第四話 その処罰待った!
俺は力を上手く使えるようになり、森の深いところでも安定して狩りができるようになった。
そのおかげで前よりも獲物を沢山取れるようになった。
今の所、村のみんなにもバレる気配は全くない。
安心して毎日を過ごしていたら何やら不穏な話が入ってきた。
ヌバダ「おい、モージきいたか?ライネルのところのアリーシャが魔物の力を使ったらしいぞ。
これから処分されるって話だ。
まだ13歳の子供だって言うのに、恐ろしい力に目覚めてしまったもんだ。」
「本当か?でもあの子は仕事もちゃんと手伝ってるし、とてもいい子だろ?
処分の必要あるのか?」
ヌバダ「そんな事言ったって、魔物の力だぜ。
いつ自我を失って村を襲うかわかったもんじゃない。
可哀想だが処分するしかないだろう?」
これがこの世界の普通なんだ。
俺だって力を初めて使った時は自分が処分される事を心配したし、人に知られないように細心の注意を払った。
でもアリーシャは子供だ。
分からないことがあれば当然親に聞くだろう。
それが知られてはいけない事なんて知らないんだから。
俺は村長のところに急いで向かった。
俺と同じような力を持ってしまったアリーシャを何とかして救いたい。
「村長待ってくれ、アリーシャは別に何も悪いことをしてないだろう?
まだ子供だし、こんな真面目な子を処分するなんて…」
村長「では、モージはアリーシャが魔物の力に囚われた時、村人を襲った時、責任を取れるのか?
親でもないお前が責任を取れるのか?
ライネル達はその責任を取れないから処分を受け入れているのだぞ。」
「そんなもの!村人を襲わないかもしれないし、魔物の力はもう使えないかもしれないじゃないか。
それでも、そんなものに怯えて生きないといけないのか?」
村長「1人の子供の未来よりも村全体の安全の方が大事じゃ。
魔物の力を抑える術もわからん以上、わしの意見は変わらんぞ。」
「わかった、アリーシャが生きたいって言うなら俺が責任を取ってやる。
魔物の力に囚われて村人を襲うなんてありえないって証明してやる。」
親と村のみんなに囲まれて泣きじゃくっていたアリーシャが俺と村長の話を聞いて口を開いた。
アリーシャ「私、生きてもいいんですか?もう生きていちゃダメなんだってみんなに言われて」
村長「そんな事、口ではなんとでも言える。
責任をどうとるつもりじゃ?」
「そうだな。
それならアリーシャを生かすために、俺はアリーシャと村をでる。」
アリーシャ「そんな!モージさんは私のせいで村を出ることになるんですか?!」
「そんな事気にするな。
ホントの事を言うと俺も数年前から魔物の力を使えるようになったんだ。
でも俺は魔物の力に支配されてないし、村のみんなを襲うような事もしてない。
だから村長、俺たちがこの村を出る事だけは認めてくれ。」
アリーシャ「私と一緒なんですね!
私、モージさんと一緒に村を出ます。
だから生きる事を許してください!」
村長「モージ、お前まで魔物の力に目覚めていたのか?!
ならばこのまま二人とも処分するべきだが…」
村長の発言に村のみんなの顔が困惑していく。
みんなで助け合うのが当たり前の村で処分なんて考えはわかっていても難しい。
村長「モージがアリーシャを連れて村を出るなら特別に認めてやろう。
ただし、二度とこの村に戻れると思うでないぞ?」
村のみんな不安と安堵の顔を浮かべながら様子を見守っている。
「大丈夫だ。約束は守る。」
俺たちは処分される代わりに村を出ていくことになった。
ライネル「アリーシャすまねぇ。
俺達にはどうしようもなかったんだ。」
ライネルの妻「あぁ、アリーシャ。ごめんなさい。
私たちでは魔物の力を止めることも掟を破る事もできないの。」
そう言って娘に別れを告げる親達。
悲しそうにしてはいるけど、アリーシャの力のこともあり、既に娘と言うよりも恐怖の対象になりつつあるようだ。
アリーシャ「さようならお父さん、お母さん。
私はこれからモージさんの子供となります。」
俺たちは荷物を纏めて村を出ていった。
アリーシャの事をちゃんと育てないといけないから、これまで以上にしっかりしないとな。