第五話 仲間を集めて
アリーシャと俺は村を出てから隣村に向かった。
別に隣村に住み着こうと思った訳では無い。
村の外れにヒッソリと住み着いたヤツが居るらしいと前に聞いたので、会いに行ってみようと思ったんだ。
狩り中にこちらの村に近い所まで来ていたので挨拶に来たと言う風を装うために俺は鹿を一頭担いできた。
村の入口で隣村から来たことを告げ、挨拶であることが分かるように獲物を渡した。
そうすると隣村の連中は気を良くして俺達に迎え入れてくれた。
ワイルドボア程では無いが鹿も大事な資源だ。
歓待とお互いの村の安全、発展を願っての宴が催された。
アリーシャがまだ働き手の歳ではないことから疑問を持たれたが、
親がいないから独り身の俺が狩人のイロハを教えていると言う事で納得してもらった。
そして宴の時に、独り離れて誰にも話しかけないヤツをみつけ話しかけた。
「なぁ、あんたが村外れに住んでるって噂の人か?」
男「なんだ?藪から棒に。
確かに俺は村外れに住んでるが噂ってのは何だ?」
「いつの間にか村に居て、たまに狩してくるから文句も言えないって話が俺の村にも伝わってたぞ?」
男「マジかよ。確かに村の連中とはなるべく関わらないようにしてたけど…
周りの村にまで知られてたらもう何処にも行けねぇじゃねえか!」
やはりこの男にはなにかあるらしい。
もう少し踏み込んで話をしたいところだ。
恐らく、魔物の力があるからバレないようにひとつ所に落ち着かないようにしてるんだろうな。
「それなら、このまま俺達と村を出ないか?次は俺達の村でも良いし、なんなら違う村に向かっても問題ないしな。」
男「そうだなぁ。この村にも3年か?
そろそろ潮時だな。
宴のあとにヒッソリ消えるのは丁度良いかもしれんな。
俺の荷物はほとんどないから、明日の明け方村の外で待ってるぜ。
他の連中に見られたくないしな。」
「わかった。俺達も最低限の挨拶をしてすぐに村をでるさ。」
こうして俺は謎の男を誘い出す事に成功した。
「モージだ。こっちはアリーシャ」
アリーシャ「アリーシャです」
男「ケラヌスだ。」
「単刀直入に行くが、俺は魔物の力を使える。
ケラヌスもそうなんじゃないか?」
ケラヌス「やはり、それに気付いて声をかけて来やがったな。
んで?それを知ってどうするんだ?
本当にお前らの村に誘ってるのか?」
「まぁ、俺達と来て欲しいのは事実だが、村はこれから作ることになるな。
同じ力を持つ仲間を集めて魔物の力があっても生きていける場所を作りたい。
だから他の村も廻って仲間を集めたい。
処罰される前に何とか声をかけたいんだ。」
ケラヌス「それなら、俺に会えたのはお前らにとって朗報だ。
村を転々としていたからな、何人かツテがある。
みんなバレないようにヒッソリと暮らしてるから、一緒に来てくれるやつもいると思うぞ。」
そうして、いくつかの村を廻り10人ほどの仲間が集まった。
ケラヌスの言う通り、みんなバレないようにひっそりと生きていた。
だから同じ力を持つ仲間で集まれるのは大喜びだった。
そして最後に回った村から充分に離れたところにヒッソリと俺たちの拠点を作った。
と言っても家を直ぐに建てるのは無理だから洞穴に草を敷いての雑魚寝だ。