序章
人には生も死も本当は存在しない。なぜならば日々心は生まれ変わっているからだ。人には生まれ変わりは存在せずとも、君への愛情は消せないものだからだ。
こういう幻想的な書き出しのあとには必ずどんでん返しが起こる。ただ、私はあえて逆の言葉だけを連ねよう。
人はいつか死ぬ、人は必ず死ぬ。私達が目を背けている現実は必ずやってくる。この世界は醜く、そして美しく。それをしれないやつらは必ず朽ちていくんだ。
誰かを大切に思う感情も、誰かを特別だと思う真実も、真実を嘘に塗り固めたくなる願望も。すべてが美しい。そして、いびつで汚く醜いんだ。
君も、死ぬよ。そのうち死ぬよ。ただ恐れることはない、なぜなら君は美しい。
そう私に話したとき、彼は十七歳だった。彼は不思議で特別だと人々に言われていた。それでも私はなんら普通にしか見えなかった。そんな私を彼は愛おしいと言ってくれた。
この物語の冒頭はそんな、混沌とした言葉から始まる。知らなくていい情報の連鎖が繰り広げられる。これだから人類は、文明は、この世は美しい。
『あなたがその美しさだけを追えるように、私が手伝ってあげる。』
あの子がもうどこかで泣いてしまわないように、
そんな私の小さな勇気が報われるように、ここに記していったんだ。