやって来た侵略者、魔人種の存在がある。


 彼らは最初に、日本の四国上空に現れると、この世界の人類にとっては未知となる力、“魔力”を用いた“魔術”によって人々を蹂躙じゅうりんし、あっという間に四国を占拠し、支配してしまった。



 対して、この世界の人間達は、科学技術の粋を集めて作った兵器などでもって、四国を奪還すべく抵抗した。

 しかし、魔人達もまた、自らが“使い魔”とした“魔獣”と呼ばれる魔術を扱う特殊な生物達などを使役して、さらなる侵攻を開始、戦争は激化していき、この世界の人間は、もはや防戦一方となった。



 さらにそこへ追い討ちをかけるように、各地で討伐された魔獣達、その遺体から溢れ出した魔力が自然に気化したもの、“マナ”と呼ばれる力が空気中に漂うようになり、それらマナが一地点に一定量貯まることで発生する“マナプール”、そのマナプールから野生の魔獣達が自然発生するようにもなり、人間達にとって苦難の時代が続くこととなる。



 そんな時代を終わらせたのは、皮肉にも、そのマナの存在だった。


 とある科学者が、自然界にてマナがある条件下にて結晶化する“魔石”を発見したことから、戦況は変わる。

 この魔石を研究解析し、魔石を科学的に生成することに成功、そしてその魔石を使うことで、魔力を持たない人間でも魔術を扱えるようになったのだ。


 魔石を用いた魔術を、魔人の扱う魔術と区別して“魔法”、この魔法を使って戦う戦士達を“魔法師”と呼んだ。

 やがて、魔法と科学技術の融合した魔法科学が瞬く間に発展していき、魔法と科学を合わせた新兵器などの開発が進み、当初は魔法のみで戦っていた“魔法師”達の装備が充実していき、人間達は、魔人に支配されていた地域を少しずつ取り戻していくことに成功した。



 そうした中で、両者に歩み寄ろうとする者達が現れた。


 人間側の代表者と魔人側の代表者同士が話し合いを行い、このままでは互いに消耗し合うだけなので、友好的に共存する策を互いに話し合った。

 具体的には、この世界には存在しない魔力という概念を利用したエネルギー運用法などを提供する代わりに、魔人達の居住権を認めて欲しい、といった内容だ。



 しかし、魔人達の急進派が、人間達との共存を認めず、人間側の使者を殺してしまった。


 その結果、両者の歩み寄りはならず、人間達と魔人達の争いは続いていく………




 

「…という感じだな」



 俺は、前世の記憶として覚えている限りの、この(“ワールド)世界(サルミリア”)の話をした。



「なるほど…、魔人が攻めてきた、というのはわたくし達(“ワールド)の世界(フラワレス”)と同じですわね」



 と、月火つきひが言った。



「確かに、攻めてきたところまではおんなじっちゃん。やけど、この(“ワールド)世界(サルミリア”)に攻めてきた魔人は、魔人達(“ワールド)の世界(ダークネス”)の主流派、つまりは“魔王派”とは異なる派閥の魔人達やったらしく、彼らの中に【魔王】と呼ばれる魔人の王は存在せん代わりに、そのリーダーを“魔界軍”の統治者っていう風に呼んどったな」


「え、じゃあ、今もこの世界の四国は魔人に支配されとーと!?」



 陽火はるひの問に、俺は「ああ」と答え、こう続けた。



「ただし、四国全体を特殊な魔法“結界”で覆うことによって、魔人達が自由に四国から出てこれんようにしとるけどな」


「マジで!?」


「魔法はそんなことも出来るのですか…!?」



 驚く陽火はるひ月火つきひに、俺はさらに続ける。



「ああ、ちなみにその“結界”を張ったのが前世の俺だったりする」


「お兄ちゃんが!?」


「さすがはお兄様ですわ!」


「じゃあ、魔人達は四国に閉じ込められとる、ってことでいいと?」

 


 今度は母さんがそう尋ねてきたので、俺は首を横に振りながらこう答えた。



「いや、“結界”はあくまでも魔人の侵攻を一時的に抑えるための緊急措置でしかなくて、完全じゃ無いんだ」


「と言いますと?」


「“結界”は、気流や温度、湿度、周囲のマナ濃度などに作用されて、ほころびが生じることがあるんだ。

 それを、“結界”の弱体化って呼んどるけど、その弱体化が起こることによって、魔人がその弱体化した箇所を通って、こちら側に出て来られるんよ」



 “結界”は、基本的に、内側から外側に、()()()()()()()()()()()()()使()()()()()ことが出来ないようになっている。

 外側から内側に入る分にはその制限は無いし、内側から外側に出る際にも、魔力を持たない人類種や、魔力を使わない方法で出ることは可能となっている。


 だが、“結界”が弱体化した箇所においては、その制限が緩まり、魔人がその箇所を通って、外に出ることが可能となる。

 ただし、弱体化具合によって、通り抜けられる魔力量に違いがあるため、一度に大勢の魔人がこちら側に攻めて来ることは出来ず、多くても数人程度といったところだろう。



「それに、マナプールは定期的に発生しているから、国際魔法組織だったり、民間魔法組織の魔法師達が世界各地に存在しとるってわけっちゃん」



 ちなみに、現在の四国は“魔界”と呼ばれている。



「なるほどな…

 ところで、さっきニュースでやってたマジ…、なんとか?ってのは何なんだ?」



 と、今度は父さんが質問をしてきた。



「いや…、それに関しては俺も知らんっちゃん…」


「“魔法戦()マジピュリー部隊”、でしたか…?

 彼女達は、前世のお兄様が亡くなった後に出来たもの、ということでしょうか?」


「ああ、恐らくは…」



 四人の“魔法少女”、“魔法戦()マジピュリー部隊”。

 その内の一人、“マジピュリースカイ”と呼ばれていた少女は、この世界における俺の前世の妹の内の一人、双子の姉のマコトこと“天美陽良そらみあきら”で間違い無いと思われる。


 勿論、前世とは見た目も変わっているし、ニュースでは魔法少女マジピュリー達の本名までは明かしていなかったから、確実とは言えないが、俺には()()()確信があった。



「ただ…、どうやってそれを確かめて、陽良あきらに接触するか、なんよな〜……」


「そこですわよね…」


「民間魔法師組織“ダブルナイン”、だっけ?魔法少女マジピュリー達が所属してる組織?」


「ああ、ニュースではそう言っとったし、“ダブルナイン”は前世の俺も所属しとった、福岡を中心に活動する民間魔法組織やから、間違い無いとは思う」


「あ!なら、お兄ちゃんが直接“ダブルナイン”に行って、『前世のオレがお世話になりました』みたいな感じで、」


「さすがにそれは無理があるやろ」


「ダメかな?」


「相手が陽良あきらさんであれば、それで上手くいくかもしれませんが、さすがに普通の人達が相手では門前払いでしょうね…」



 陽良あきらなら、俺が前世の兄であると気付いてくれる可能性はある(月火つきひがそうであったように)が、問題はどうやってその陽良あきらと接触するかなんだよな…

 それに、妹のモトカ、現世では“天美月良そらみあかり”のことも気になる。

 陽良あきら魔法少女マジピュリーなのに、月良あかり魔法少女マジピュリーではないのか…?



 そんなことを考えていると、不意に父さんがこんなことを言った。



「…ふむ、陽火はるひの考え、あながち悪くないかもしれんぞ?」


「え?」


「どういうことですの、お義父とう様?」


「まさか、本当にお兄ちゃんの前世の話をして乗り込むつもり?」


「いやいや、さすがにそれは荒唐無稽こうとうむけい過ぎる。もっとシンプルにいくんだ!」



 そこで、父さんは一呼吸おいて、こう続けた。



「父さんと母さんが“ダブルナイン”に社員として入社すればいい!

 そうして、陽人はるとの前世の妹達の情報を聞き出せばいいんだ!」

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