第十話 未来を求めて
仲間からもっと多くの人々を悪意や魔物の脅威から救いたいと言う声が上がってきた。
そうして俺達は自分の道をそれぞれに見つけて進んで行くことを決めた。
最初に村を出たのはアリーシャとハルトを中心とした若者たちのグループだった。
虐げられている弱者を1人でも多く救いたいと言う思いから、彼らは荒くれ者が多いと噂される東の荒野を目指して旅立って行った。
アリーシャとハルトは最初の10人の中でも最強の二人だ。
それに着いて行った若い連中も、 この村屈指の実力者ばかりだ。
彼らなら虐げられた人々を救い出して新しい村を築く事も容易いだろう。
次に出ていったのはピリッポスとマリナを中心とした仲間思いの心優しいグループだった。
水も食事もろくに取れない西の砂漠をオアシスに変えると息巻いていた。
砂漠の魔物は強力だと聞くが、彼らを慕ってくれる仲間には強いやつも沢山いる。
何よりも仲間を大切する水と風の力に長けた二人が向かうんだ、きっと数年もすれば砂漠は緑で溢れかえるだろう。
次に準備を終えたのはシメオンとアマリアを中心とした農耕のスペシャリストたちだ。
北の大地では飢えに苦しむ人々が沢山いると聞いて、豊かな実りをもたらすために旅立って行った。
彼らもまた争いは好まず、平和的に解決するためには食糧不足を解消するのが1番という思いで農耕を広めている。
彼らは魔術と農耕を上手く組み合わせて、きっとどんな土地にも作物を根付かせる事だろう。
最後に出発したのはケラヌスとエヴァのグループだった。
彼らは村の行く末を安じて最後まで残ってくれていた。
そんな彼らも南の海を目指して旅立って行った。
思えばケラヌスにはずっと世話になりっぱなしだった気がする。
俺の思いつきをずっと行動で支えてくれていたのはケラヌスだ。
そんな彼が旅立ってしまうのは少し寂しい。
若い連中には負けねぇって息巻いていた少し強気な、だけど誰よりも仲間を大切にする気の良い奴らが大笑いしながら海の向こうで名を轟かせるのはきっとそう遠くない未来だろう。
そして最後まで俺の隣に付き従ってくれるのはクロエと研究バカな連中だ。
魔術の可能性と、人と人の争いを少しでも減らせるようにとその命尽きるまで俺と一緒に頑張ってくれた本当にかけがえのない連中だ…
しかし力を持つと、人はそれだけで隣人より優れていると錯覚するものだ。
そんな暴力的になってしまった人々から逃れてきた人々を守るのも俺達の役目だ。
魔術を広めたばかりの頃は俺たちが教えた魔術を使って暴れるやつや、俺達の村を乗っ取ろうとするやつもいた。
そんな奴らには容赦ない本気の魔術をぶち込んでやった。
俺達は誰よりも魔術を使い慣れていたし、その威力の段階も桁違いだったから、馬鹿な真似をするやつは直ぐに居なくなった。
この村に攻撃して来るやつは今はもう居ない。
此処が平和の象徴となるのだ。