無題
ある日、従者が一人の男を連れてきた。
従者は男に命を救われたのでぜひ恩返しがしたいと言った。
男はある漁村で漁をして生活しているらしい。
私は男を見るに、またとない機会と捉え手厚く歓迎することに決めた。
その夜、彼に御馳走を振舞い、酒を注いだ。
従者らに舞を踊らせ歌を歌わせると、男は自分の生活と別次元の贅沢な暮らしに驚き、また楽しんだ。
男に屋敷の一室を与え、そこに住ませた。
男はこの屋敷での生活を気に入り、しばらく滞在した。
…
男は唐突に、家に帰りたいと言った。
家に残した自分の母親が心配だから帰りたいと言ったのだ。
三年も留守にして何を申すのか。
私は止めたが男の意志は変わらなかった。
私は男を説得するのを止めた。
ただその代わりにある”お土産”を渡すことにした。
私は別れ時にある箱を渡し、絶対に開けてはならないと伝えた。
男は了承し、従者の案内とともに屋敷を出た。
私は男が見えなくなるまで見送った。
男が箱を開けた時、私の復讐が達成される。
男は私の従者を殺すことにより生計を立てているくせに、たかが亀一匹助けたぐらいでのこのこ恩返しされに来たのだ。
私は男による被害を無くそうと屋敷に幽閉した。
男が屋敷から出ると言うのなら殺すしかない。
私はもういない従者らに思いを馳せ、涙を流した。